表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ホタルイカ  作者: 大藪鴻大
55/65

楓4

「あのさ、さっきの話本当なの?」

 私は階段を降りながら一成に尋ねる。一成は青縁の眼鏡を押し上げる。

「何がですか?」

「『烏』よ。本当に『烏』がこの学校に現れるの?」

 私はそう言いながら一成の色を見る。緑が広がる平原の向こうにそびえたつ氷山を見つめている、いつもの一成の色に嘘はなかった。

「間違いないです。今日、現れますよ。」

 一成と話していると、ときどき妙な気持になる。一成だけじゃない。向井や杉山と話しているときも同じだ。みんなであんな風に話をし、笑い合っていた自分が信じられない。     

 今までいろんな男の子が声をかけてきたが、どれも下心が見えていた。いろんな女の子と話してきたけど、みんな私のことを分かってくれなかった。


―それが友達っていうものなんじゃない?―

 よりによって男の友達?あり得ないでしょ?

―ところで、問題は解決した?―

 何の話よ?

―向井君に言ってたじゃない?逃げるのかって。どう?戦ってくれそう?―

 さあ、分かんないわよ。もうどうすればいいのか、分かんないわよ。

―向井君なら、上手く戦ってくれる。あなたみたいな失敗はしない。そう思ってるんでしょ?―

 でも、不安なのよ。向井、特別だから。取り返しがつかなくなるんじゃないかって。

―人は出会う前は誰だって普通で、出会ったときに特別になるのよ―



「―ということです。だから、『烏』は今日現れますよ。」

 一成の声が聞こえ、廊下に落ちている紙屑が目に入る。私は顔を上げ、作り笑いをする。

「聞いていましたか?」

「ごめんなさい。ボーとしてて。」

 一成は、軽くため息をつくと眼鏡を指で押し上げる。なんとか場の雰囲気を和ませようと頭を回転させる。

「『烏』が現れるならさ、カメラとかいるかな?」

 一成は微かに笑う。明らかに呆れている。どうやら、余程重要な話をしていたらしい。もしかしたら、この少年は『烏』の正体を突き止めたのではないだろうか?

「まあ、いいんですよ。楓さんは『烏』を追い詰めてくれれば。」

 初めは何を言っているのか分からなかった。時間がたち、一つ一つの言葉が意味を持ち、文を構成した後も、やはりよく分からなかった。

「私が?何をするの?」

 一成は私を見ることなく、つぶやく。

「したいと思ったことしてくれれば、それでいいです。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ