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ホタルイカ  作者: 大藪鴻大
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蛍4

 俺は欠伸をかみしめ、屋上へ続く階段を上る。風も暖かくなり、いくら顔に打ちつけられても目は覚めない。

「また自転車が盗まれたのか?これで何度目だ?」

 ドアを開けると杉山の声が聞こえる。どうやら、報告は始まっているらしい。報告といっても、その後新たな任務を受領していない俺と楓には報告することはなく、一成が『烏』の情報を一方的に伝えている。しかし、今日の情報はいつもとは違う。それは窃盗犯の情報だ。

「ええ。昨夜、この学校で自転車が盗まれたらしいです。僕が現場に行ってみるとこの羽が落ちていました。」

 そう言って一成は黒い羽を取り出し、杉山に手渡す。杉山はその羽を入念に調べている。なるほど、やはり一成は『窃盗犯』ではなく、『烏』の情報を報告していたのか。

「それは『烏』の羽か?」

「恐らくそうです。」

 杉山が腕組をする。その顔はいつも以上に真剣だった。俺は視線を感じ、楓の方を向く。楓は素早く顔をそらす。

「実はですね、僕の計算によると今日も『烏』はこの学校に現れますよ。そして、もっと大きなものが盗まれます。」

 俺は空を見上げる。大きなもの、か。またしても視線を感じるが、今さら隠してももう遅いだろう。今日で終わりだ。

「大きなものって何だ?」

「それは分かりません。でも、僕たちはそれを阻止しなければなりません。これに失敗すれば、取り返しのつかないことになります。」

 一成の言っていることはあながち間違っていない。取り返しがつかない。

「今日で間違いないのか。」

「間違いないです。絶対今日です。」

 一成は自信満々に答える。この発言もきっと計算の内なのだろうな。杉山はそれを聞くと、気合を入れるためか両手で自分の頬を叩く。

「よし、張り込みだ。」

「どこを?」

 三人同時に答える。まるで、その言葉を待っていたかのように素早く、同時に答えた。

「とにかく、適当に校舎を回っておけ。何かあったら俺に報告しろ。俺は屋上に待機しておく。」

 それじゃあ、解散、と杉山が言うと、さっさと屋上から出て行った。続いて楓、一成が順に出て行く。

 俺は出口まで歩くと、また空を見た。雲ひとつない晴天が広がる。この空も随分色が変わった。


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