一つ目の題材 証明と肯定。
大丈夫。例え誰かが死んでも、それでも世界は廻っていくから。
「もう嫌なんです」
確かにそれは悲鳴とも取れる、彼女の慟哭だった。涙を流し過ぎて酷く乾いた表情の先には当然光はなく、およそ諦めというやつに塗り潰されていた。そんな彼女の壊れていく様を、私は反対側で見ていた。
「私の居場所はここじゃないんです。ここにはないんです」
本来なら自由にその綺麗な翼でこの大空を飛んでいけた筈だった。しかし彼女の翼は理不尽な事柄で曲げられ、引き千切られた。力なき彼女には成すすべもなく、捥がれた翼では今は地を這う事しか出来ない。
「なら、私はいったい…どこに行けばいいのでしょう?」
世界でたった一人で独りの哀れな少女。白と黒のどちらの色にも染まることが出来ずに。結局、そんな彼女の前には理解者も現れることなく最後の最期まで、こうして誰とも交わる事もなかった。
「ねぇ、私は…どこで…――――…」
その問いに答えることは、残念ながら私には出来なかった。なぜなら、その問いに対する私の導き出した答えは、とても淡白で、極めて冷たいものだったから。
「…ありがとう。みーちゃん」
そう言った彼女は、結局最後まで自由に飛ぶことも儘ならずに、下へ下へと坂様に落ちて行った。一瞬だけふわりと浮いた。景色に投げ出されたその小さな体に手を伸ばすことは躊躇われた。私には、彼女の苦痛を和らげることは出来ないし、ましてや彼女の吐き出した悲痛な想いを理解することは出来ない。そんな資格、私にはないのだ。
「…どうして」
『ありがとう』と最後に彼女が発した言葉が、まるで抉るように深く胸に突き刺さった。今の状況下では、極めて異例で異質なその言葉を…なぜ彼女は私に対して言ったのだろう。
どうして彼女は、嬉しそうに×ったのだろうか。