藤2
「あんな奴が窃盗犯なわけないでしょ。ああ、バカバカしい。」
確かに武藤君は窃盗犯ではなさそうだった。あの様子だとこっそり学校に登校し、窃盗をすることも、誰かに指示してさせているとも思えない。しかし、収穫はあった。
「美夜さんは武藤君に会ってますね。」
「どうして分かるの?」
「美夜さんも蛍君を『烏』だと言っていたじゃないですか。美夜さんの中で『烏』=窃盗犯の構図があれば、武藤の話を聞いてそう確信するでしょう。それに、武藤の仲間と手を組んだのもそういう経緯があったんですよ。蛍君に復讐したいなら協力して、とでも言ったんでしょう。」
あんなに恐怖にかられている状態にも関わらず、玄関を開けたのもそういう理由があるのではないだろうか。僕たちの高校の制服を着た女子が騒いでいたから、開けた。
楓さんは目を細める。僕は人の心は読めないけれども、きっと美夜さんに対する怒りがこみ上げているのだろう。
そろそろ、決着をつけなければいけないのかもしれない。
「楓さん。僕に協力しませんか?」
楓さんは我にかえり、そしてそっぽを向く。
「さあね。私は一成に何度も騙されたからね。」
残念ですけど、僕の計算が正しければあなたは断れないんです。
「お願いしますよ。窃盗犯を捕まえることで、蛍君の秘密も明らかになるはずなんですよ。」
計算通り、楓さんはしばらくの無言の後、うなずいた。




