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誰もいない廊下を歩く。誰にも会うことはない。誰かに会ったところで問題ではない。自らの足音も沈黙に消えていく。吐き出す息も虚無の風に乗って消える。この身体もこの世界に多くある物体の一つにすぎない。この思考も所詮は幻だ。
何のために歩き、何のために進むのか。何かを得、何かを失うため。こればかりは失いたくないと思ったものでも、やはり消えていく。無常こそが生の属性だと言うこともできる。永遠などない。それが人間の限界なのだ。
だから、これでよかったんだ。
廊下に立てかけてある竹刀を手に取る。




