どうでもいいこと
「いつも交差点の人を見てますね」
「どうでもいいからね」
「何がです?」
「他人の人生が。自分に無関係な人間が、どこかに何かの目的で向かっているのが面白いの」
「冷たいですね、他人なんて言い方」
「そうかしら。もしかしてあなた、飢え死にした子供の話を聞いて涙を流したことがおありで?でしたら是非お話を伺ってみたいわ、あなたがどんなに優しい心の持ち主かということを」
「残念ながらないですね」
「そうですか。でも人間なんて所詮そんなものでしょう。他人のことなんてどうでもいいの。普段たくさんの子供が亡くなっていても涙を流さない親が、自分の子供が亡くなって時に『どうしてうちの子が』って言うでしょ。自分に関わりのある人しか大事じゃないの。他人なんて無価値なの。」
「それは違うと思います。その言葉は別に、他の子供だったら良かったという意味とは違うのでは?悲しさで自分の子供がこんなことにならなければ良かったと思っているだけですよ。他の子供なら良かった訳じゃない。親としては当然の反応だと思います」
「優しいのね。でも別にご両親を批判したい訳ではないの、ただそれが普通の感覚だと言いたいの」
「そうですか」
「そうです」
「じゃあ電車で人が倒れたら助けないのですか?」
「時と場合によります」
「では助ける可能性もあると?」
「時と場合によります」
「いつなら助けるんですか?」
「ふさわしい時と場合なら」
「答えになっていません」
「答えが必要なの?」
「もういいです」
「そうですか」
「私なら助けます」
「素敵ですね」
「冷たいですね」
「それが私。人の気持ちがよくわからないの」
「つくづく冷たい人ですね。では、そろそろ私は行きますね」
「さようなら他人さん」
「また会えますか?」
「知らないわよ」
「そうですか。でも会いに来ます」
「ご自由に、あなたの人生ですから」




