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第四章 27.香水と決意

《聞こえてんだろ?返事しろよ!》

《……何だ?……俺は眠いんだよ》


 ジョニーさんと飲んだ帰り道、オレはシャムロック氏に問いかけた。


《シャムロック氏……お前が言いたい事が、……ウップ》

《うっぷ?》

「――オロオロオロオロ!」


 ちょ、ごめん!

 ネムたんの肉球を想像して、しばらく待って居てくれ、シャムロック氏!




《おい、大丈夫か?本当に酒に弱い奴だな。……向こうの市場に、飲み物を売っている出店があるようだぞ。そこで、何か買ったらどうだ?》


 ……うううっ、シャムロック氏がやさしい。


 オレは、シャムロック氏に言われた通り飲み物を買い、市場近くのベンチに腰かけた。


 吐いたおかげで大分楽になった気がする。

 あと少し休めば動けそうだ。


《シャムロック氏、お前の言いたかった事が分かった気がするよ。……だが、オレはお前の考え方全てを肯定するつもりは無いからな》


 半ばグロッキー状態でシャムロック氏に言い放つ。


 凄くカッコ悪いな、今のオレ。


《そうか、考えは人其々だ。別に否定はしない。……それより、気付いているか?》

《……ああ、気付いているよ。元々は、こいつとお話しするための、お散歩だ》


 まあ、そろそろ頃合いかな。


 オレは、市場のテントの影からこちらを伺う人物に声をかける。


「どうした、ロジェ?今オレは、怪我の療養あけで鎧も着ていない。しかも、不味い酒を飲まされてグロッキー状態だ。――殺るなら今がチャンスだぜ?」


 そう、ここ何日か、ロジェ少年が家の前をずっと張っていたんだよな。


 ネムたんが殺気立っていて、抑えるのに苦労したんだ。


「……俺は、卑怯な真似はしない」

「へっ、相変わらずバカだなお前。じゃあ、何でつけて来たんだ?」

「俺の目標はお前を殺す事じゃない。……お前を倒す事に変わったんだ。今日はこれを渡しに来た」


 こいつの言ってる事の違いが、いまいち分からん。


 ロジェ少年は手に持っていた布を解き、直剣をオレに差し出す。


 ……この剣は、確か。


「――オリヴィア姉ちゃんの剣だ。理想郷ユートピアの奴らを捲く為に馬車を一人降りた時、この剣を俺にくれたんだ。……お前が返してくれ」

「嫌だね。お前がオリヴィアに返せばいいだろ?」

「お前じゃなきゃ駄目なんだよ!姉ちゃんは、お前の為なら死ねるって言ってたんだ。『ハルト様を殺すつもりなら、私を殺しなさい』って俺に言ったんだ。……だから俺は、お前を殺すんじゃなくて、お前を『超える』って誓ったんだよ!……姉ちゃんはな、姉ちゃんはお前の事、好きなんだぞ!あの時、死ぬつもりで俺に剣を渡してくれたんだ!……せめて、同じ戦士として、この剣を渡してやってくれ!」


 オレの頭は、またしても真っ白になってしまった。

 

 ジョニーさんが、オブラートに包んでいた疑問の正体が分かってしまったんだ。


 ――オリヴィアは、オレの事が好き。


 だから、クーに嫉妬して、あんな事言ったんだ。

 だから、必死にオレのパーティに入ろうとしてくれていたんだ。


 あいつは『戦士で女』だから、両方で認められようと、必死だったんだ。


 オレだって、ランドルのおっさんに嫉妬して感情のままに殴ってしまった。

 嫉妬してバカな事言いやがってがって。……なんて、口が裂けても言えない。


 その気持ち、痛いくらい分かる。


 だが、オレは……。

 オリヴィアの気持ちに答えられるのか?


 今のオレは何もかも中途半端だ。

 戦士としても、男としてもまるでなっちゃいない。


「悪いな、ロジェ。その剣はお前が返せ。それはお前が受け取った物だ。……だが、感謝する。大バカ野郎は、オレだったって事だな」

「分かった。……俺はお前に礼なんか言わないぞ。例え、オリヴィア姉ちゃんやあの闇エルフを守る為だったとはいえ、お前は俺の親父を殺したんだ」


 ……こいつ、肝心なところで勘違いしてやがるな。


「いいや、クーやオリヴィアを守る為じゃない。あの二人は無関係だ。オレはオレの悪意で、お前のオヤジを殺したんだ。……だから、オレだけを狙え。オレだけに復讐を考えろ。そこだけは勘違いするな?」


 ロジェは、瞳を丸くしてオレを見た。


 その表情の意味は分からないが、オレの言った言葉を理解したと受け取ろう。


「そうかよ。……お前がそんなヤツじゃ無ければ、すぐにでもぶっ殺してやるのにな」

「いつでも待ってるぜ?」

「へっ、簡単にくたばるなよ、黒猫剣士?」


 だから、オレは『剣士』じゃないって言ってんのな。


 ロジェ少年は、何やら晴れ晴れとした顔で去って行った。


 最高に嫌味なヤツだな。


《あの少年、オリヴィアに惚れているな》

《……やっぱり、そう思うか?それで落ち込んでるオリヴィアを元気付けようとして、仇であるオレに会いに来たって事だよな。……凄いヤツだな》


 あいつ、将来強くなりそうだな。


 あの年で、爆乳オリヴィアに恋をするようなマセガ……逸材だ。

 もの凄く強いハートの持ち主だと見ていい。


 どうしよう、オレ、ぶっ殺されたくないよ?


《そうだな、あの少年は強くなるぞ》


 シャムロック氏のお墨付きを頂いたな。


 そして、シャムロック氏は先ほどからなにやら嬉しそうだ。


《オレがぶっ殺されるのがそんなに楽しいか?》

《違うよ。言っているだろ?俺は、お前から見るこの世界が楽しくてしょうがないんだ》

《へぇへぇ、お前のそう言う発言は信用してないよ。……所でお前、オリヴィアがオレの事好きだって気付いてたか?》

《ああ、気付いていたよ。……あれは、ベタ惚れだな》

《そうなのか?……ヤバいな。オレ、人から好かれた事無いから、どうしたらいいか分からないんだよね。うーん、どうしたらよかんろう?》


 まあ、ボッチのシャムロック氏に相談してもしょうがない事は分かっていたんだが、何となくな。


《……お前がどうしたいか、だな》


 オレがどうしたいか……ね。

 割とまともな……と言うより無難な意見だな。


 確かにオリヴィアは美人だし、爆乳ちゃんだし、性格は……アレだが、可愛い所もあるし、嫉妬深いって事はそれだけ好かれていたという裏返しなんだよな……。


 クーと仲良くなってくれた今となっては、オリヴィアに対して悪い感情なんてある訳が無い。


 むしろ、嬉しいような……恥ずかしいような……。


《……でもオレ、アソコが無いからな》


 そうなのだ。

 オレは、恋など出来ない身体だったのだ。


《フンッ、そんなもの、愛があれば何とかなるんじゃないか?……大体、お前のこの世界を見てまわる目的の一つにそれを……生やす事もあるのだろ。話してみてはどうだ?……俺は、気にしていないぞ?》


 気にしていないって……そりゃ、お前は男だからな。


 それにしても、「愛があれば~」だって?

 どうもオレは、大人の対応をするシャムロック氏が気に入らないんだよな。


 生前こいつは、血に飢えた獣のような男だったはずだ。

 それがこうも大人しいと納得がいかない。


 オレの記憶が確かなら、「愛があれば」なんて口が裂けても言わないヤツだった。


《お前、何でそんなに大人しいんだよ?なんか言ってる事おかしいぞ?今までオレは、性欲の発散の為に『円の剣陣』を練習したり、お前をバカにしまくってたじゃないか!……まさか、優しいフリして油断させといて、虎視眈々とオレの身体を狙ってやがるな!そんで蘇って、また剣でヒャッハーするつもりだろ!》

《まだ酒が残っているのか?酔っぱらいめ。……お前の言っている意味で、身体など狙って居ないから安心しろ。それに別に、お前が何の為に『円の剣陣』を練習ようと責める気は無い。……むしろ、必死で可愛いな。……なんて思って居ないぞ?馬鹿弟子!》


 その発言に、一気にオレの酔いは冷めて行く。


 ……こいつまさか?


《おま、……まさか、ゲイ?》

《な!?俺はゲイなどでは無いわ!大体お前、俺の全てを知っているのだろう?何故俺がゲイになる!》


 確かにオレは、シャムロック氏の全てを観た。

 だが、それはこいつの主観的内容だったし、こいつが恋愛している所を観た訳では無い。


 ……毒殺されたのだって分からなかった位だしな。


 ふと、オレはある事を思い出した。

 ……そう言えばこいつ、妙な癖があるんだよな。


《いや、怪しいね。オレの推理が正しければお前はゲイだ!……何故ならこの世界では珍しい『座りションベン野郎』だからだ!》


 オレの居た世界では、座りションベン=ゲイという方式は当てはまらないかもしれないが、ここは異世界、しかも剣と魔法と男尊女卑の世界だ!


 見た目は17歳、でも中身は大人。……精神年齢は小学生。

 じゃなかった、何が言いたいんだっけ?


 とにかく、オレのカンが、こいつはアブノーマルだと告げている!


《な、な、なっ!その発言は取り消せ!それを見ていた癖に……何故、そんな酷い事が俺に言える!?》


 おい、こいつはなぜこんなに涙声なんだ?

 そんなにミクロマンなのか、こいつ?


《おいおい、オレがお前の小さいイチモツなんか見る訳ないだろ?それにしても『剣神』さまのイチモツが爪楊枝なんて冗談にもならねぇな!そうか!それでお前ゲイなのか?しかもオレのアソコが無い事を、心の底では笑ってやがるな!》

《……貴様ァ!許さん、許さんぞぉ!――雌の様な悲鳴を上げろぉ!!》


 その瞬間、オレの左腕の自由が奪われた。

 そして、そのまま左腕が握り拳を作ったかと思うと、オレのボディに容赦ない一撃を与える!


「ブベラッ!……ヒィイィイ、お許しをぉ、お腹は……グヘェ、ヤ、ヤメテ!これ以上はまた、クキャ!……出ちゃうぅ!出したくない物出ちゃぅう!……オロオロオロ」

《ならん。……死よりも辛い苦しみを味わうのだ》

「どなたか……老いた神父と、若い神父を呼んできてください!……ボッヘェ。……助けて、悪霊よ!悪霊が取り付いているのよ!グヒャ!」


 終わらない拳の制裁に、市場の人々が何事かと集まり、オレを見つめる。


 みんな、可哀想なヤツを見る目でオレにおひねりをくれるんだ。


 今日の出来事。

 シャムロック氏をゲイ扱いしたら、殴られてゲイだと勘違いされました。


 ……これは洒落にならねぇ。

 気に入らない事があると容赦なくタコ殴り、生前のシャムロック氏の姿がそこにはあった。


《……もう、ゆるしてくらはい》

《フンッ!しばらくは話してやらん!馬鹿弟子!負け犬!最低人間!》


 その後、シャムロック氏はオレの中で沈黙してしまった。


 体中の色んな所から、冷や汗が出ているのが分かる。

 オレは、とんでもないモンを身体の中に飼っていたんだ!


 シャムロック氏には、早くオレの身体から出て行って頂こうと誓った瞬間だった。




 身体を引きづりながら、オレは家へとたどり着いた。

 途中ある物を買う為寄り道したんだが……まあ、それは後でいいか。


 オレは風呂に入り、身も心もすっきりさせる。


 最近、昼間はネムたんの入れてくれる水で風呂を満たしてあったりする。

 主にオリヴィアの為なんだが……どうも「牢屋の臭いがこびり付いている」と言って、数時間おきに水を浴びたがるらしいのだ。


 気にし過ぎだと思うんだが、やはり牢屋での出来事がトラウマになっているんだろうな。


 風呂から出ると、クーがオレを呼びに来た。

 どうも、オリヴィアがオレと話しをしたいらしい。


 グットタイミング……なんだが、どうも緊張してしまうよな。


 ミィーカがオリヴィアの部屋で話をしていたので「オリヴィアと話す事がある」と言って部屋から出てもらった。


 ちなみにネムとリリィは最近、時間を見つけては二人で何かの研究を行っていたりする。


 今日も楽しそうに、スリリングな議論を繰り広げていたよ?


 オレが聞いた時は『空間拡張魔法と、添付魔法の融合術式の考察』とか言っていた気がする。

 その他にも、ネムは夜中に家を抜け出して色々な魔法の研究を行っているようだ。


 ……うん。是非とも、あれやこれやと頑張って……貰いたい……案件だな?




「今回の事で、私がどれだけ世間知らずだったかが……分かりました。ハルト様には大変ご迷惑をおかけいたしました。……こんな私を、家に置いて下さったんですもの」


 一瞬オレを見た後、下を向いてビクビクと怯えるように話しだすオリヴィア。


 そう言えばオレ、調子に乗って「お前の事が嫌い」とか言っちゃったんだよな。

 オレごとき貧相な男が、この爆乳美少女に何たる身の程知らずな事を言ってしまったんだ。


 うううっ、気まずいよ。


「……分かっております。これ以上ご迷惑はかけられません。すぐに出て行きますわ」


 虚ろな目のオリヴィアは一転、決意を込めた目でオレを見た。

 どうも、オレの沈黙を「早く家から出て行って欲しい」と勘違いしたようだ。


 ヤバイな……何を話していいか分かんないぞ?


 オレは、深呼吸して脳に酸素をいっぱい取り込んだ後、脳をフル回転させ話し出す。


「別に、好きなだけここに居るといい。と言っても、オレたちがこの街から出て行くまでだがな。――そうだ、これをやるよ!」


 オレは、オリヴィアにあるモノを投げ渡す。


「……これは?」

「ポプリだよ。香り系商材は詳しくないが、ラベンダーには心をリラックスさせる効果があるんだろ?」


 まずは、リラックスして貰おうかと思ったんだよね。

 まあ、所詮リラックス効果なんて個人差もあるし、根拠の乏しいモンだが、無いよりマシだ。


「初めに言っとくが、別にお前は臭くないぞ。……てか、今オレは鼻がバカになってるから、臭いが分からないがな」


 主にシャムロック氏のせいだがな!


 オリヴィアはそれに答えず、鼻に近づけにおいをかいだ後、そのポプリを抱きしめた。


「オレも、クーに習ってお前と話をしようと思ったんだが、していいか?」

「……はい」


 死刑宣告を言い渡される前みたいな表情を浮かべるオリヴィア。


「まずオレは、今回の事でお前に謝るつもりは無い。覚悟して冒険者になったんだろ?今回の事はオレのとばっちりだが、今後同じような事が無いとは言い切れない。……実家にでも帰ったらどうだ?」

「……それは、出来ません。私の身に何が起きたかなど、口止めをしても知れ渡る事。もう私に居場所などありませんわ。もちろん、ハルト様のせいでは御座いません。全ては私が弱かった。……それだけの事」


 悔しそうに唇をかみしめるオリヴィア。


 確かに、貴族は見栄が大事だからな。

 山賊に弄ばれた娘(実際の所はどうであれ、その噂は付きまとうだろう)として、同情は受けるかもしれないが、それでは家が傷つくか。


 ……めんどくせぇな!


 だが、まだ『覚悟』はあったんだな。


「じゃあ、話は早い。……もう一個のプレゼントだ。受け取れよ!」


 オレはもう一つの贈り物を投げ渡す。


「これは……香水?」


 やっぱり、においを気にしてる女の子に、二つとも香りモノのプレゼントを送るなんてセンスが無かったか?


 だがいい。

 この香水には、オレなりの特別な意味を込めてみたんだ。


「そう、香水だ。……別にお前に、社交界へ戻れと言ってる訳じゃない。オレの知ってる英雄はな、戦場で香水を嗜んでたそうだ。……血腥い臭いから癒される為……かもしれないな」


 それを聞いて、オリヴィアの頬から涙が伝う。


 厳密に言うと、『オレの世界にいた、かの英雄は香水がお好きだった』という噂しか知らないが、そこから発展させたオレの妄想である。


 これが、オレの答えだ。


「お前は、冒険者で戦士なんだろ?……お前が気に入らないヤツは、ぶっ殺せばいいんだよ。何なら、お前に恥をかかせたヤツらの仲間を、全員血祭りに上げればいい。そんで臓物臭い死体の山の上で、その香水をシュッと一振りしてみろよ?相手は犯罪者、誰も文句は言わねぇ。……世界はお花畑さ」

「……ハルト……様」


 なにも本気で言ってる訳じゃない。

 だが、そのくらいの気持ちの切り替えはあったっていいだろ?って事だ。

 

 オレの言葉に、オリヴィアの眼に狂気と共に生気が宿るのを確かに感じた。


「……今回はオレも負けちまった。オレの実力はあんなもんだ。ガッカリしただろ?……だがな、今度竜人が向かって来たら、全員ぶっ殺してやるつもりだ。オレたち『死を呼ぶ黒い行進(ブラック・パレード)』は、善の種族さまの天敵となる。それでもいいなら、実力を付けるんだな。なんせ相手は竜人、オレは仲間を守れない。――弱いヤツは、仲間に出来ねぇからよ?」

「……強く、なりますわ。やはり貴方は――」


 オリヴィアは、何か言いかけて口をつぐんだ。

 

 オレは、知り合いを死地へ追いやってしまったのだろうか?

 だが、これはオレの精一杯のエールなんだ。


 巻き込んでごめんなさいなんて謝る訳には行かない。

 仲直りしましょうなんて口が裂けても言ない。


 彼女は戻って来ても、決して死のうとはしなかった。


 凄いヤツだろ?

 オレの認めた『戦士』に情けは不要だからな。


「……なあオレ、一週間引きこもってたから、身体なまってんだよね。……今からトレーニングするつもりなんだが、少し付き合ってくれないか?お前もなまってるんだろ?――いつまで座ってんだよ、ほら手を出せよな!」

「――えっ?……はい!」


 オリヴィアは一瞬キョトンとした顔を見せるが、オレの差し出した手に優雅に手を伸ばす。


 どうしよう、目が合わせられないよ?


 取りあえず、これがオレの精一杯、『仲直りの握手』って事で……許してもらえないだろうか?


 そう、オレはチキン野郎なのだ!




「ちっ、やっぱりお前、オリヴィアだけは認めてるんだよな。……ムカつくぜ!」

「そうね。ちょっと妬けるわ?」

「なんだか大人なかんじでした。わたしも……がんばります!」

「なんだかこの二人、『せいしゅん』ぽいよねっ!」


 ドアを開けると、ミィーカ、リリィ、クー、ネムの4人が待ち構えており、オレとオリヴィアに向かってそんな感想を告げてきた。


 ……この4人は、盗み聞きしていたのだろうか?

 もの凄くカッコつけて大げさな事言ってしまったので恥ずかしい。


「お前らにもプレゼントがあるぞ。ここ一週間、家のこと任せっきりだったからな!」


 ここは、プレゼントでもばら撒いて誤魔化す事にするか!


 オレは、背負い鞄からプレゼントを取り出した。


 ネムには、謎の軟体生物の燻製。

 クーには、鍵付きの日記帳。

 リリィには、スケッチブック。

 ミィーカには、お魚柄のマグカップだ。


 ちなみに、ミィーカへプレゼント選びが一番時間がかかった。

 こいつ、他の冒険者から色々なモンをもらってそうだから、一番生活で使える物を選んだつもりだ。


 一番の良い物を選べたと自画自賛している。


「なんでオリヴィアには香水で、私には変な魚柄のマグカップなんだよ!」

「お前、その柄の良さが分からんのか?シンプルで味のある、いいデザインだろ?」

「……なんなら、私が貰うわ?」

「ばか!絶対やるかよ!」



 ミィーカとリリィがいつもの様にじゃれ合っている中、オレの中の小部屋から《……俺の分は?》との声がしたが、無視してやった。


 さんざんオレを痛ぶった『悪霊』に、やるものなんか無いからな!




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