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第三章 幕間4.お泊り会②

 まったりお昼寝タイムを終えて、オレは夕食の準備をした。


 クーもリリィも手伝おうとしてくれたが、「今日はいいよ」と言って断っておいた。

 せっかくリリィが遊びに来てくれたんだし、やらせるわけにいかないからな。


 今二人は、居間で編み物を編んでいる。

 リリィがクーに教えているようだ。


 なんだかリリィがとっても嬉しそうだな。


 夏に編み物ってどうなんだ?と思ったが、クーは寒がりだからな。

 女の子っぽい趣味だし、暇つぶしにもなるだろう。


 仲良く編み物をしている二人は、本当に姉妹みたいだ。

 ネムもその姿を見て、微笑んで……いない!


 あれは獲物を狙う目だ。

 毛糸玉を狙っているな!


 ネムも猫の本能には逆らえないようで、毛糸玉に飛びかかろうとして……リリィに止められた。


 どうもネムは、猫としての暗黒面に目覚めたらしい。……ふふっ、オレたち悲しき宿命を宿しているよな。




 そんなこんなで、準備も終わり夕食と相成った。

 事前に来ることを知らせてくれればもう少し豪華な夕食となったのだが、それでも今あるもので心を込めて作ってみたつもりだ。


 今日のメニューは、アスパラベーコンとソーセージのソテー、付け合せは、最近定番のマッシュポテト、野菜の酢漬け、夏野菜と豆のトマトスープ、パンだな。


 野菜の酢漬けは、最近のオレの好物だ。

 つまみにもなるし、日持ちもするしな。


 まっ、ネムは食べてくれないんだけどさ。


「……これのせいであの子の名前は『お化けアスパラ』になってしまったのね。……悔しいわ。そして……おいひいの……おかわり!」


 リリィは憎々しげにアスパラベーコンを見つめた後、一口でパクつくと至福の表情をする。


 この子無表情のようだが、慣れてくると表情が読み取れる。

 主に口元が緩むんだが、観察していると意外と面白いぞ。


「……なに?……ほっぺたには何もついていないわ?」

「お、おう、良く食べるな。大丈夫か?この後、デザート作る予定だぞ?」

「私、太りにくい体質だから大丈夫よ?」


 自慢の(かどうかは分からないが)ウェーブヘアをかき上げて、自信満々で言い放つリリィ。


 いや、君は少しポチャッとしているよ?

 そういうツッコミ所満載な発言はしない方が良いのでは?


 ドワーフ基準だとスレンダーな部類に入るのかな?……いや、ふと思ったのだが、この子自分のキャラを勘違いしているのではないだろうか。


 あたかも自分は美人OLか何かだと勘違いしているような言動と振る舞い。

 確かにデザイナーとしても、鍛冶屋としてもほぼパーフェクトな出来る女なのだが、見た目は幼女なんだよな。


 本人は気付いて無さそうだし……面白いからいいか。

 このアンバランスな感じが、リリィの魅力なのかもな。


 オレは、大目に作ってあったアスパラベーコンをリリィのお皿によそる。


 リリィは身体に似合わず良く食べるから、たくさん作っておいてよかったぜ。


「クーも食べるか?……たくさん食べないとリリィみたいになれないぞ?」

「……そうよ?……私みたいにセクシーになりたかったら食べるのよ?」


 あっ、いや、ついうっかり言ってしまったんだが、本人がそう解釈したらそれでいいか。


 オレは何も言わん。

 オレは空気の読める男だからな!


「はい!……いっぱい、食べます!」


 クーが元気よく返事をしてくれた。


 そうか、クーは太りたかったんだね!


「……ボクもっ!ボクはベーコンだけでいいよっ!」


 ネムに関しては……うーむ、猫はアスパラ食べにくいのかもしれんな。


 それにしても、容赦なくオレの皿にアスパラだけ置くのはやめて頂きたい。

 アスパラとベーコンの2つを一緒に食べるからこそ、至高のケミストリーが生まれるというのにな。


 まったく、ネムのやつはお子ちゃまだぜ!


「……ば、ばれたかなっ?」


 うん。バレるよね?

 その表情がとっても可愛いから許しちゃうんだけどさ!




「さて、お待ちかねのデザートタイムだな!」

「やったねっ!」

「なに?……何が食べられるの?」


 キョロキョロと辺りを見回すリリィ。


 この子、こんな食いしん坊キャラだったっけ?

 なんとなくだが、これがこの子の素っぽいよな。

 沢山食べていたハズなんだが、この食欲……スイーツは別腹ってやつか?


 とにかく楽しみにしてくれて良かった。


 実はクーが「リリィちゃんが遊びにきたら、わたしが作ったアイスを食べてもらいたいんです」って言っていたんだよな。


 クーは緊張した面持ちでボウルを見つめている。

 今回のアイスはフローズンヨーグルトだ。


 アイスの元……原液はクーが先ほど真剣な顔で調合していた。


 材料は、ヨーグルトと牛乳、砂糖、レモン、隠し味に塩だな。

 今回は色合いにラズベリーなんかも用意してある。


 リリィがいつもラズベリー色のベレー帽を被っているし、アイス(クー)とラズベリー(リリィ)で『二人は仲良し!』……ってのを表現しているんだが、誰も気づくまい。


 ふふふっ、こんな事思いついちゃうオレって、やっぱり天才なのかもしれんな。


「では、いきます……」


 クーは深呼吸した後、掛け声とともに手のひらから冷気を発してボウルを冷やしていく。

 アイスの元は少しずつ固まりはじめ、半分ほど固まった所でかき混ぜ、また固める。


 そんな感じで全て固まったら、後はほぐして完成だな。


 リリィは、その様子を興味深そうに見つめていた。

 ワクワクしているのか、少し頬が赤い気がする。


 この実験ぽい雰囲気が気に入ったのかもしれないな。


 アイスクリームはこの世界にあるのか分からないが、あったとしても珍しいはずだ。

 サプライズになってよかったな。


「……かんせいしました!食べてみてください。……今日のアイスは『フローズンヨーグルト』です」


 その言葉に、リリィがおそるおそると言った感じにスプーンを伸ばす。


 ……さて、オレたちも食べてみるか。


「――うん。美味い!」

「サッパリしておいしよっ!」

「そうだな。食後にぴったりの味だな」

「ああっ……ありがとうございます!」


 クーは頬を赤らめながらオレたちにお礼を言った後、リリィを見つめた。


 先ほどからリリィは無言でアイスを口に運んでいる。

 クーは心配そうだな。


「……どうですか?……ひょっとして、リリィちゃんのお口にあいませんか?」


 リリィはお皿に乗ったアイス全てを食べきった後、何度も頷いてこう言った。


「……美味しいわ。……これは芸術よ?おかわりっ!」


 その言葉に、クーは目に涙をためて微笑んだ。


 良かったな、クー。


「はいっ!……ありがとうございますっ!」


 クーはリリィに感謝を述べると、オレに向かって微笑んで小さくガッツポーズした。


 思わず頭をなでそうになったが、リリィもいるしやめておこう。


 最近ではクーも自然と笑ってくれるようになった。

 そういう何気ない仕草が一番うれしいんだよな。


 その後リリィは、何度もアイスのお代わりを要求してきたがオレが拒否をした。

 材料はあるんだが、食べすぎてお腹壊すとまずいしね。


 食後、お皿を洗っているとクーがやって来て「ご主人さま、すてきな力をありがとうございます」と言ってくれた。


 クーには「今まで他人や自分を傷つけてきた力が、他人に喜んでもらえる力に変わった」そう思えるようになってくれたらいいよな。




 順番にお風呂に入ってもらった後、オレは外でトレーニングをして過ごした。

 何時間か納得の行くまで型を確認し家に戻ると、まだクーとリリィが部屋でお話をしていた。


 もう深夜を回っているはずだが、お昼寝したせいで眠れないのかな?


 ネムは、ソファーで寝息を立てていた。

 うるさくて避難してきたのかもしれない。


 周りが静かなせいか、それともヒソヒソ声だから逆に聞こえてしまうのか分からないが、二人の会話が耳に入った。


「……いたくないですか?」

「大丈夫。……貴女を感じるわ?」


 えっ?

 二人で何やってるのさ!?


「……はずかしいです」

「もっと……自信を持って、ね?」


 これってまさかアレか?

 百合の花咲くアレなのか!?


 まさか、そっちの趣味があったのか?


 そういえば、二人はよく抱き合っていたし、クーは男性がこわいだろう。


 だからって、そっちに走るのか!?

 性癖に関してはとやかく言うつもりは無い。


 だがお父さん、その判断はまだ早いと思います!


 オレは焦りながらクーの部屋のドアをノックする。


 色んな趣味趣向があっていい。いいんだよ?

 だが……ここは話し合おうじゃないか!


 オレがノックすると、二人でボソボソと話し声が聞こえた後、リリィが答えた。


「……入ってもいいわよ?」


 そのすぐ後に、クーの「ダメです!」って声も聞こえたが、オレは無視してドアを開ける事にした。


 まさか無理やり!?


 オノレ、リリィ。

 これが噂に聞くNTR――寝取られか!!


 そんな不埒な女に、家の娘は渡さんからな!


「NTRは許さんぞ!」


 勢いよくドアを開けるとそこには――


 ベッドで腕枕をして寝ているクーとリリィがいた。

 よく見ると、クーが自分の腕を枕にしているリリィをどかそうと、必死にもがいている。


「ごっ、ご主人さまっ……こ、これはっ……」

「……夜中にレディの部屋に入る。……この意味が分かるかしら?」


 オレは冷静に状況を確認する。


 ……二人とも、パジャマはちゃんと着ているな。

 強いてあげれば、クーがリリィに対して腕枕してる所が変だが、仲の良い友人のおふざけ程度ならあるのかもしれない。


 ほほえましい光景だし、思ったほどユリユリしていないな。


「……いや、お前らがまだ寝てないみたいだから、注意しに来たんだよ。……何してんだ?」

「未来にそなえて……腕枕の練習よ?」


 うん。

 まったく意味が分からないよ?


「そんな事して何になるんだ?」

「……女同士の秘密なの。……ドキドキした?」


 こいつ、一切話す気はないようだ。

 リリィは諦めて、オレはクーに確認する事にした。


「……クー、本当だろうな?」

「……はい」


 なにやら気まずそうに答えるクー。


 まあ、クーもこう言ってるし、オレの聞き間違い……勘違いか?


 それにしても、腕枕の練習ってなんだよ?

 『痛い』とは一体?


 その時、ふとクーに初めて腕枕をした時のセリフを思い出してしまった。


 ――腕枕痛くない?

 確かにオレが言った言葉だ。


 ……もしかして、さっきのクーの発言は――


 自分の顔が、みるみる赤くなってゆくのが分かる。


 クーも、オレが何を思ったのか分かったのだろう。

 ゆでダコのように真っ赤になってしまった。


「……もう、早く寝なさいよっ!……まったく!」


 オレは慌ててこの部屋から退散する事にした。


 そう、二人は、あの日の夜を再現して遊んでいたのである。


 もう無理だ。

 この部屋にいたくない!


 ネム、なんだか疲れたよ。

 オレはとっても眠いんだ。




 オレは、ソファーで寝ていたネムを寝室へ連れ去り、一緒に眠る事にした。

 しばらくしてリリィが「……突撃よ?」とか言いながらオレの部屋にやってきて、強引に腕枕をさせられた。


 ……なんだか、興奮した親戚の子がじゃれてくるみたいだったよ。


 後からクーも、オズオズとやって来たので反対側で腕枕をした。

 クーは申し訳なさそうに来たのだが、その表情に何故か色気を感じてちょっとだけドキッとしてしまった。


 まさに両手に花の状態だが、何だろう、この状況。……ワケガワカラン。


 修学旅行気分……なのか?




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