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第四章 5.伯爵さま

 次の日、領主さまのお迎えの馬車に乗り、お城へと向かった。

 お迎えの馬車はおっさんの馬車とくらべて狭かったが、乗り心地は段違いだ。


 これが、金持ちと貧乏人の差かと痛感したよ。


 馬車に乗っているのはオレとおっさんだけ。

 オリヴィアを拾って行くと遠回りになるからか、別の迎えが行っているようだった。


 顔を合わせなくて助かったと言っていい。

 

 おっさんと他愛のない話をしながら1時間ほど馬車に揺られていると、領主さまの住むお城へ到着した。

 ……そして、到着したと思ったら、そこからさらに30分ほど敷地内を馬車を走らせ、やっとお城に到着した。


 うん、何もされてないのに圧倒されてしまったよ。




 オレたちは仕立ての良い服を着たお爺さん――執事さんかな?――に案内され、城に入る。


 玄関の前では兵士たちが一堂に整列し、オレたちに挨拶をしてくれた。


 みなさん、なぜか緊張した面持ちで、最大限敬意を払ってくれている。


 相手はおもてなしのつもりなんだろうが、こういうのって、オレからすると威嚇されているように感じてしまうんだよな。


 中に入ると、今度は本物のメイドさんがオレたちを出迎えてくれる。

 が、思ったよりもおばちゃん率が高い。


 ……ここは、見なかった事にしておくか。


 オレは中の様子を確認する。

 はたから見ると田舎者丸出しだが、普段なじみの無い場所に来ると、防衛本能からか周囲を確認してしまうんだよね。


 城の中は……思ったより成金っぽくないな。


 お城と言うと赤いじゅうたんが敷き詰められていて、絢爛豪華な調度品が飾られているイメージがあったが、ここのお城は割と落ち着いた印象を受ける。

 悪く言えば質素、良く言えば古い物を長く使っているような、どこかわびさびを感じるお城だ。

 



「ハルト・ガトー様、ランドル様、本日はようこそおいで下さいました」


 中央に居たこの中で、一番偉そうな人がオレたちに声をかけてきた。


「本日はお招きいただいて光栄です。――これは、こちらにお渡しした方がいいですよね?」


 オレはそう言って、腰に下げた剣をベルトごと手渡す。


 ちなみに今のオレの格好は、とんがり帽子に普段の黒皮の鎧装備だ。


 急だったから衣装なんか準備できなかったし、なによりリリィから「この国の王様に謁見するのだって、私の作った防具で問題ないわ」との、自信満々のありがたいお言葉も頂いている。


 まあ、今回は冒険者としてお招きいただいたんだし、パフォーマンスにもなるよな。


 おっさんも、自慢の皮鎧(名前は忘れた)を装備している。


 防具はいいとしても、さすがに武器の携帯はマズイよな。

 そのオレの考えに、思わぬ方向から声がかかった。


「――いや、構わんよ。私が堅苦しい衣装を着て、机の上でペンを持つのと同じで、君にとっての剣は商売道具だ。君ほどの御仁なら、武器等持たなくても私の首をひねる事など容易いはず……持っていてくれたまえ」


 大広間の階段の上から、優雅な仕草で男がやって来た。


 年のころは30代後半くらいだろうか?

 栗色の髪を全て後ろにまとめ、優しい笑みを浮かべている優男だ。


 一見チャライ雰囲気だが、それは30代という、若さと経験のバランスが取れた時に見せる自信の表れにも感じられる。

 こいつが営業マンだったら「あぶらがのってんなぁ」という感想ですむのだが、多分失礼に当たるだろう。


 何故ならこの男は……


「やあ、お初にお目にかかかる。私はカーティス・ベルーガと言う。皆からは、ベルーガ伯爵と呼ばれているが、君たちからは是非とも『カーティス』と名前で呼んでもらいたいものだね。……今日はよく来てくれた。待ち遠しくて迎えに出てしまったよ」


 そう言って、伯爵さまは優雅に会釈をした。


 城の主人が客人を迎えに出る。

 よく分からないが、本来は、自分と同等か、それ以上の位の人、もしくは親しいものにしかやらない行為なんじゃないかな。


 これが、この男の演出だとしたら最高点。

 最高のハッタリだな。

 



 その後、挨拶をする間もなく伯爵さまの私室に通された。


 謁見の間ではなく「私室」だそうだ。

 これは、執事さんがあえて言っていたので分かった事だ。

 この事からも、オレたちが特別待遇だと言う事が伺い知れた。


 私室と言っても中はかなり広く、皮張りの本が所狭しと並べられていた。

 整理された大学教授の研究室を広くした感じ、と言えばイメージしやすいかも知れない。


 もちろん、置いてある物の価値なんかは、比べ物にならなそうだけどな。


 中にはオリヴィアが居て、優雅にお茶を飲んでいた。


 伯爵さまは「ちょっと待っていてくれよ」と言って、執事さんに小声で何かを伝えどこかに行ってしまった。


 おっさんは、オリヴィアと少し話してから椅子に座った。

 座っていいのか聞いたのかもしれない。


 オリヴィアはオレにも話しかけて来たが、無視をして立ち続けた。

 ガキっぽい態度かも知れないが、もう「貴族」と言うものが信用できなかったし、早く終わらせて帰りたかったんだ。


 しばらく待っていると、伯爵さまはお茶とお菓子の乗ったワゴンを引いて嬉しそうに入ってきた。


「カーティスお兄様ったら。まったく、使用人みたいな事をなさって」

「良いだろう?現在当家は人が足りなくてね。自分の事は、自分でするのさ」


 そう言って、オレたちに笑いかける。


 おっさんは人が良いから委縮しているが、これもこの伯爵さまの演出だろう。

 大方、オリヴィアから話しを聞いて、オレが客人に対してしそうな事をしている。……といった所だろう。


 この行動の意味する所は、「マナーなんか気にしなくていい。気楽にやろう」って意味だろうな。


 プライドを捨ててまでハッタリをかますその姿は素晴らしい。

 この伯爵さまとは、出会うのがもっと早ければ尊敬の念すら抱いていたかも知れない。


 まあ、この行動も何か思惑あっての事。……騎士剣術の開祖である、シャムロック氏を倒したオレを抱き込みたいとか、そんな所だろうがな。


「二人の英雄殿、本日は来てくれて有難う。歓迎するよ」


 伯爵さまはオレたちにお茶やお菓子を配りながら、招待が遅れた訳なんかを話し出した。


 なんでも、伯爵さまの補佐に当たっていた子爵一派が理想郷に加担していたようで、この際膿を全て出し切ろうと大忙し、さらに奴隷魔法が使えなくなり、尋問に大層時間がかかったそうだ。


 ご愁傷様と言いたい所だが、オレからしたらそんな事はどうでもいいんだよ。


 話が途切れた所で、オレは手早く自分の名前を名乗り、『この国に置ける、最高位の者に対する礼』をして跪いた。


 念のためリリィに教えてもらっていてよかったよ。

 この緩い雰囲気を、何とかしたかったんだ。


 伯爵さまが行動で「気楽にやろう」と伝えて来るなら、オレはこう返そう。


 ――「いいえ、オレと貴方は違う」とね。


 そう、この礼の意味は『拒絶』だ。


 おっさんも慌てて名を名乗り礼をした。


「……ランドル殿、君と私の父上との間には色々とあった様だが、もう父は居ない。私は父とは考え方が少し違ってね。君とはこれから良き理解者、友人として仲良く出来たらと考えているよ」

「……勿体ないお言葉です」


 おっさんは何も言わないが、過去に伯爵さまと何かあったと言う事かね。


「そして、ハルト・ガトー殿。そんなに畏まらないで良いんだよ?」


 伯爵さまの声は、大好きなおもちゃを取り上げられた子供の様に悲しそうだ。


 だが、悪いが信用できない。


「私は異国の旅人故、この国の礼儀作法に疎く、挨拶が遅れてしまいました。真に申し訳御座いません」

「……せめて、面を上げてくれないか?」

「はっ、有難きお言葉」


 そう言って、オレは顔を上げた。


 非常にめんどくさいが、オレの意思は伝わったかな?


 ああ、そうだ。

 後はこれも言っておいた方がいいだろう。


「伯爵さま、私は英雄などではありません。今回はたまたまこの様な騒ぎになっただけ。私は、私の家族を助けようとし、その結果、自分の弱さゆえ道を踏み外し、血にまみれました。ギルドや街の宣伝活動の為致し方ない事とはいえ、英雄などと呼ばれるのは不本意な結果としか言いようがありません。私は人を殺して英雄呼ばわりされるのはまっぴらなのですよ」


 オレの言葉に、オリヴィアは何か言おうとしたが伯爵さまが制してくれた。


「なるほど、まったくその通りだ。君がどういう人間か、少しだけ分かった気がするよ。……先ほどの非礼を詫びさせて欲しい」


 そう言って、今度は伯爵さまが頭を下げる。


 ……まさか、自分より位の低い者にまで頭を下げるとはな。

 真意は読めないが、この伯爵さまはオリヴィアよりは話が分かるらしい。


「それにしても、その所作で礼儀作法に疎いなんて信じられないな。しかも、価値観も素晴らしい。そして、高度な教育を受けた物言い……亡国の王子との噂は真かもしれないな」

「ねぇ、言いましたでしょ。ハルト様は素晴らしいお方ですわ」


 伯爵さまとオリヴィアは、オレをよそに的外れな事を話し出す。


 どうもこの二人はとても仲が良いようだ。


 伯爵さまは、オリヴィアとの昔話なんかのどうでもいい話を嬉しそうにオレたちにしてきた。


 ……簡単に説明すると、この二人は『兄妹』のような関係なんだと。


「オリヴィアは少し気が強いのが玉に傷だが、自慢の美しい『妹』だ。――どうだろう、私の妹を貰ってやってくれないか?君の様な男に貰われるなら、この子も喜んでくれるだろう」

「イヤですわ、カーティスお兄様ったら。急に言われてもハルト様が困ってしまいます」


 こいつ、昨日の今日で何を言っているんだ?

 「ああ、マジで勘弁だね」と大声で言いそうになったぞ!


 つまり伯爵さまは、オリヴィアを差し出す事でオレを親族に引き入れる事に成功し、オリヴィアからすればシャムロック氏を倒した「英雄」が手に入る訳か。


 この女の気持ちは分からんが、オレまで「物」扱いか?


 マジで最悪な気分だ。


 オレが黙って聞いているとしばらくこの話が続いたので、オレは「下賤の者」である事を理由に辞退させてもらった。


「……私には勿体ない女性です」


 オレの人生で使うはずの無い言葉を使っちまったよ。




 その後も「何か褒美を与えさせてくれないか」の一言から始まり、士官の話しや、土地や爵位を与えると言う話をされたが、丁重にお断りした。


 通用、伯爵の権限として騎士爵や准子爵、准男爵までならすぐに与えられるそうだが、国に掛け合い、男爵か子爵の爵位なら早急に用意するとまで言われた。

 ちなみに准子爵、准男爵は金で販売している爵位で、貴族冒険者が喉から手が出るほど欲しい爵位だ。


 それがどのくらい価値のある事なのか、オレには分からなかったがね。


 そして、伯爵さまは何を考えているのか分からないが、クーやネムに会いたいらしく、しきりに二人の事をオレに聞いてくる。


「先日、とある高貴なお方に助言頂きましてね。……高貴な貴族さまからすれば、この様な場で『汚らわしい魔物奴隷』の事など話さない方が良いのでしょう?」


 オレは、オリヴィアを見つめながらそう答えた。


 伯爵さまは、その言葉が大層気に入らなかったのか声を荒げてオレに告げる。


「そんな事はないよ。……私はその少女が心優しき者だと聞いている。悪とは種族に芽生えるのではなく、個人の心に芽生える物だ。私は、その様な認識は持ち合わせていないつもりだよ」


 この伯爵さまは、人道主義者か?


 『悪とは種族に芽生えるのではなく、個人の心に芽生える物』


 これも確か、アラン・ベルーガ卿の言葉だったはずだ。


 悪の種族と戦争をしている国の伯爵さまがそんな発言をするのはどうかと思うが、子孫が引用すると多少は重みがあるかもしれない。


 だが、その言葉は余計にオレの神経を逆なでさせた。


 そんな事言われても、お前の「妹」に言われたんだよ!


 そう言いたかったが、グッとこらえた。

 早くこの話を終わらせたかったからな。


「色々な考えがあると言う事でしょう。それに私は、準備を整えたらこの街を去る予定です。……どうもこの街は、私の様な下賤の者や魔物奴隷には住みにくい街のようです」


 最後にとびっきりの嫌味を言ってやった。


 おっさんは自分にも身に覚えがあるのか、オレの暴言にも黙ったままだ。

 やれやれと言った顔でオレを見ていた。


 オレってガキなのだろうか?


「そんなはずは……ここは冒険者の街だ。一昔前は荒れていたが今は変わった。……いや、私が変えているのだよ。知っているかい?私の尊敬する大叔父アランにも、奴隷の親友が居たんだ。……それを」


 そう言って、伯爵さまは項垂れてしまった。


 少しやり過ぎてしまったかな?




 その後、オレの剣『突刺し姫』を見せて謁見は終了した。


 「この剣を私に差し出せ」とか言われるかと思ったがそんな事も無かった。

 せっかくリリィが改造してくれた物だが、そう言われたら素直に渡すつもりだったんだがな。


 伯爵さまからは夕食に誘われたが、もちろん辞退した。

 褒美を「夕食の辞退」にしてもらったんだ。


 こちとら野蛮な人間だ。

 テーブルマナーも知らないしな。


「君とは、何か誤解があるようだ。実は是非会って貰いたい人物がいてね。今度は君の相棒の『賢き魔獣』殿と『白き闇エルフ』のお嬢さんを、連れて来ては貰えないかな?」


 無礼なオレに対して、伯爵さまは尚も優しく話しかけてくれる。


 会わせたい人物?

 却下だな。


 オリヴィアのおかげか、貴族に対しての警戒心を思い出させてくれた。

 剣なら差し出してもいいが、連れて来たらネムとクーを奪われそうだ。


 剣は物だが二人は物じゃない。


 丁重にお断りしたよ。




 城を去る時、オリヴィアが追いかけて来た。


「なぜ貴方は、英雄になることを拒むのです?」


 話が通じないやつだ。

 こいつは、オレを不快にさせる天才らしい。


「オレはただの人殺しだよ。シャムロックを倒したのだって卑怯な手を使ったし、理想郷の一件だって不幸な者を沢山作った。……ほっといてもらえないか?」

「私は、貴方の為に言っているのです。ひょっとして、結婚の話が不味かったのでしょうか?私は結婚などしなくても構いません。卑しい闇エルフを捨てて、私とパーティを組んで頂ければ、貴方を永遠に語り継がれるほどの英雄にして差し上げます!いかがでしょう、私と一緒に――」

「――何を勘違いしているんだ?オレは、英雄になるのが嫌なんじゃない。人殺しが英雄だって言うんなら……めんどくさい事だが、家族の為なら、英雄にだって魔王にだってなってやるよ。……だが、お前はダメだ。まだ気づいていないなら言ってやる。オレはお前が嫌いなんだよ。もう関わるな」


 崩れ落ちるオリヴィアを残して、オレは馬車に乗り込んだ。


 これで少しは、オレの気持ちが伝わっただろうか?



 

 馬車の中では、御者さんが伯爵さまの話しをしてきた。


 彼なりのフォローなんだろう。

 言われてやっているというより、オレと伯爵さまの関係を何とかしたいという気持ちで語りかけているようだった。


 なんでも、伯爵さまの父上、前伯爵さまの時代はベルーガ領全体がかなり荒れていたらしい。

 それをここまで立て直したのはカーティス・ベルーガ伯爵さまなんだとか。


 そう言えば、前伯爵さまとおっさんの間で何かあった様だが、その事でおっさんは士官を断ったのかもしれない。


 まあ、オレには関係の無い話だがな。




 家に帰ると、まだリリィがいてクーと一緒に料理を作っていた。

 あれ?ミィーカまでいるぞ?


「よう、おかえり!てっきり、伯爵様の所で夕食をご馳走になってくるかと思ってたぜ?」

「ただいま。……なんでお前までいるんだよ?」

「そりゃお前、二人が心配だったからだよ。あんまりネムとクーに心配かけんじゃねーぞ」


 ううっ、痛い所を突かれて何も答えられなくなってしまったよ?


「……バカな子ね。嫉妬しちゃったのね。……まあ、分からなくもないけど?」


 リリィには挨拶の後、唐突にそんな感想を告げられた。


 どうもクーに昨日の一件を聞いたらしい。




 食事中、伯爵さまの話しをリリィとミィーカから聞いた。

 カーティス・ベルーガ伯爵は、アラン・ベルーガ卿の弟の血筋で、曾祖父が『アラン・ベルーガ卿の冒険』の作者だそうだ。


 王都や諸外国に留学した後、父の代ですっかり寂れてしまったベルーガ領を立て直そうと奇抜な政策を行っているらしい。


 奇抜な政策ってのは薪の事とか……かな?

 後は思いつかない。


 今回の理想郷の一件は、伯爵さまからすると渡りに船と、かなりオレに感謝していたらしい。

 周囲にオレの噂なんかを聞いてまわっていたようだ。


 現在悲願である「自分の代での迷宮発見」を成し遂げようと私財を売り払い、優秀な人材を集めているそうだ。


 屋敷に調度品が無かったのはその為か?

 チャライ見た目に反して、色々と頑張っているようだな。


「……実の父親を毒殺したとの噂もあるわね。……主に、色々とタイミングが良すぎたのが影響しているようだけど」


 リリィによると、伯爵さまが留学から戻って来たタイミングで、前伯爵の親父さんが病気で亡くなったんだとか。

 ただこれに関しては、感謝をしている人の方が多いようだ。と、リリィは言った。


 前伯爵さまは、相当悪政を敷いていたんだな。


 それにしても詳しいなと思い聞いてみると、全部武具屋の親父の話しらしい。


 そう言えば武具屋の親父も、伯爵さまには色々と融通してもらっているんだったな。




「オリヴィアさまに、もう一度お会いしたいです」


 話しがオリヴィアの話しに及ぶと、クーが変な事を言い出した。


「……止めておいた方がいいだろうな。今日も会ってきたが、話にならなかったぞ」

「……それでも、お話ししたいことがあります」


 あまり過保護にしたくはないが、今回ばかりは反対だな。

 クーが傷つくだけの様な気がする。


「あいつ、ばかだよな、ホント。……ポンポンの奴はお前と一緒でばかなんだよ。しかも周りが見えない猪女だからな。……許してやってくれよ?」


 珍しくフォローか?

 お嬢様とヤンキーは仲が悪いんだとばかり思っていたんだがな。


 それにしても、この際オレが馬鹿なのは間違いないので許すが、ミィーカよ、半分以上悪口だがそれでいいのか?


「……ボクも、もう一度ポンポンちゃんとお話ししたいな」


 ネムまでそんな事言うのか?


 うーん。

 なんだかオレが意地を張っているだけ、みたいになってきてないか?


 まあ、クーとネムがそう言うんならオレは別にそれで構わないが……。


 オレが煮え切らない表情をしていると、ミィーカがオレをまじまじと見ながら口を開く。


「私も、あいつにはよくムカついてるけどよ。お前みたいなどんかん野郎には分からない事があるんだよ。私もポンポンのヤツに話してみるからよ」

「失礼な。オレは人一倍、他人の気持ちに敏感な男だぞ!」


 オレのその言葉に賛同する者は、誰も居なかった。


 え?

 なにさ、その反応?


 ここは、断固としてオレが気づかい屋さんだとみんなにアピールしなければ!


 オレは立ち上がり、みんなを見据え――


 その時だ。


 ……コンコン。


 玄関の扉を叩く音が聞こえた。


 ちょっと、タイミング悪いわよ!




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