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IDEAL―仮想理想世界― /Chapter-1「何でも屋《マスター・オーダー》」  作者: crow
Episode-3「必要悪《ネセサリーイビル》」
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Standby-3「必要『悪』(V)」


 作者のcrowです(^_^)/


 今回注目してほしいところは、今回の分割でやっとEpisode-3のタイトルに触れるところです。


 ちなみに、タイトルの(V)でお察しの通り、舞台は再びIDEALに戻ります。


 誰の視点で、というとネタバレになりますので本編でご確認ください(^^)


 あと、久しぶり(?)に長めになってますのでご注意ください(4000字越えです)(・・;)



 それでは、本編をどうぞ(^_^)/



――19時30分 Yellowイエロー Domeドーム 第5国家「海霧かいむ」 (仮)平和協会 ハウス 総帥室



 天井から吊るされた箱の中にある、1本のロウソクが絶え間なく揺らめいている。


 その間接照明の生み出す、ほの暗さと不気味さがこの部屋の主の異常性を語っているようだった。


 しかしながら、照明以外の内装にその様な異常性はなかった。むしろ、シンプルにまとまっている。いや、殺風景に近かった。


 入口から少し進んだ両側に1つずつ回転式の窓、その先に2人掛けの応接用ソファーが2つ、当然向い合わせて置かれている。その奥に天板が木製のマネジメントデスクと革製の黒いオフィスチェアがある。そして、その他には何もない。


 床は、白と黒の大理石がチェス盤の様に並べられていて、どれも磨きが行き届いており天井を映している。


 照明の揺らめきを反射し、床は見る度に違って見える一種のアートの様だった。


 その様子をこの部屋の主こと「(仮)平和協会」のボス・silentbankerが何気なく見ていると、不意に入口がノックされた。


――コン、コン


 という効果音に続いて、silentbankerの目の前にメッセージが現れる。


『sourceさんが入室を希望しています』


【YSE】 ・ NO



 通路と部屋は見た目の上では繋がっている様に見えるが、データ上では別世界にあるも同然なので、通路でいくら騒ごうが部屋の中には聞こえないし、部屋の中の音も外には漏れない。


 しかし、それでは部屋の出入りという点で問題が発生する。


 誰でも自由に出入りできては、ハウスやその中の各部屋、という様に区切る必要性がなくなってしまう。いくらゲームの世界でも、プライバシーは考慮する必要はある。


 故に、『IDEAL』では部屋の持ち主(事前に決定)の承認で入室が出来る様になっている。逆に設定しない事で誰でも出入り可能という事もできる。承認制の場合、入室希望の際に、もしも部屋の持ち主が部屋内に居れば、ノックとメッセージという形で持ち主に承認が問われる。これはマイルーム(ホーム)でも同様だ。


 また、入室者と退室者がほぼ同時に入退室すれば、部屋や通路で出会う事もないので密会・密談にもこの仕様は適している。


 この他にも、部屋の持ち主が退室すると、中に居る他のアバターも全員強制退室したり、部屋に照明がある場合、消灯する。



 事前にsourceが訪ねて来る事を知っていたsilentbankerは迷わず承認をし、自身はオフィスチェアに腰をおろした。


 総帥室に現れたのは、赤いジャケットに白いズボン、黒色のシルクハットとロングブーツを身に付けた、サーカスの猛獣使いの様な格好の男性アバターだった。


「……首尾はどうだい?」


 開口一番、silentbankerはそう言った。


 すると、sourceはおどけた様に両腕を開き、肩をすくめるモーションをした。


「それが『術師連合』の件、もうデーモンに勘付かれたようで……『鬼龍』地下にて両名を確認したという報告も受けています」


「そうかい……セキュリティの方は?」


「目立った動きは今のところありません」


「うん、それじゃあ『術師連合』の件は中止して、次に移ろう」


 そう言って、silentbankerはイスから立ち上がった。


(『術師連合』の信用失墜どころか、事件を嗅ぎ付けない間抜け(デバッガー)宛てに送った情報もセキュリティ上層部に握り潰される結果になってしまったか……まあ、想定範囲内の出来事だけどね。あとは、今回の被害者をこっちに引き込めれば、一矢報いれるかもしれない……けれど、そんな重要参考人を『青藍の監視者』が放置するはずもない、か)


「……総帥? ラグりましたか?」


 立ち上がったまま動かないsilentbankerを見て、心配そうにsourceが声をかけた。その言葉でsilentbankerは我に返り、思慮を中断してsourceの前まで移動した。


「いや。そうだ、今後の方針についてみんなに話しておくよ。みんなは?」


「大広間に」


「それじゃあ、行こうか」


 そう言いながらsilentbankerが外に出る手続きをすると、その傍らで立っていたsourceも強制退室し、総帥室の怪しげな照明も消えた。


 次の瞬間、2人はハウスの総帥室前の廊下に居た。



――19時35分 (仮)平和協会 ハウス 大広間



 ハウスに入って一番最初の部屋がこの大広間と呼ばれる場所である。


 大きさはハウスの3分の1に相当し、80名くらいは優に過ごせるスペースがある。


 その関係で大広間内の床上には家具などのインテリアはほとんど無く、光源も壁にある窓型の間接照明と天井のシャンデリアである。あとは、ハウスの外へと繋がる扉から見て、最奥に朝礼台の様な物があるだけだった。


 その台の前方には、およそ50体の多種多様な格好のアバターが男女問わず無秩序に集まっていた。


「おい、聞いたかよ?」「何が?」「あの話、知ってるか?」「何の話だ?」「なあ、聞いたか? えっと、あれだよ」「いや、あれってなんだよ?」


 今回の呼び出しに応じた『(仮)平和協会』のスタッフ達が、呼び出された理由について憶測を話していると、突然、台の後方にあった両開きの扉が開いた。


 その瞬間、それまで騒々しかった大広間が静まり返った。


 それから間もなく、扉の前に2体のアバターが現れた。


 猛獣使いの様な格好の男性・sourceは現れたその場に残り、黒いローブの青年・silentbankerは前進し、そのまま台の上に立った。


「やあ、みんな。まずは、急な呼び出しにも関わらず半数近い人数が集まってくれた事に感謝するよ」


 淡々と言いながらsilentbankerはフードを解除すると同時に深い礼のモーションをした。


 それに対しスタッフの1人が叫んだ。


「気にすんな、総帥ー!」


 それに続く様に、至る所からsilentbankerを許す言葉が発せられる。


「そうそう」「どうせ、俺達暇人だしな」「アンタの呼び出しならいつでも来るよ!」


 結果、再び大広間は喧騒に包まれた。


 その間に、silentbankerの深い礼のモーションは終了した。


 大広間はsilentbankerを肯定する声で溢れていたが、礼が終わるや否や、silentbankerは右手を軽く挙げるモーションをして発言を制した。


 大広間に2度目の静寂が訪れた。それを見計らって、silentbankerも口を開けた。


「みんな、ありがとう。それで早速だけど、本題に入ろうと思う」


 そこで一旦言葉を切るとsilentbankerは改まった口調で語り出した。


「何故、僕達が『悪』なのか、奴等が『正義』なのか、みんなは考えた事はあるかい?


 そもそも、『悪』なくして『正義』は存在しえない。つまり皮肉な事に、奴等は僕達という存在あくによって生かされているんだ。


 奴等が堂々と民衆に指示できるのも、支持されるのも、全て僕達が居るからこそ成立しているんだ」


 まるで演説会と化した大広間の空気に誰も異は唱えず、黙々とsilentbankerの主張を聞き、時に首肯のモーションした。


「そんな僕達が、どうしてこんな小さな大陸の隅でコソコソとしていなければならない?


 いや、そもそも何故、僕達が『悪』なんだ?


 本当に悪い事をしているのなら、運営がアカウントの停止措置をするだろう?」


 そこで間を置くと、silentbankerはローブをひらめかせながら皆に訴えかける様に腕を振るい、声を大にして言った。


「……そうさ、僕達は『悪』を演じてるんだ! いいや、演じさせられてるんだ!


 奴等が『正義』を名乗れるように、奴等がこの世界を『秩序』の名の下に思いのまま操れるように、それが真実さ!」


 言い終わるのと同時に腕のモーションも切れた。silentbankerはそれを転機に強い口調から諭す様な口調に変え、胸に手を当て静かに話し出した。


「……ねえ、おかしいとは思わないかい?


 僕達が『悪』で、奴等が『正義』なんてシナリオ、誰が、いつ、決めたのさ?


 そう、そんなものは最初からない。


 過去から今に至るまでのシナリオも、これから先のシナリオもね」


 そう言うと、silentbankerは台の左端ひだりはしへ行き、右端に歩きながら、楽しそうに語った。


「さあ、そろそろ僕達も日の目を見る頃だ。


 堂々と大通りを歩き、誰からも通報されない、そんな時代が来るのさ!


 僕達がこの世界の『正義』になるんだ」


 右端に到達したsilentbankerは台の中央に戻り、右腕を掲げると、演説を結ぶ最後の言葉を力強く言った。


「そして、奴等が……奴等こそがこの世界の必要『悪』だったと、この世界に知らしめるんだ!」


 一瞬の静寂の後、大歓声や口笛、拍手が大広間に溢れた。


「総帥、サイコ―!」「やってやりましょーよ!」「俺はアンタに付いてくぜ!」「俺達が正義だ!」


 いつまでも続く歓声や賛同の言葉を浴び、silentbankerも色んな方向に首肯のモーションを返していた。


 そんな中、不意にスタッフの1人が言った言葉がsilentbankerの耳に留まった。


「やっと、セキュリティの奴等をぶっ潰せるんだな!」


 演説終了からそれまで無言だったsilentbankerが、意外にもいちスタッフの考えを正す為に口を開くのだった。


「いいや、奴等をこの世界から消してしまっては困る。


 奴等は僕達が『正義』を名乗る為に必要な『悪』なのだからね」


 silentbankerの意図が完璧にスタッフ全員に行き届いたかは定かではないが、言い終えると再び歓声が上がり、それはsilentbankerが大広間を去った後も続いた。




――19時40分 (仮)平和協会 ハウス 総帥室前の廊下



 silentbankerが演説を終え、総帥室に戻ろうとしていると、不意にsourceに呼び止められるのだった。


「総帥、フォルス店長代理がインしました」


 店長代理とは、中集団のカンパニーにおける副リーダー的存在の事である。ちなみにギルドでは副マスターやサブリーダーなどと一般的に呼ばれる。


 呼び方に差異はあっても、中集団における2番目に強い権力を有する事に変わりはない。


「それじゃ、総帥室で次の作戦会議をしようかな」


「その様にお伝えします」


 そう言うとsourceは一礼して、大広間の方へ去って行った。


 やっと独りになれたsilentbankerは溜め息混じりにポツリと呟いた。


「ふぅ……――さあ、復讐の始まりだ」


 そんな物騒な独り言を知る者は居なかった。




 ここまで読んで頂きありがとうございますm(_ _)m


 silentbankerの演説(?)は如何だったでしょうか?


 最近、1人のキャラに長々と語らせる回数が増えているので、自重したいとは思っているんですが……(・・;)



 まあ追々考えていきます。



 それでは、最後に、感想・批評・アドバイス(参考資料)など募集中です。


 お気軽にコメントくださいm(_ _)m



 さて、次回の投稿は2015年03月31日午前9時頃を予定しています。


 それでは、次話も是非読んで下さい(^_^)/


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