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第四章 1.一か月後の衝撃事実①

 クーの一件から、一ヵ月ほど経過した。


 まずは、オレとネムの能力の変化だな。



●加藤遥斗 

〈基礎能力〉

体力52・筋力51・器用54・敏捷53・精神力50・魔力26

〈スキル〉

『何でも切れる剣』『自己診断』『ソウルイート』『言語・文字理解』『全属性耐性』『自然回復速度UP』『剣術レベル4』『槍術レベル3』『体術レベル3』『弓術レベル2』『投擲レベル3』『水魔法レベル1』『回復魔法レベル3』『生活魔法』『料理レベル2』『馬術』『礼儀作法』


●加藤ネム 

〈基礎能力〉

体力101・筋力98・器用109・敏捷101・精神力107・魔力108

〈スキル〉

『何でも分かる帽子』『自己診断』『ソウルイート』『言語・文字理解』『全属性耐性』『自然回復速度UP』『火魔法レベル4』『風魔法レベル4』『水魔法レベル3』『土魔法レベル4』『回復魔法レベル3』『生活魔法』『念動力』


 とまぁ、こんな感じだ。


 オレはコツコツと魔力を上げている最中だな。


 ネムは……マジで半端無い。

 水魔法と回復魔法以外、自力でレベル4になってしまった。


 聞くと、クーを看病している間にもコツコツと勉強を続けていたんだとか。


 現在ネムは『光魔法の魔道書』と『闇魔法の魔道書』の解析に当たりたいらしく、ウズウズしている。

 その2つは、未だCランクのオレたちでは規制がかかっている為、購入できないんだが、もしランクが上がれば真っ先に購入する予定だ。


 才能+継続×『何でも分かる帽子(チート)』でブースト=まさにネムたん死角無し。


 そんな図式が、オレの中で出来上がってしまったよ。


 その他の変化と言えば、クーの前髪のぱっつんが、「ぱっつん過ぎるぱっつん」から、「普通のぱっつん」に変化した事と、クーのレベルが2から12に上昇した事くらいかな。


 レベルが10上がる程度では大した変化では無いので今回は割愛……だな。


 体力も増え、少しだけ無理をしても平気になったようだ。


 レベルアップの研究の結果、1レベル上がるごとに1~3ポイントほど基礎能力に振り分けられる事が分かった。


 また、どうやら努力値のような物もあるようで、これも1レベル上がる事に1~4ほど、筋トレや魔法のお勉強などの努力をすれば基礎能力が上昇する事が分かった。


 おっさんの基礎能力が高いのはこのためだな。


 クーは種族の特性か、魔力の伸びが良いようだ。

 どうも本人は、筋力と体力を上げて行きたいようだけどな。……ナイスバディを目指しているのかもしれない。


 レベルが15まで上がったら、出発の準備をしようとクーに話してある。


 ちなみにオレの『何でも切れる剣』や、ネムの『何でも分かる帽子』の秘密もその時打ち明けた。


 クーは、ネムの『何でも分かる帽子』については「ネムちゃんさすがです!」というよく分からない称賛を伝え、オレの『何でも切れる剣』に関しては「お肉を切る時に便利ですね」と深いコメントを残した。


 確かに固い敵を斬る時は便利なんだろうが、何となくお互いの認識に不一致が生じた気がしたが、気のせいだろうか。


 クーは最近、リリィから料理やお茶の入れ方や編み物、ネムからは文字を習っている。

 一ヵ月で簡単な単語は覚えた(思い出したのか?)ようで、ゆっくりだが、本も自分で読めるようになって来たようだ。


 ネムは、そろそろクーにも魔法を教えようと考えているようだ。

 クーも「学べる事がうれしい」と、ネムと同じような事を言っていた。


 オレはと言えば、回復魔法『修復と復元の奇跡』の劣化版、『修復の波』という魔法を覚える事が出来た。


 と言うか、ネムに教わった。


 これはネムのアレンジ魔法らしい。

 修復の波は力が弱く、少しずつしか傷痕は治せないが、それでもクーは喜んでくれている。


 現在はちょっとだけ傷痕が薄くなったかな?という感じだ。

 毎日コツコツと続けていけばその内きれいさっぱり傷痕が消えてなくなるだろう。


 そうそう、関係の無い話なのだが、先日ノーラちゃんから聞いた噂話しで、「奴隷契約魔法」が使えなくなった事が判明した。

 どうも、契約者の更新は可能なようだが、新たに契約を結ぶ事が出来ないそうだ。


 ノーラちゃんは「やっぱり、『手つなぎの精霊ニコラ』様は善意の精霊様です。悪しき奴隷魔法に力を貸さなくなったのですから」と、的外れな事を言っていた。


 多分これはオレのせいだよな?


 色々と矛盾点が多かった奴隷契約魔法に、『手つなぎの精霊ニコラ』が見切りをつけたと見ていい。


 意外と行動が早いやつらだ。


 これがこの世界にどういう影響を及ぼすのか……オレには分からん。

 べつに魔法が無くても奴隷は作れるし(現にオレの居た世界がそうだったしな)、この世界なら別の封印魔法とかをアレンジして奴隷魔法を作り出す可能性だってある。


 まあ、この件に関してオレが言いたいのは、「オレ、悪くないもんね!」という一言だけだな。




 唸り声の後、けたたましい叫び声が響き渡った。

 そしてその叫び声と共に、オレに向かって炎が巨大な竜巻のように襲ってくる。


 くせ毛が余計チリチリになったらどうしよう?

 しみじみと感傷にふけっているというのに、邪魔なヤツだ!


 オレが、今何をしてるのかって?


 実は今、一人で『煩悩』と戦っているのだ。

 オレが、この『炎をはく、翼の生えたトカゲの親分みたいな下品な顔の煩悩』と戦うには訳がある。


 炎をやり過ごす為、大きな岩陰に隠れ、オレは家での出来事を思い出した。




 最近オレは、ネムとクーと三人で寝るようになった。

 どうもクーは夜中に起きた後、怯えながらオレの部屋の前をウロウロする事があるようなのだ。


 クーに「もし嫌な夢を見て眠れなかったら、遠慮なく起こすように」と事前に言っておいても、起こしてくれない。


 シビレを切らしたオレは、クーの座り込む定位置にブービートラップを仕掛ける事にしたのだ。

 糸を金属のコップに縛り付け、コップを棚の上に置いて、クーが定位置に近づくと糸が触れコップが下に落ちる仕掛けだな。


 クーは見事そのトラップに引っかかり、オレは起きる事に成功した。

 ……成功はしたのだが、クーには大泣きされてしまった。


 オレが土下座をして謝ると、クーが余計泣き出してしまう。


 そこで、オレはその場で思いついた起死回生の一言、「クーが可愛いから、ついいじめたくなっちゃったんだ」を言ってみたんだ。


 すると……

 クーは途端に泣き止み、ニヨニヨと何とも言えない笑顔と共に機嫌を直してくれた。


 あまりにもチョロイ。

 将来、悪い男に引っかかりそうでお父さん心配である。


 ちなみに、ネムにはめちゃくちゃ怒られた。


 すごくいいアイディアだと思ったんだがな、グスン。


 次はリリィにブーブークッションを作ってもらおうと決めた辺りで、ネムがクーをオレの部屋に連れてくるようになったという訳だ。


 初めからそうすればよかったとか言わない様に!


 リリィやミィーカから、クーを「女の子として見てあげて」と言われている事だし、娘だと思っているとはいえ、子供扱いして「一緒に寝よう」なんて言えるはずが無い。


 女の子に「一緒に寝よう」なんて言えるか?


 オレは言えないね!


 それにクーは、一緒に寝るとオレがドギマギしてしまうくらい色っぽい表情をする時があるんだ。


 リリィもたまに一緒に寝るが、全く色気は感じないのにな。

 可愛いには可愛いんだが、発言が笑えるんだ。


 あの容姿で、変に年上ぶるからかもしれない。


 もし仮に、リリィに甘えた声で「おにいたん」とか言われたら、間違いなく全財産貢いでいる自信がある。


 そういう意味では、助かっていると言っていいな。

 

 ……リリィのせいで話しが脱線してしまったが、何が言いたいかというと、オレにも色々と葛藤があったという事だ。


 とにかくクーは可愛いし、一緒に寝るのが嫌な訳が無い。

 三人で寝るのは、オレの最も幸せな時の一つだと言っていい。

 

 これでこの問題は解決した。そう思ったんだ。


 ……だがそんなある日、事件が起きた。

 ある日、ネムが真剣な顔でオレたちに尋ねて来たんだ。




「ねえねえ、『でりけーと』なもんだいだって分かっているけど、一つ質問していいかなっ?」


 ネムにしては真剣な眼差し、「デリケート」という単語、いつものネムらしくないな。


 オレはネムの質問とやらが気になってしまった。

 それはクーも同じようで、オレの横で首を傾げている。


「ああ、いいぞ。……なんだかいつものネムらしくないな。どうしたんだ?」


 ネムは言葉を選ぶように少し黙った後、オレたちに向けてこう尋ねた。


「……赤ちゃんは、いつ生まれるのかなっ?」


 好奇心に満ち溢れたピュアな瞳。

 ワクワクが止まらないのか、尻尾はブンブンと乱暴に振り回されている。


 ……その瞬間、ネムの中に、天使と悪魔が確かに内在する事を、オレは確信したね。


「ボクは今、そのために『学習ぷろぐらむ』を作っているんだ。……うん、むりにおしえる気はないよ。楽しさと、実用性の『ぼーだーらいん』も分かってるつもりだしねっ!」


 ネムは得意げに『単語学習法』やら『計算』、『楽しい魔法学』の話しをオレたちにしてくる。


 ……これは、どう見ても本気か?

 そうとう、待ち遠しいみたいだな。


「な、な、な、……なにを……言ってるんですか……ネムちゃん」

 

 クーの顔は、火が出そうなほど真っ赤だ。

 本人もそれに気づいて、両手で顔を隠してしまった。


 オレだって確認しては居ないが、顔が真っ赤なはずだ。

 顔がすんごく熱いもの。


 ……まさか、こんな事言われるとは思ってなかった。

 ネムはオレたちの事をそういう関係だと思っていたのか?


 おかしいだろっ!


 だってまだクーは子供で……女の子だけど子供で。

 ……オレは息子がついて無いし……じゃない、クーはオレの娘だし。


 そうだよ。

 クーは、オレの娘なんだよ!


「ネム、何を言い出すんだよ。……冗談だとしても性質が悪いぞ?」

「そうです。……そんなこと……言ってはだめですっ!」


 オレたちの必死の抗議にもネムは堂々としていた。

 そして、むしろオレたちが無知であるかのように、やさしく諭すように口を開く。


「……だって、『だきあう』と赤ちゃんが生まれるんだよ?知ってないと無責任にっ、なるんだからねっ!」

「……おまえ、それ……」


 言いかけて、オレは口をつぐんだ。


 ……ああ、なるほど。


 そういう解釈ね?

 真実を告げるのは簡単だが、クーもいる手前、言いづらいな。


「いや……そのな。……その話し、誰から聞いたんだ?」

「へ?……ドワーフの親父さんにもきいたし、『何でも分かる帽子』でもしらべたんだよっ!『抱き合えば子供が生まれる』って、ちゃんと回答されたもん!」


 オレたちが知らないと思っているのだろう。

 得意げに答えるネム。


 「抱き合う」って……隠語なんだがな。


 たしかに、親父が「抱き合えば子供が生まれる」と言ったとして、その話が本当かどうか『何でも分かる帽子』で調べれば、「抱き合えば子供が生まれる」と回答が出てもおかしくはない。


 多分ネムがこの質問したのって、武具屋の奥さんが初めて赤ちゃんを見せてくれた時……夕飯をご馳走してくれた時だよな。


 ……ん?待てよ?

 前に何度かクーを抱きしめた時にウンウン頷いていたアレは……。


 間違いないな。

 一つ謎が解けた気がする。


 なんとも壮大な性の勘違いをしてくれたもんだ。

 考えただけで恥ずかしくなるぜ!


「……家族がふえたらうれしいよねっ!ボクはみんなの『お兄ちゃん』で『先生』で『師匠』だから……えっと、このばあい、ボクは何になるのかな?……ねねっ、いつ生まれるのかなっ?」


 ニシシッっと嬉しそうに笑う。


 いや、そんな質問をされてもな。


 オレたちが返答に困っていると、ネムは「子供が出来る事を知らなかったのなら、しょうがないか」とでも言いたげな、優しい眼をした。


 気を使われているのか?


 そして――


「今まで何度もだきあっているんだから、……もうすぐだよねっ?」


 そう言った後、茶目っけたっぷりでウィンクしてきた。


 ああ、どうすればよかんろう?


 思わずクーを見つめてしまう。

 クーは赤い顔を冷気で冷やしているようだったが、その発言を聞いて、またもや火が出そうに赤くなってしまった。


 ネムよ、お前さん、魔力を使わず『氷の呪い』を打ち負かしてしまったな。


「……まっ、まだっ!生まれませんっ!」


 我慢の限界が来たのだろう、クーの大声が部屋中に響き渡った。


 そうそう、まだ生まれないんだよ。


 よく言ったぞクー!

 後でネムにはちゃんと説明してやるからな。


 ん?

 『まだ』って、どういう事だ……?


 思わずクーと顔を見合わせる。


 あっ、いや、その、あの、それは……だから……でっ……。













 うんっ!

 オレの勘違い、聞き間違いだったのだ!!


 オレはそのまま「修行のため山籠もりしてくる」と二人に伝え、家を出た。


 食料はあるし、今日はリリィが遊びに来ると言っていた。

 食事は心配いらないだろう。


 この状況、オレは家に居られ無い。

 暗黒の力(せいよく)がオレを支配し、純粋なクーの発言に妙な上書きをしてしまったんだ。


 オレは危険だ。

 この家に居てはいけない。


 クーを守るんだ!

 煩悩を沈めるんだ!


 そしてオレはその日、暗黒の力(ぼんのう)と戦う決意をしたのだ!




 オレは、静かに瞳を開けた。

 辺りには焦げ臭いにおいが漂っている。


 今こそ煩悩を倒す時!


「キエェェェーー!」


 今度は森にオレの怒声が響き渡る。


 その声に、オレの煩悩もタジタジだぜっ!!




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