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1、やって来てしまった王子様
王宮が揺れた。
ちなみに地震ではない。
未だ正妃も側室も持たない国王がどこからか連れてきた赤子を
「息子が出来た」と言い放ったからだ。
「早速だが女官長、乳母を手配してくれ」
「へ、陛下!!本当にこの御子様は陛下の…?」
「そうだ、よく見ろ、私にそっくりだろう?」
はっきりいって、誰が見ても疑いようのないほど、抱かれている赤子は抱いている国王に似ていた。
国王の母である先王妃の女官であり、幼い頃の国王を見知っている女官長ならなおさらである。
朱金の髪と翡翠の瞳という、王族に多く出る色彩を持ち、目鼻立ちもパーツは国王のミニチュア版。
その日、ナキア国は母御の知れぬ王子様ができた。