脱引きこもり、学園入り1
「君はエリサ=ブリラスさんの推薦でこの学校に来たわけだが…どうしてこの学園に?」
「俺が聞きたいです。」
リュータは、目の前の席に座る年老いた男性に言った。
エリサに学校に入るように言われたのは昨日。もちろん断ったリュータだったが、「もう手続きは済ましてあるから」と無理やり学園に送り込まれた。
エリサには何か考えがあってのことだとリュータも理解しているが、彼女が一体何を企んでいるのか全くわからなかった。
今、リュータがいるのはバルリッツ町から少し離れたダイメラ町という場所。ここは多くの人が行きかい、リベルス国で有数の都会である。
その町の中心にあるのがユルトラス高等学校。この学校は優秀な人材を輩出しており、卒業生には軍や警察の上層部の人間、大企業の役員や社長、政治家など多岐にわたっている。
エリサもこの学校の卒業生なのである。
リュータは、学校の校長室に呼ばれていた。彼の目の前にいる老人が校ユルトラス高等学校の校長。白い髭を生やし、顔には無数のシワ、椅子に座っていても腰が曲がっているように見える。
リュータと校長に挟まれるように置かれた机には、黒い杖が立てかけられていた。今は座っているが、立って歩くときはこれを使っていることが容易に想像できる。
「なるほどのぉ…」
校長はリュータに関して書かれていると思われる書類に目を通す。時折、相槌を打つかのように首を縦に振っていた。
書類はエリサが書いたもので、そのためリュータは何が書いてあるのかがわからない。
『変なこと書いてないよな…』
内心ビクビクしながら待っていると、校長が呼んでいた書類を机に置いた。
「ほっ、ほっ、ほっ。彼女には退屈させられなくて良い。」
「こっちは、あの人のせいで俺の人生設計めちゃくちゃですよ。」
嬉しそうに笑う校長に対して、リュータはため息を漏らす。エリサによって持ち込まれた災難がリュータの頭の中でフラッシュバックした。
「君…えーと、クロッツ君はブリラスさんとはお友達なのかい?」
「お友達じゃないです。主君と奴隷です。いや、彼女は暴君ですね。」
おそらくここにエリサがいたら、リュータの腹部には大きな穴が空いていただろう。