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第二章 15.お〇〇のリリィ①

紛らわしい題名ですいません。

下ネタではありませんよ!

 奥の階段から声がした。

 ゆっくりと階段を降りる音、親父の顔は真っ青だ。


「……ねえ、何が内緒なの?」


 多分、少女の声だろう。

 鈴を転がしたような声色だが、その声は平坦で感情の起伏があまり感じられない。


 その声の主が姿を現す。


「お嬢さ……リリィ、客が居る時は仕事場に来てはいけないと約束しただろう?」

 

 親父が、先ほどまでとは打って変わって真面目な口調になる。


 オレは少女を見た。……少女というより幼女だな。

 服装は作業に皮製のエプロンと地味な出立ながら、金髪のゴージャスなウェーブヘアに、優しげな大きな碧い瞳、白い肌、まるでフランス人形か、海外の子役のように可愛らしい。


 ただ、唯一の欠点を覗いては――


 彼女の欠点、それはヒゲ。

 彼女のもみ上げからアゴにかけて、黒いモジャモジャのヒゲが、冗談のように生えていたりするのだ。


 一瞬付けヒゲを付けてふざけているのかとも思ったが、彼女は大真面目にこちらを見た後「いらっしゃい」と短く言った。


 多分この状態が、彼女にとって普通であり、日常なのだろう。


 普通の人間が彼女を見たら吹き出す気がするのだが、オレは笑えなかった。


 オレのコンプレックスは多い。

 彼女の気持ちになってしまったのだ。


 元居た世界……創作の世界だが、ドワーフの女性はヒゲが生えていると聞いた事がある。

 日本ではロリドワーフがゲームだと存在しているようだが、海外では男と見分けが付かないヒゲドワーフの方がポピュラーだろう。


 だが、考えてみてほしい。

 彼女はヒゲ&ロリドワーフなのだ。


 悲劇である、そして喜劇である。


 ドワーフのみで暮らしている内はいいだろう。

 だが、彼女は人間社会にその身を置いている。


 自分の容姿を、人間と比べて思うはずだ。


「なんで私、ヒゲなんだろう?」


 と……。


 男の外見なら諦めも付くだろうが、彼女はなまじ容姿が整っている。

 いや、整いすぎているのだ。


 これでは、人間社会に出ると目立ってしまう。


 そこで待っているものは――。


 あえてもう一度言う。

 彼女にとって最大の悲劇は、他人にとって最高の喜劇なのだ。


 オレは、自分のモノが無い事を他人にバレた時の事を考える。


 ……オレには耐えられそうにない!


 それと同じ状況が、彼女に起こっている。……それも毎日だ。


 この、こわいヒゲではカミソリで剃っても青く残るだろう。

 毎日抜けば、お肌はボロボロだ。


 せめてこの世界に永久脱毛があれば……。


「……なぜ、泣いているの?」


 彼女は感情の起伏なく質問してくる。


 きっと、長い間いじめられて、感情を失ってしまったのだろう。


「強く生きるんだぞ。いじめなんかに負けないで!」


 そう叫んだあと、オレはある事を思いついた。


 そうだ!

 ネムの『何でも分かる帽子』で、永久脱毛の方法が分かるかもしれない。


「ネム、ここでは話していいぞ。そして永久脱毛の方法を、この子に教えてあげてほしい!」

「へ、いいのっ?」

「ああ、いいぞ!我々は、コンプレックスに悩む若者の味方だ。この子のヒゲを、永久脱毛だ!」

「わかった!……えっと、おヒゲをなくす方法だよね?」

「ああそうだ。この子の未来を明るくしてやろう!……そうだな。光魔法がいい。レーザーで毛根を焼き払ってくれよう!」

「ボウズ、少し落ち着いてくれ!」


 ――親父、これが落ち着いてなんかいられるかってんだ!この子の未来がかかってるんだぜ!?


 オレのセリフを遮って親父が話す。


「ボウズ、いいか。ドワーフは、ヒゲで大丈夫なんだ!」

「……平気なのよ?」


 こちらを見つめるドワーフ幼女に、オレは黙って手のひらを向ける。


 そうは言うがお嬢さん、ここは任せてもらおうか!


「……わかったよ!まだ使えないけど、たしかに、光魔法を応用すればできるかもしれない。その方法は……」

「そうか!よかったな。お嬢さん!これで大手をふって街中を歩けるな!!」

「あれ?待ってよ。そもそもこの女の子、おヒゲが――」


「――ストオップゥウウッッツ!!」


 急に大声を張り上げる親父。


 なんだよ、今いいとこなのにさ!

 耳がキンキンするぜ!?


 なおも大声で親父は続ける。


「いいか、ボウズ!?ドワーフの女の子のヒゲは、文化なんだ!別にそれで本人達も納得してるんだ。だから、ほっといてやってくれよ!!」


 ヒゲは文化って……『不倫は文化』みたいな言い方だな。


 それにしても、この見幕……かなり真剣だ。


 なんだかオレ、怒られているみたい。

 大人になってから大人に怒られると、かなりションボリしてしまう。


 オレはちらりとドワーフ幼女を見る。


「……本当に、平気なのよ?」


 ……まあ、本人がそう言っているのならいいにするか?


「本当にいいのか?多分オレたちなら、何とかする方法があるぞ」

「いいわ。……ありがと」

「そうか。……なんだか、騒がせちゃったみたいだな」

「心配してくれたのよね?……なら、いいわ」

「分かってくれればいいんだ。それと、そっちの話す猫は、さっきの話は忘れてくれ」

「わかったよ、ボク話さない。だれにも言わないっ!」


 その後、ドワーフ幼女がお茶を入れてくれたので、ひとまずこの話は終了となった。


 ちなみに、すごく美味いハーブティだった。

 このお茶、リラックス効果がありそうだな。




「……それで、何が内緒なの?」


 オレは親父を見る。

 親父はヤレヤレと言った感じで頷いた。


 話していいって意味だよな。


「この剣を銀貨五枚で売ってもらった事だよ」


 ドワーフ幼女は、剣を鞘から抜き放ち、見つめる。


 その眼は真剣だが……危ないぞ。


 オレはヒヤヒヤしてその様子を見つめる。


 親父が注意しない所をみると、日常的に触らせているんだろうか?


「……これを、銀貨五枚で?」

「ああ、物の弾みだったが、一度言った事はまげられねぇぜ!」

「いい剣ね。……うん、きっと巡り合わせよ?」

「あの、その、かみさんには……」

「黙っているわ」


 なんだか親父より、この幼女の方が立場が上みたいに見えるな。


「……私が研ぐわ」

「子供が刃物で遊んじゃダメだろ」

「あぶないよ」

「こう見えて、私が年上よ?」


 幼女に見えるが、年上なのか?

 確かに種族によって見かけが違うもんな。


 年齢が気になるが、さすがに自分が年上だと名乗る女性に、年って聞きづらいな。


「いくつなの?」


 おっ、ネム、ナイス質問だ。


「24よ。お姉さんだわ」


 なんだか自慢げだな。


 オレのリアルの年齢よりかは年下だが、確かに今のオレの見た目年齢よりは年上だな。


 だが、ドワーフって人間と成長速度が違う可能性があるな。

 この場合、精神年齢だから関係ないのか?


 ちらりと親父をみる。


「ちなみに、長命種族ドワーフの成人は三十歳からだぞ。だが安心しな。その娘の鍛冶と研ぎの腕は超一流だ。俺が保証するぜ」

「二十四年の経験に……嘘はないわ」


 ドヤ顔だ。

 でも、なんだかカッコいい。


 オレには「オレの二十六年の経験にウソはないぜっ、キリッ!」なんて、冗談でも言えないもの。




 しばしの雑談後、オレたちは防具の売り場にやって来た。

 店に入る時には気付かなかったが、かなり広い店だな。


 ちなみに、ドワーフ幼女も付いて来ている。

 リリィジャという名前らしい。


「……リリィでいいわ」


 だそうである。


 意外と気に入られたようだ。

 散々騒ぎまくったのにな。


 ひょっとしたら、珍しいバカなやつと面白がられているだけかもしれない。


 オレたちは自己紹介をして防具を見せてもらう事にした。


 親父には「リリィに手を出すな」と言われたが、オレはヒゲマニアでもロリコンでもないのだ。

 どちらかと言えば巨乳が好きだが……まぁ、もう手は出せないんだけどね。


 まず、鉄製のフルプレートアーマーを着させてもらったのだが、ダメだ。

 すんごい、動きづらい!

 なんとかロボットダンスをするのが精いっぱいだ。


 親父によると、これを着て冒険者をする人間は少ないらしい。

 そもそも、Dクラスの一部の魔物から、鉄より魔物の素材の方が固いのだそうだ。


 ……これは却下だな。


「ネムも何か気に入った物があったら言ってくれよ。アミュレットなんかを首から下げたら可愛いと思うぞ」

「うーん。首がおもくなりそうでいやだな。やめておくよ」


 そういえば、日本に居るころからネムは首輪が嫌いだったな。

 可愛い首輪を見つけては買っていたんだが、何処かですぐ外してしまう。


 ある時、デリバリーお姉さんの携帯電話がベットの下に落ちたので、拾うためベットを動かしたら首輪が大量に出てきてダダ引きされた記憶がある。


 何か勘違いされたようだったが、オレにはそんな性癖は無い。

 ノーマルとは言えないが、何がノーマルかなんて誰にも分からない問題だろ?


 おっと話が逸れてしまった。

 そんな感じでオレたちは色々見てまわった。


 結局、動きやすそうな皮鎧なんかがいいかな。……なんて思っていた頃だ。


 この皮鎧、値段も性能もまさにピンキリ、かなり種類があった。

 ちなみに、洋画で見るような腹筋の型がついた鎧、通称『腹筋鎧』は置いていなかった。


 ……カッコいいと思うんだがな。あれは実在した鎧なのだろうか?


 そんな時、オレはあるモノを見つけてしまったのだ。


 これはディスティニー、運命の出会いと言っても過言ではない。


 

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