第四章 8.甲乙
しばらくレベル上げを行った後、オレたちは死霊の大祭から街へ戻って来た。
おっさんは用事があるとかで、オレたちを送った後、コソコソどこかに行ってしまった。
ミィーカは『死霊の大祭』に残って、教会のお手伝いをするそうだ。
……多分ウソだな。
武具屋の親父から「宣伝になる」とメイスの試作品を譲り受けていたので、レベル上げをするつもりだろう。
あいつ、嬉しそうにメイスを振り回していたからバレバレなんだよな。
「おかえりなさい。……まっていたわ」
さて、久しぶりの家族団らんと張り切って家の扉を開けると、そこには可愛らしいエプロンを着たリリィが居た。
なぜお前が家にいるのさ?
てか、どうやって入ったんだ?
「お前、どうやって家に入ったんだよ?カギはちゃんと掛けておいたはずだぞ?」
「カギ?……私に開けられないカギはないわ?」
ウインクしながら答えるリリィ。
お前は将来大泥棒にでもなるつもりか?
こいつ、この手で倉庫から素材を持ち出しているに違いない。
親父の苦労が大分分かってきたよ。
「そんな事より、みんな早く上がって。……反省とお礼を兼ねて、お料理を作ったの」
そう言えば、いいにおいがするな。
……って、そんな事じゃオレは誤魔化されないからな!
「リリィ、ただいま。――おいししそうなにおいがするよっ!」
「ただいまです、リリィちゃん。……がんばったのでおなかすきましたね、ご主人さま!」
ネムとクーは、リリィが居ても別に驚かないらしい。
すっかり馴染んでしまったらしいな。
「ああ。……だが、勝手に家に入っていいと思っているのか?それじゃ犯罪者と同じだぞ」
「ごめんなさい。……今日はね、喜んでもらいたくて……いいお肉が手に入ったから、ローストビーフとローストポークの食べ比べを作ってみたの。……コンソメスープも作ったわ」
いかにも「私は反省してます」と言った風で、リリィはオレたちに話しかける。
オレはまだ信用しとらんぞ。
大体オレは、ドワーフに懲りたんだよ!
「お風呂も沸かしたわ?……ご飯の前にお風呂に入ってさっぱりして?」
取りあえずオレは、ネムとクーの二人に風呂に入ってくるように進めた。
ちなみに最近では、オレが風呂へ入るのが一番最後になっていたりする。
クーはいつもの通り遠慮して「最後に入る」と言ってくれたのだが、この子が入ると度を超えた長風呂で、オレたちが忘れると朝まで入っている可能性すらあるんだ。
加減を知らないというか、寒さに対して相当のトラウマがあるんだろうな。
そんな危険な子を最後に入らせる訳には行かない。
結果的に、ネムが一番風呂の権利を勝ち取った訳だ。
まあ、ネムは稼ぎ頭だし、風呂もきれいに使ってくれるので文句は無い。
しばし無言でソファーに座るオレ。
勝手に家に入られていた事もあり、今やオレにはこの子への不信感しかない。
「……怒っているの?」
「ああ、怒ってる。見て分かるだろ?」
「……喜んでほしくて、一生懸命作ったの。……そんな顔しないで」
リリィは、目に涙をためてオレを見つめる。
……そんな世界中の不幸を背負った様な顔しないでくれよ。
オレ、そういうのにすっごく弱いんだよ!
「分かったよ。……これからはちゃんと親父に許可を得て倉庫から持ち出せよ。そして、オレの家に勝手に入ってくるな。……もう二度と助けてやらないからな」
「わかってる。……街に帰ってきた時に、ボルアードから教えてもらったの。『ハルト殿は、伯爵様の『英雄』という発言に腹を立てて、晩餐会にも参加しなかったと聞きます。お嬢様は今回ハルト殿にその言葉を使わせましたが、その意味がお分かりですかな?』って……」
ボルアードってのは……武具屋の親父の名前だな。
あんな顔してるくせにいい名前だ。
晩餐会に参加しなかったのは、ただ単にオレがイライラしていたからだが、観方によってはそう映るのかもしれない。
実際、『英雄』という呼び名は好きでないしな。
あの親父、意外と分かってやがるな。
だが、分かっててやらせるって……一番性質が悪いじゃねーか!
「……私、色々考えて、貴方がどれだけ嫌な思いをしたか……気付いたの。私ね、貴方が私の為に頑張ってくれるのがうれしくて、はしゃいでしまって……周りが見えなくなってた。今回私はやり過ぎたわ。素材に関しても、状況が整ったら貴方にちゃんと話すつもり。……ほんとうにごめんなさい」
その言葉を最後に、リリィは声を出さずに泣き出した。
話している最中からこめかみに力を入れて、必死に我慢していたみたいなんだがな。
まだ、本人も自分が泣いている事に気が付いていないようだ。
本人がここまで真剣に謝ってくれているんだ。
泣いてるのは見なかった事にして、ゆる――
「あっ、ハルトがリリィを泣かしてるよっ!」
ちょうど風呂から出て来たネムに、見られてしまったよ?
こらっ、そんな事言っちゃダメだ!
指摘されたら本人が気付いちゃうでしょ!
「……てないわ……わだじ…ないでない……わ!」
リリィはプルプルと震えながら、必死に否定しているようだ。
だが、一度自分が泣いている事に気付いてしまうと、もはや本人には感情を制御する事が出来ない。
瞳からは、滝のように涙が溢れてくる。
……オレも、子供の頃経験あるぞ。
「うわわーん!わだじのごど……ぎらいにならないでー!!」
恐竜が縄張りを主張しているみたいな大声で、泣き叫ぶリリィ。
普段のお姉さんキャラは、もう崩壊してしまったらしい。
「わだじ、よろごんで……ほじぐっで、いっぱいかんがえて……ないしょで……ぐすっ……だったから……ほんとにごべん…だざい。……うわーーん!」
泣きながら、勝手に家に入った訳なんかを説明してくれているようだが……どうしよう、よく分からん。
辛うじて分かったのが、オレを驚かせるつもりで勝手に家に入った事……くらいか?
……この子、サプライズのつもりで料理を作って待っていたのか。
どうやらオレが、悪意に考えすぎていみたいだ。
カギの件は、一言家の者か、大人に相談していれば、不信感を抱かずに済んだハズなんだが……。
発想は大人っぽいが、肝心な所で子供……なんだな。
それにしてもだ。
「うわーーーーん!」
……あの、ちょっとこれ、どうしたらよかんろう?
「よしよし、リリィ。……泣いちゃだめだよ?」
「だって、ハルトが……ハルトが、わだじのこと……うわぁーーん!」
「ハルト……なにしたのさ?」
ネムはリリィをあやしながら、オレに非難の目を向けている。
このまま風呂に行ったクーが戻ってきたら、オレは悪人決定だよ?
「リリィ、分かったよ。嫌いにならないから泣き止もう?……な?可愛い顔が鼻水で台無しだぞ?」
「……あふん、えぐっ……ぶさいぐなかお……はるとにみられたよー!……びぇーん!!」
ヤベッ、余計泣いてしまった。
どうもオレの言葉は、余計に子供を泣かしてしまう効果があるらしい。
「あっ、いや、リリィは……可愛いぞ。うん、ものすっごく可愛いな!……よしよし、こっちへおいで。――お鼻チーンしような?」
しばらくの間リリィは泣き続け、徐々に時間をかけ泣き声も小さくなって行った。
――そして
「……う……うん。えっぐ、……はなかんだら、だきついていい?」
なんかこいつ、心まで幼児に退行してないか?
今までこの子は、なんでも出来て発言が大人びてたせいで、大人と同じ扱いを受けていたんだろう。
こういうのに慣れてないのかもしれないな。
それにしても、……可愛ええな。
なんだ、このまぬけな動物は?
頭の良いバカか?バカなのか?
こんなんなら、普段からお姉さんぶらなきゃいいのにさ!
――だが、これもギャップだ。
ここへきて、大人ぶっていた反動がギャップとなって、連鎖反応を起こしてオレに襲いかかってくるようだ!
オレの中の、リリィやドワーフに対しての岩ポヨが全消しされてしまったよ!?
「ああ、いいぞ。……『おにいたん』って、また言ってくれるか?」
「うううっ、その手は…さいごのしゅだんよ。……つかいたくない」
「……じゃあ、だっこはおあずけだな?」
リリィはしばらく黙った後、口を開く。
「……うう、分かったわ。……おにいたん、……だっこ」
リリィの顔は真っ赤だ。
泣いたせいもあってか、鼻や耳まで赤い。
「ああ、もちろんだよ。リリィ!」
「ボ、ボクもっ!」
オレがリリィをだっこする。
すると、リリィがあまりにも可愛いからか、ネムまで飛びついて来た。
恐ろしい女だ。……これはある種の必殺コンボだな。
「……あの、わたしがお風呂に入っているあいだになにが?……たしか、泣き声がきこえて……ええと?」
リリィとネムをだっこしているオレを見て、クーが怪訝な顔をする。
「しあわせよ?……至福だわ?」
リリィはすっかり機嫌が直ったらしく、ご満悦の様子でオレにしがみついている。
見た所、クーには普段のお姉さんキャラを通そうとしているらしい。
最後のプライドか?
もうお前は、色々と手遅れだと思うぞ?
「リリィがね、なんだか、とってもかわいいんだよっ!」
「クー、私分かってしまったの。……子供扱い。それは良いものよ?」
リリィの発言に、クーはしばらくアタフタした後、羨ましそうにリリィを見つめた。
差し詰め「わたしもだっこしてもらいたいけど、恥ずかしくて言い出せない」ってとこか。
ははぁん、こいつもお姉さんぶりたい年頃だな?
「クーもだっこしてやるぞ?遠慮すんなよ!」
「……その……わたしは……でも……」
そう言いながらも、クーはオズオズとオレの肩に手を伸ばす。
湯上りのクーは身体は、ホッカホカだな。
オレは三人の小動物の抱擁をしばらく楽しんだ後、お風呂に入った。
風呂から出ると、ネムがソワソワしながらオレが出てくるのを待っていた。
相当お腹減ってるんだね。
オレが風呂に入っている間にリリィが準備をしてくれたらしく、部屋中に絵も言われぬ良いにおいが充満している。
お肉の焼けるにおいって、嗅ぐだけで幸せな気持ちになれるから不思議である。
「……さて、ハルト!が、お風呂から出た事だし、切り分けて行くわね?……みんな遠慮しないで食べてね?ソースは何種類か作ってみたけど、一番最初は、お塩を付けて食べてほしいわ」
リリィにしては短い説明の後、一枚ずつ丁寧に肉を切り分け出す。
オレの名前を強調して言っていたような気がするが、最後の抵抗なんだろう。
聞き流す事にした。
一番最初は、ローストポークみたいだ。
肉汁がナイフを入れるたびに肉からあふれ出してくる。
やばい、マジで美味そうだ!
ネムは目を爛々と輝かせ、肉を切り分けるリリィを見つめている。
クーは……あれ?
クーが居ないぞ?
……まさか!
オレは、ある事を確信しながらテーブルの下を覗く。
そこには、プルプル震えながら必死に目を閉じているクーの姿が!
やはり豪華なものを見すぎて、限界を超えてしまったらしい。
豪華な料理は『ドワーフの工場完成記念兼、教会とドワーフの皆さんとの親睦会』以来だもんな。
さらに言えば、親睦会の時は、豪華と言うよりもワイルドな料理と言える代物だったが、今回のローストビーフ&ローストポークは、ド直球で豪華な感じがする。
室内料理だし、明るい中で肉から滝の様に肉汁が溢れてくるんだ。
最近は少しずつ克服してきたと思ったんだが、クーからしたらたまらないだろうな。
オレはこの姿を自慢……じゃない見せびらかせたくて(どちらも変わらないか?)、無言でリリィを手招きする。
リリィは全員分の料理を切り分けると、テーブルの下を覗き込んだ。
そして――
「……この小動物は、何をしているの?」
おいクーよ、聞いたか?
お前は小動物に小動物認定されたぞ?
「クーはな、色々あって豪華な料理を見ると怯え出すんだ。……豪華な料理が嫌いなんじゃないぞ。こわいだけだからな」
「……?ならいいわ。……こういう時、どうしたらいいの?」
「ああ、見てろよ。……クーさんや、目をつぶってゆっくり椅子に座りなさい。こわくないぞ?」
「……はいっ。あの、……ごめんなさい……リリィちゃん」
「いいわよ?……わたしの料理は目をつぶってもおいしいわ」
クーはガクガクしながら何度も机に頭をぶつけた後、申し訳なさそうに椅子に座った。
しばらくクーに深呼吸をさせた後「いただきます」をして食事をスタートした。
ネムは最近、ナイフの使い方もマスターしたようだ。
最近ネムの中で「お兄ちゃんは一人でなんでも出来なきゃだめ」という哲学が誕生したらしい。
本当は、オレがネムたんに切り分けてあげたいのにな、グスン。
ネムは、念動力でナイフとフォークを操って器用にお肉を小さく切り分けて食べている。
その眼は真剣だ。
普段はガツガツ食べるのにな。
どうやらあのネムが、味わって食べたいほどの料理らしい。
オレはお肉も楽しみだったが、それより先に、コンソメスープから飲むことにした。
実は気になっていたんだよね。
作り方ももちろんだが、本当のコンソメスープの味というヤツがさ。
スプーンにすくってみる。
オレが知っているコンソメスープより、こちらの方が色が断然濃い。
紅茶の色に一番近い気がするな。
オレは、慎重にコンソメスープを口に運んだ。
口の中に入れたその瞬間、香りが口いっぱいに広がる。
……なんだこの味?今まで飲んでいたコンソメスープと全然違う。
どこがどう違うかと言われると「全てが大幅にバージョンアップされている」としか言えないが、風味豊かで濃厚なくせに後味すっきり、飲めば飲むほど食欲を刺激されていく。……そんな味だ。
これがこの世界のコンソメスープか?
それとも、今まで飲んでいたものが偽物だったのだろうか?
「……コンソメスープ、マジで美味いな。これ本当にコンソメスープか?」
思わずバカな質問をリリィにしてしまう。
「そうよ。……正確に言うとダブルコンソメスープよ?」
「オレ、今までこんな美味いスープ飲んだ事が無かったよ。今度レシピを教えてくれないか?やっぱり、コンソメパ……打撃に関係があるのか?」
「打撃?面白い表現をするわね?……まあ、貴方らしいかしら。……でもレシピはダメ。これは究極のスープなの」
リリィはにっこり笑ってウィンクした後「……飲みたくなったら、私が作ってあげるわ?」そう付け足した。
究極のスープ。……確かに、飲んだだけでは何の食材が使われているかすら分からないオレには、到達できないスープなのかも知れない。
ヤバい薬が入っているんじゃないかと思うくらい止みつきになる。
毎日このスープを飲み続けていたいくらいだ。
オレはスープのおかわりをしてこの究極のスープを存分に味わった後、メインの料理に取り掛かった。
一口目のローストポークを口に運ぶ。
……ああ、これも美味いな。
この前リリィが作った子羊の丸焼きも美味かったが、これも究極と呼んでいい味わいだ。
ローストポークって初めて食べたが、くさみが少なくて食べやすい。
それでいて、うま味が口いっぱいに広がるのだ。
確かにこれは、ネムが少しずつ食べている訳が分かるな。
続いて、今度はローストビーフを食べてみよう。
「……美味い!うまーいぞー!!」
今、マンガのみたいに口から光が溢れそうだったぞ!?
柔らかい肉、溢れる肉のうま味、まさにパーフェクトだと言いたい。
いや、言ってもいいんだが、本当に美味いもの食べると、オレってば無口になっちゃうんだよね。
赤みの肉で、霜降り肉ではなさそうなんだが、肉ってこんなにジューシーで柔らかくなるんだな。
これにも何か秘密がある気がする。
ちらりとリリィを見ると「秘密よ?」と口だけ動かしてオレに伝えて来た。
……オノレ、リリィめ。
ギャップで落とした後、料理でさらに落とすとは……。
ローストポークも、ローストビーフも甲乙つけがたい。
……めんどくせぇ!両方いっぺんに食べればいいんだねっ(錯乱)!
オレはもう一切れ口に運ぼうとして、ふとクーを見た。
今まで食べ物に集中していたけど、大丈夫だろうか?
クーは目をつぶりながら、ナイフとホークを力いっぱい握りしめている。
そして、不気味なくらい身動き一つしていない。
息は、しているよな?
「クーさんや、大丈夫か?」
「はっ、はいっ。……わ、わたしは平気です!」
いや、平気じゃなさそうなんだが……。
そうか!目をつぶっていたらナイフとホークでお肉を切れないのかもしれないな。
「クーさんや、お口を開けてごらん。あーん、してやるぞ?」
「わっ、私も……お願いするわ!」
小学生が授業中手を上げるように手を高らかに天井へ伸ばすと、真剣な目つきでこちらを覗き込むリリィ。
「分かったよ、クーの次な。――ほらクー、遠慮するなよ?」
「はっ、はい。……その、えっと、あの……おねがい……します」
そう言って、クーは目をつぶったまま、ビクビクしながら遠慮がちに口を開ける。
ほっぺはほんのり桜色だ。
一撃で心臓を刈り取られそうな破壊力だぜ!?
その姿は、破壊力とは裏腹に何とも無防備だ。
オレが狼だったら、間違いなくクーを捕食している瞬間だな。
この子、無意識にやっているとしたら、すさまじい才能だ。
リリィが心臓を手で押さえながら悶絶しているぞ?
「ほら。……よく噛んで食べるんだぞ?」
「ふぁい……おいひいれふ!」
「そうか、よかったな。口に物を含んでるときは、無理して話さなくてもいいんだぞ?……ちなみに今食べているのが何か分かるか?」
クーはよく考えながら、ゆっくり噛みしめて食べた後、こう答えた。
「……えと……おにくです!」
うん、今日もクーは平常運転だな!
放心状態のリリィに、オレは肉をフォークで小鳥の餌付けのように食べさせてやる。
「……最高のご褒美ね?」
言ってる事はよく分からんが、回復したらしい。
「……反則ね。この子、可愛すぎるわ?……おうちに持って帰って私が育てる。……今日から私がお母さんよ!」
どうやらクーの行動は、リリィの母性本能を目覚めさせてしまったようだ。
気持ちは分かるが……ダメだからなっ!?
「お母さんはイヤです。……おともだちがいいです!」
目をつぶったまま、必死に首を振り抗議するクー。
それじゃ、逆効果でない?
「理不尽だわ。……何なのこの溢れる気持ちは?……私が立派なレディに育てるのよ?」
ほらな。
クーよ、幼女にここまで言わせるってどうなんだ?
「いいや、クーは渡さん!――なぜならオレがクーのお父さんだからだ!」
どさくさまぎれに、オレもアピールしてみる。
どや?
オレはちらりとクーを見た。
「!?……うううっ、お父さんはダメですっ!」
飛び上がるように席を立つと、走って逃げようとするクー。
そのクーに、たまらず抱き着くリリィ。
何故泣く?
ってか、逃げたらお前、奴隷契約の罰が発動するんじゃないのか?
そこまでイヤだったと言うのか。
……お父さん、すんごくショックだぜ!?
「もうっ!お食事中はさわがないでよね!みんなでたのしくおしゃべりするのはいいけど、席を立って走り回ったりとかは、ぎせいになった牛さんや豚さんにしつれいなんだよ。――おいしいおご飯が食べられないヒトたちもいることを考えてっ!」
ひぃ、ネムが怒ったよ!?
正論すぎて何も言い返せない。
オレたち三人はネムに謝った後、楽しいお食事を再開した。
二人の雛鳥の餌付けに忙しくて、オレが食べる事が出来たのは、二人が満腹になった後だったのは言うまでも無い。
食後、いつも通りアイスクリーム食べた後、リリィは満足顔で帰って行った。
どうも、馬車を頼んでいたらしい。
今日も泊って行くかと思ったんだが……そうなると少し寂しい気がするな。
「しばらく忙しくなるの。……片付けたら、泊りに来てもいい?」
リリィが確認して来るって珍しいな。
「もちろんだ。――その時はまた美味しいスープを作ってくれよ?」
「まってるよっ!つぎはお魚だねっ!」
「……また、いっしょにねましょうね」
どうも家のメンバー、リリィの料理に心を奪われてしまったらしい。
オレも最近では料理が出来るようになってきたが、あの域まで達するには相当の修行が必要だ。
出発までに少しでも吸収しないとな!
リリィの帰った後はネムによる、クーの文字教室だ。
最近のクーは、勉強や鍛錬に対しての取り組み方というか、気合の入り方が以前にも増して真剣になった気がする。
こんなにがんばって大丈夫だろうか?
もっとゆっくりでいい気がするんだがな。
いっぱい頑張った分、いっぱい甘やかせればいいのかな?
お父さん心配だ。
お父さんの座は……諦めませんからね!




