Uninstall-2「付き合う(V)」
作者のcrowです(^_^)/
今回の見どころは、場面が4回移るところと、それぞれの場面で次章に向けて伏線(布石?)的なものを散りばめたところとかですね。
あとは、パーティーでの役割や、ラストとか見てほしいですね。
裏話をするとこの分割、気合入れ過ぎて最初5000文字超えてました(>_<)
なので、少しカットしました。
それでは、本編をどうぞ(^_^)/
――20時10分 『天樹』 掲示板前
そこは普段と変わらず『天樹』内でも一際、賑わっていた。
公式や一般ユーザを問わず情報の発信されるそこは、レベルや性別、JOBに関わらず多様なアバターが集まっていた。
皆は一様に掲示板へとアクセスしミッションやオーダーを吟味していた。
そんな人だかりの後方に、不思議な格好の女アバターが現れた。
雪に紛れる迷彩柄のズボンを穿いているにも関わらず、上半身は袖なしのインナー1枚で、頭には軍人装備を見事に台無しにするネコ耳付きの帽子が被られている。
勿論、「IDEAL」にも服装を性能で選び、見た目は二の次という者も少なからず居る。
しかし、そういう事をするのは総じて男性アバターを使用する者に多く、女性アバターでファッションにこだわらないという例は殆ど聞かない。
故に、変装をしたkeyが目立ってしまったのはtaskにとって完全な誤算だった。
「『ヘイトが鍵屋に集まってないか……?』」
「そりゃあ、あんなヘンテコな格好してたら――」
「チカ! ヘンテコな格好とか、失礼でしょ!」
「アンちゃんもそれを言ったら失礼だよ……」
(は? 格好? 格好が変だから注目を集めてるってのか?)
taskは指摘されても尚、納得はいかなかった。
しかし、これ以上ここで議論する事に意味はないと判断し、taskは話題を変える事にする。
「『そういえば、お前らは鍵屋に付いて行かなくて良かったのか?』」
そうtaskの言う通り、掲示板にはkeyが1人で向かっていた。
この4人は、それを見守る様に通りを1本挟んだ所で待機していた。
「え、ええ。いいんです。私はちょっと訳ありなので」
「俺も。まあ、忍者を演じてるから大っぴらなところには顔を出さない主義なんッス」
「僕も……あまり人前には出ない方が……迷惑をかけてしまうので」
「『ふーん』」
3人が3人とも訳ありという発言にtaskは返答以上の興味を抱いた。
しかし、それを尋ねる事は叶わなかった。
「お待たせー!」
「ちゃんとできたの?」
「勿論、ばっちりだよ」
keyの前でmemory達の秘密を暴く事はtaskの望むところではなかった。
それはmemory達も同じだろうと、taskは思案する。
現に、keyが戻って来た途端、3人は明らかにtaskとの距離を置いた。
(警戒……未だ解けず、か)
現のリア友が割としっかりしている事に安心すべきか、結局仲間外れな事に悲しむべきか、taskは複雑な心境だった。
――20時15分 『天樹』 西門 前
『天樹』にある無法地帯へと繋がる門は西の他に北と東にある。
それぞれの門から繋がる無法地帯は出現するモンスターのレベルが相当に違う。
その中でも西は初心者向けと言っても過言ではないレベルのモンスターしか出現しない。
その理由は明白で、Blue Cupという大陸で初めて設立された国家『銀山』へと続く道だからだ。
新領地の開拓を進行というのなら、これはつまるところ逆走である。
分かり易く例えるなら、RPGでストーリーを少し進めた後、はじまりの街に戻るという感じだろうか。
「ね、早く行こうよ~」
しかしながら、その様な事を当の本人は知る由もなく、例えこれが自分の強さに全く見合わないところに行こうとしても付いて来るだろう。
keyの口調は、そう思わせるような緊張感の欠片もないものだった。
「『その前に、変装はもう解いてもいいぞ』」
「ホント!?」
その言葉を待っていたと言わんばかりに、keyは装備を即座に変更した。
「やっぱ、コレだよね~」
keyは満足そうな声を上げ、自身の姿を見ようとその場でグルグル回っている。
taskは変装の件について弁明しようとしたが、それは自分の選択が間違っていたと認める事になるので、寸前のところで言い留まった。
「『そんな事より、鍵屋。お前、パーティーでどんな役割をしたい?』」
「何、唐突に?」
「『それによってはお前の育成方針が随分変わってくるからな。あらかじめ決めておいて損はない』」
「ふーん。それじゃあね……って、私、パーティーでどんな役割があるとか全然知らないし」
「『例えば、メモリーは……恐らく、キャスターとサポーターの役割を合わせたコントローラーという役だ』」
「へー、それは具体的にどんな事する役なの?」
その質問にはmemory本人が応じた。
「後ろからバフとかかけて味方をサポートしつつ、たまに強い魔法攻撃したりって感じかな」
それを聞いたkeyが感嘆の声を上げた。
しかし、taskはkeyに現実を突きつけた。
「『ちなみにランク・クローバーは魔法の類は一切会得しない』」
「じゃあ、ダメじゃん」
「『まあ、はっきり言って今のランクでは選択肢はあってないようなものだ』」
「で、その私の選べる選択肢って?」
「『アタッカーとタンクだ』」
「アタッカーとタンクね……つまり、攻撃する人と、水分……? まあ、攻撃する人の方は、そりゃそうでしょって感じ。そうしないと敵とか倒せないしね。水分の方は……それ必要?」
「『アタッカーはおおむね合ってるが、タンクは水分じゃないぞ』」
taskがそう告げると、keyは覚えたてのチャット・エモーションで驚きを露わにした。
keyの頭上に「!?」と吹き出しが現れ、目を見開き、口がだらしなく開いていた。
それについてはノーコメントでtaskはタンクの説明をする事にした。
「『タンクっていうのは、敵の物理攻撃を一手に引き受ける役だ。LPとSTMが高い事は最低条件として、ヘイト管理もできないとはっきり言ってお荷物だ』」
「タンクだけにお荷物って、笑えないわね」
その場を冷たい風が颯爽と駆け抜けた。
「『で、どっちにするんだ?』」
「うーん、とりあえず……攻撃する人の方でー」
「『OK。それじゃ、始めるか』」
「おー!」
――20時20分 『銀山』~『天樹』 無法地帯
荒れた地の一部が石畳となった道、俗称・公道を5人は目的地に向けてオートランしていた。
無法地帯でありながら、公道付近にはモンスターが出現しない。
その代わり、公道から外れればすぐにモンスターが出現する。
それは無法地帯に出ていられる制限時間に対しての救済措置である。
モンスターとの戦闘は思いの外、時間を喰う。その間もタイムリミットは刻一刻と迫っているのだ。
ただの規律地帯間の移動に戦闘は不要だろうという運営の判断は正しかった。
しかし、今回5人が目指していたのは「ヤドリギの滝」という名のダンジョンだった。
「……それで、その何とかの滝ってところにどうして行くの?」
「アンタねぇ、何でも屋さんの話、聞いてたの?」
「聞いてたよ。理解したとは言ってないけど」
「おい、このバカなんとかしろ」
「ま、まあ、落ち着いて」
「『いいか、鍵屋。さっきより噛み砕いて話すから分からなかったらその時に言えよ』」
「はーい」
「『チュートリアルミッションの内容は5つの課題のクリアだ。
その内の前半3つについて効率よく終わらせ、且つ、お前の操作技術も向上させるとなると……
お前よりもレベルが圧倒的に低く、ここから比較的近場であり、ダンジョンの構造がシンプルで適度に狭く、出現するモンスターが素材アイテムしかドロップしない上に、出現するモンスターがテスターを含め2種類……道中は実質1種類しかいない「ヤドリギの滝」がベストだ。
分かったか?』」
「あー、OK。それで、4つ目と5つ目は?」
「どっちも規律地帯内でできる内容よ」
「経営系ミッションと、施設ガイドだもんな」
「だから無法地帯でしかできない課題は効率よくやる必要があるんだよ、鍵屋ちゃん」
「へー、よく分かった、ありがとうございましたー(棒)」
(現、なんか昔よりも捻くれたな……まあ、3年も経つし色々あったんだろうな)
そんな事を話していると、あっという間に一行は目的地へと到着した。
――20時25分 「ヤドリギの滝」前
そこは公道の(『天樹』方面から来ると右脇)脇に平然とあり、申し訳程度に看板が立っているのでギリギリそこがダンジョンの入口と分かる。
そもそもフィールドとダンジョンの違いとは、フィールドが縦横無尽に見た目通りどんな所にも行けるのに対し、ダンジョンはフィールドと外見上の変化こそないが入口以外からの侵入と退場が原則不可能であり、最奥はあるがそれは出口ではないというところだ。
この構造は、以前説明したハウスの通路と部屋が見た目上繋がっているが、実際は全くの別空間にあるという関係と全く同じである。
「ココが……何とかの滝ね」
「『ヤドリギの滝、な』」
入口は、5メートル程度の空間を空けて2本の木が並び立ち、2メートル上方で交差しアーチを作るシンプルな外観だった。
その奥は、左右に入口と同じ空間を空けて描画限界まで木々が密集して並び立っていた。
その光景はまるで木でできた壁だと言いたいが、壁にしては所々から月明かりが漏れており欠陥が過ぎる。
「何か幻想的だね」
「私も夜に来たのは初めて……意外と綺麗だね」
陽光による木漏れ日も中々絵になる風景だが、月光によるライトアップも中々の絶景だった。
「風景なんていちいち気にした事ねえよ、なあ?」
と、passがpaintに同意を求めた。
「え? ごめん、今、色んな角度からスクリーンショット撮ってたんだ。何か言った?」
「……いや、なんでもねえよ」
すると再びpaintは付近を歩き回り、スクリーンショット撮影を再開した。
(ドンマイ、パス。IDEALはグラフィックの美麗さも売りの1つだが、上位陣はそんなの一切気にしてない。お前は素質がある……と思う)
と、taskは心の中でフォローしたのだった。
そして、お取込み中のpaintを放置し、taskは「ヤドリギの滝」攻略の説明を始めるのであった。
「『いいか、鍵屋。ここに出るのはLV3の野狐だけだ。最奥にはLV5の狢が居るが最奥から出る事はない。
野狐は動きは素早いが、打たれ弱く脆い……つまり、物理防御力と生命力が圧倒的に低い。
何のステ振りもしてないお前でも3度の攻撃で倒せるはずだ』」
「3回ね。余裕、余裕♪」
「『但し、今回の攻略を支援するに当たって条件がある。まず、俺達は一切手を出さない』」
「大丈夫、大丈夫」
「『そして、もう1つ。お前はノーダメージで野狐を倒すこと』」
「!?」
「『タンク……つまり盾役は俺がやるが、お前が一撃でも受けたらここからやり直しだ』」
「は? 何、言ってんの? 時間無いから効率よく、って言ってたよね? そんなの全然、効率悪い――」
「『俺はお前を立派なアタッカーに育てる。
アタッカーは攻撃のタイミングを見極めれるようにならなくてはならない。上手いアタッカーはタンクよりもヘイトを稼ぐことだってある。
だから、攻撃を避ける術も身に付けろ。その為にはモンスターの攻撃タイミングを知れ、行動のアルゴリズムを把握しろ。
そして、味方の回復は極力頼るな。もしかしたら、ヒーラーはタンクの回復で手一杯かもしれない。
だからダメージは極力受けるな。肝心な時に敵の懐に飛び込めないアタッカーじゃダメだ。
これが、パーティーでのアタッカーの役割だ』」
「これが、アタッカーの……役割」
先程までの軽い調子とは明らかに異なる声音で、その言葉をkeyは復唱した。
そして、keyの中で何らかの逡巡があり、その決断が下った。
keyの出した答え、それは――
「分かったよ。私、その条件でやる」
「アキ!?」
「おいおい、結構どころか相当な難易度だぜ、この縛り……」
即座に止めに入ったmemoryとpassの方を向き、keyは普段の調子で言った。
「それでもやるよ」
そして、keyは尚も心配そうな2人に満面の笑みとピースを見せた。
「分かったよ。その代わり、全力でサポートしてやるからな!」
「そう、だよね。本人がやるって言ってるだもんね。私達も覚悟決めなきゃね」
「ありがと、みんな」
そう、短く感謝を伝えると、keyはtaskの方へ向き直り、下から覗き込む様に上半身を傾けるモーションをし、上目遣いのエモーションで尋ねた。
「当然、何度でも付き合ってくれるんでしょ?」
それに対し、taskは即答だった。
「『勿論、できるまで付き合う』」
ここまで読んで頂きありがとうございますm(_ _)m
タスクの語る理想のアタッカー像は如何だったでしょうか?
何度も言いますが、作者はMMO未プレイです。
ヒーラーの件とかは勝手な想像です。あと、作者の中でアタッカーのイメージはボクサーですね。
なので、ヒット&アウェイが基本スタイルです。蝶の様に舞い、蜂の様に刺す的な??
なんと、次回でChapter-1終了です!!
そして『IDEAL―仮想理想世界―』の更新もストップします。
なぜなら、Chapter-2のプロットはあるが、本編が1文字も書かれていないからです。
また、書き溜めたら公開しますね。
次章は「領地戦」だー!
さて、次回の投稿は2015年04月14日午前9時頃を予定しています。
それでは、最終話も是非読んで下さい(^_^)/




