ただしイケメンに限る! 2
バーニンクルーズメンバーによってBGMはテンションの高いサンバに変えられ、さして広くもない竪穴式住居はカーニバル一色。
原始の祭りさながらに10人ほどのレザージャケットの男達が円陣を組んで室内の外縁部を踊り狂い、ジン、バーニンたかし、ネレイアは中央で切り株椅子に座る。
「それでよジン、ちょっちマジめの相談があるんだわ」
「真面目な相談しにくるならそれなりの雰囲気で来てもらえませんかね一体どういう了見ですか」
「それがYo」
聞いちゃいない。
「……チート?」
「So―Yo! とんでもねえチキン野郎でよ、オレTouch & Go ザ・オレタチのバトルしたんだが」
「対戦したと。で、バーニンクルーズが負けたんですね? そんなに、その彼は上手いんですか?」
「それがゼンゼンベイビーフェイスのアマちゃんで大したことナッシングバット取り巻きがウゼーんだぜ! 他のリザルツはフツーなんだが、インプレッションがテネイティ!」
「バーニン! テンエイティじゃ1080だぜ!」
「っとすまねえな! ワネイティ! 180ポインツなのさ」
「それは……。有名チームの組織票ってことですか」
「それがまたチームじゃねーのよ。どいつもこいつもただのファンだファンだ、ザッツオンリーファンビーだっつーんだ。だもんでシステム上は身内票にもならねえし、かといってそのポイントを奪うこともできねえ」
身内票、組織票。
これはどんなジャンルにだってありうる問題だ。もちろんジンが長年取り組んできたダンスにだって、決してまったくひとつったりとそんな問題がない、とは誰にも断言できないだろう。思い返せば社交ダンスの大会直前、両親に全く知らないダンススクールに連れていかれ、全く知らない先生にレッスンを受けたこともあった。いざ大会に出てみれば、その先生がたまたま偶然審査員をしていたりする。当時のジンは「顔見知りの先生がいてよかったわね本番で緊張しなくていいでしょ」という両親の言葉に、それはそうだ! ありがとう優しいお父様お母様、なんてことを言っていたわけで。
「インプレッション判定の影響が低い無観客の遭遇戦で挑むことをお薦めしますね」
聞いていないような顔をしていたネレイアが、その顔のまま口を挟む。
「そう、それさ。ストゥリートバロルじゃあ勝てるだろーが、こいつがぜってーに観客ありのアリーナバロルにしか出てこないワック野郎でよ」
むむ、それは紳士の風上にも置けぬ弱腰振り。
「だもんでよ、アキュラシー200ポインツユーザーのネレイアならよ、なんとか勝負になんじゃねーかってことなのよ」
「なるほど、顔に似合わず冷静な作戦ですね」
「オイオイバカにすんなよ俺達はSoクールクールクール……クールからホット! 燃える魂『灼熱バーニンクルーズ』!」
イヤホゥゥゥゥゥゥゥ
そうしてこの場は解散となり、改めて翌日、実際に相手を見て対策を練ることとなった。