5、王妃か公爵
「坊やは少し重くなったね、元気に育ってなによりね」
商業が盛んなナキア国は、外交官は花形職業で、リーザロイス・ヨウラン・ハートレット公爵は諸外国との貿易に関する条約等の取り決めや、自国の貿易船の入港できる国を増やすための交渉に駆け回り、自国にいる方が珍しいとまで言われている。
本来、爵位は男性が継承するが、特例として直系に男子がなく、国や領地に貢献の実績と能力が認められれば女性も継ぐことができる。
そうして、現公爵家の当主となったリーザロイスは、一年の大半を国外で過ごしている。
国を代表する美姫の妊娠も現役で仕事をこなしていたために、自国内で知られることがなかったのである。
たとえ、こっそり帰国し、領地で出産を終えても、誰も彼女のことを疑わなかった。
リーザロイスの祖母は降嫁した王家の姫で国王の親戚であり、幼いころから、気心の知れた仲であったが、爵位を継いだその時から、花嫁候補から外れていた。
いずれは自身が婿をとらねばならない身である。
それでも、二人はこの恋を諦め切れなかった。
妻としての道を歩めなくともクロウィズの力になって支えたいと、努力を重ねたことも、そんなリーザロイスの姿に、クロウィズが、胸をきゅんきゅんさせていたことも、離れられない要因だった。
「王妃になるか、公爵になるか、悩んだこともあるけれど、今の自分を選んだことを後悔はしていない、だけど、ウィズの妻になれなったのは、すまないと思っている」
「謝らないでくれ、リーザ!私は
君を愛したことは何よりも幸せだと思っている!それにこんなに可愛い子を与えてくれて感謝してるくらいだ!」
「私もこの子がいてくれて嬉しい」
何しろ、国王がいつまでも結婚し
そうにないので、後継ぎの保険ができた。
「リーザ、君を愛してる、一生、手放したくないんだ」
そう言ってクロウィズはリーザロイスを思いっきり抱き締めた。
ぷきゅう~~~~~~~~
「ウィズ!!は、放せ!!」
「嫌だ!!離さない!!」
「いいから、放せ!!」
坊やがつぶれる!!
父の胸板と母の胸の谷間で。
王子様の試練。きっとこの人たちを両親にもったこと。