楓3
世の中には知らないほうが幸せなことがある。そして、真実は否定しようとすればするほど、より鮮明になり人を傷つけることがある。人の心が読めること。これ以上に傷つくことはないだろうと思っていた。
しかし、現実というものは思った以上に複雑だ。複雑であるがために、一瞬で全てが分かることばかりではない。人の心を読むのは一瞬のことだ。しかし、真実をつきとめるにはどうしても時間がかかる。
どうすればいいのだろう?どうすれば、一番正しいのだろうか。私は夢の中の前髪で顔の隠れた少女を思い出す。
「ちょっと待て、楓。」
私は後ろを向く。向井の息はわずかに荒い。笑い声とともに人が私の後ろに流れていく。向井の色はやっぱり変わってくれない。
「なによ。手伝いならしないからね。」
「何を隠している?」
何を隠している?あなたがそのセリフを言いますか?
「それはこっちのセリフよ。向井こそ何か隠しているでしょ?」
向井の色がそう言っている。禁じられた愛人が見つかりそうになって必死に隠している、そんな色だ。隠している。それはきっと向井が向井であるために不可欠のものだ。
向井は黙りこむ。黙っていても、色は見える。さっきより濃くなっている。
どうしようもなくて、私は人の流れに飛び込む。このことを一成に伝えるべきだろうか?
闇夜に浮かぶ淡い青色はもうどこかに飛んでいってしまうのだろうか?あの光があったら、あの少女は救われただろうか?




