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ホタルイカ  作者: 大藪鴻大
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藤4

 けもの道、僕は薄暗くなりつつある竹藪の中にいた。そこには生物の気配すら感じられない。竹の集合体が、周りの空気に硬さを持たせているためなのか、風も僕の頬を押しつける。

 足元には、黒い羽が落ちている。念のため、周囲を探しまわったが遺体はなかった。何が消えたのか、それは分からない。僕は手帳を開く。そこにはここの周辺の地図が張ってある。印をつけ、日付を記入する。ペンで日付の古いものからなぞっていく。なぞりながら、計算する。ペンが止まる。

「やはりそうでしたか。」

―What are you doing here?―

 僕は顔を上げる。しかし、人の姿はない。空耳だろうか。

―I’m right here. Look down.―

 僕は言われたとおり下を向く。下を向く過程で黒い影があったので、顔をわずかに元に戻す。そこにいたのは黒猫だった。

―You can really understand what I say? It’s interesting!―

 なぜこの黒猫は英語で話しているのだろうか?空耳にしてはなかなか凝っている。

―You seem to be wiser than the noisy boy. He was only talking. Not listening.―

 黒猫はしっぽを優雅に振る。よく見ると、その姿はぼんやりしている。幽霊なのだろうか?

「あの、もしかして『烏』に会いましたか?」

 この質問は不安だった。この猫は『烏』が何なのか知らないだろうし、この質問は日本語だ。

―Oh, you can only listen my language. But that’s enough. There is no problem.―

 問題ないらしい。黒猫の方も日本語は理解できても、話せないのでお互い様だろう。

―I know anything that you want to know. I see what you want to see. However, I can’t tell you. ―

 どうやら教えてくれないらしい。「知っているけど、教えなーい。」というやつだ。

「どうしてですか?」

―IT is noting. You can’t see IT forever. If you saw IT, you couldn’t believe IT. Many people have sought for IT, and more people have been hurt. Just feel, boy. That is best way to meet IT.―

 そう言うと黒猫は竹藪の中に消えて行った。『烏』は英語でITというらしい。今までの英語の能力を発揮するときが来たらしい。

 

 ―『烏』は何者でもない。永遠にその姿を見ることはできない。見たとしても、『烏』だとは分からないだろう。多くの人間が『烏』を探し求め、それ以上の人が傷ついた。感じるのだ。それが『烏』に会う最善の方法だ―

 

 どうやら黒猫はこう言ったらしい。僕は手元に視線を戻す。ペンの先は僕らの通う高校を指していた。


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