6、名前にまつわるエトセトラ
ふぎゃふぎゃと泣き声をあげる子を優しい声であやす姿に、これが本来あるべき光景なのだと感じる。
抱いている腕を揺らし、背中をぽんぽんと軽く叩いて、時折頬擦りをしていると、泣き声はだんだんと小さくなり、静かな寝息に変わっていった。
目尻に涙がたまっているのを見て
「「可愛い…」」
二人は同時に呟いた。
ぷっと吹き出すタイミングも一緒。
こんなとき、どうして私達は夫婦で無いのだろうと、心の中で思う。
「ああ、そういえば、もうそろそろ名前を着けようと思うのだけど」
「えええ!?まだつけてなかったの!?」
「1つは私が考えた、2つ目は君につけてほしい」
王族、貴族の婚姻は家や国の繋がりでもあることから、父方、母方から名を一つずつ着けることが慣例となっている。
リーザロイスは母方からの名を名乗ることはめったに無いが、母を早くに亡くしている彼女にとって『揺りかご』の意味を持つその名は寂しさの象徴だったのかもしれない。
「名前…名前…」
眉間に皺を寄せて真剣に悩んでいる。
「そんなに深刻にならなくても…」
「だって、ウィズ…私には…」
「ん?」
「名付けのセンスが無いんだ」
…うん、そうだったね。
☆☆☆☆☆☆☆ミ
忘れもしない幼い日、君は犬を飼いたいと言った。
「この間、ユーリーの家の犬が子どもを産んだんだ♪」
守役の騎士であるユーリニアスにつれてきて見せてもらった仔犬の可愛さを話すうちにリーザロイスも欲しくなってしまったらしい。
さっそくユーリーに聞いてみたところ、乳離れが済んだら譲ってくれることになった。
「嬉しい!!嬉しい」
はしゃぐリーザが超絶可愛いかったのは余談だ。
数日後、ハートレット公爵家に二匹の仔犬が届けられたと聞き、見に行った。
白いのと耳の辺に黒いブチのはいった二匹の仔犬のがじゃれあっていた。
そして、リーザが呼ぶその名に、マジでこけそうになった。
名前の前編です。
引きで区切る。