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接触

再びスグの時間軸に戻ります。

誰が何を隠しているのか。どんな意図があるのか。ぜひお楽しみください。

   二〇二六年十一月四日


 昼休みになり、会社の外にある河川敷のベンチに腰掛け、コンビニおにぎり片手に電話をかけた。

「もしもし?どうだった?」

電話越しでもジオの焦りが伝わってくる。

「できる限りの手段で聞いてみたけど、結局濁された。ごめん、力になれなかった。」

あの違和感を伝えようかと思ったが、今のジオにそれを伝えたら余計な不安に駆られるきがしてやめた。

「そうか。実は俺、今日午前休取ったんだ。」

聞くとジオは、警察に行方不明届を出そうとしたらしい。モナちゃんの親がやっていそうな気もしたが、ジオの記憶が正しければ、母親は他界し、父は原因不明の重傷で意識不明らしい。

「警察署に行って、行方不明届を、ってところまでは順調だったんだよ。慣れた手つきで準備してくれた。だけどよ、モナちゃんの名前と勤務先を出した途端“成人の行方不明は担当が違う”って言って、ムキムキなすっげえお偉いじいさんが出てきたんだ。」

たかが警察署にお偉方がいるとは思えないし、成人と未成年で担当が変わることもなにか不思議に感じた。しかし、警察の素性に詳しいわけでもないのでひとまずそういうものとして聞き進めた。

「そしたら“こちらで調査します。そちらでの勝手な捜査は事態が悪化する一因にもなり得るのでお控えください”って言われて。俺ができることはなくなっちまった。スグ、ありがとな。これ以降は警察がやってくれるらしいから俺たちはその連絡を待とう。」

そうか、一安心だな、といい電話を切った。しかし、なにも一安心できる状況じゃない。ジオは心が一杯で、そんな中注がれた一筋の光が唯一の救いだと思ってしまっている気がした。しかし、友人の苦しむ姿は見たくないから、僕はその真実の可能性は話さなかった。電話を切った携帯の画面は気がつくと暗くなっていた。

「先輩ここでお昼なんて珍しいですね。」

後ろからの急な声に思わず勢いよく振り向いた。リトの手にはコンビニのレジ袋があったので横に腰掛けるよう勧めた。

「聞いてくださいよー、俺の友達警察官なんですけど、この前捜査一課に異動になったらしくて!めちゃめちゃかっこよくないっすか?マジ羨ましいっす。」

捜査一課、警察官。心に引っかかっていた魚の小骨を取りたくなってしまった。

「リト、その子とは仲いいのか?」

「そりゃあ親友みたいなものなんで、お互いの仕事内容もそれなりに話し合ってますよ。」

例えばと言いながら友達との話をしてくれた。

「ちなみにさ、警察って行方不明者の捜査を成人と未成年で担当分けているかって知ってる?」

下手に濁すと逆に伝わらないと思い、ストレートに聞いた。

「聞いてる感じ、そんなことはないと思いますよ。あ、もし行方不明とかそういうことなら警察に頼らないほうが良いらしいっすよ。」

「ん。ごめん、どういうこと?」

口に含んでいたご飯を急いで飲み込み聞き返した。一体どういうことなんだ。

「なんか、警察に来る行方不明のほとんどはすぐに見つかった報告がくるからって、警察内での優先順位は最低らしいっす。」

つまりは、僕らの手で、この事件を解決するほかないらしい。

「あ、もうすぐ休憩時間終わりますよ。」

腕時計を眺めながらリトが教えてくれた。リトはお手洗いに行くと言いその場を離れた。気がつくと俺は電話をかけていた。

「ロナちゃん、今晩時間ある?」


 明日もお互い仕事なので、今日はファミレスに集合した。先に席に座って待っていると、入り口からものすごい勢いでロナちゃんが入ってきた。

「なに!進展あった?」

コートも脱がず荷物も置かず、手を机に置きながらロナちゃんが言った。

「進展と言えばそうだけど、違うと言えば違うって感じ。ひとまず水飲む?」

そう言うと自分を俯瞰したのか、少し顔を赤らめて荷物を下ろした。水を持ってきたウェイターさんに、気まずそうな会釈をするロナちゃんは

 ジオと警察のやりとり、僕とBOXのやりとり、そしてリトから聞いた警察の話をした。

「だから、僕らだけの力でモナちゃんを見つけなくちゃいけないんだ。」

そう言いながら視線を自分の手元からロナちゃんに向けると、なぜか表情が晴れている様に見えて、少し不気味だった。

「ロ、ロナちゃん?」

「あ、ううん。それは大変そうだね。まずは手がかりが必要だけど、近くの防犯カメラとか私たち一般人じゃ見せてもらえないよね。」

僕も防犯カメラは思いついたが、どうやって見せてもらえば良いのか分らなかった。

「たまたま私たちに協力してくれる仲の良い警察官なんていないもんね。」

反射的に「そうだね」と返事してからそんなことがないと思った。

「ロナちゃん、もしかしたらいけるかも。」

そう言い残し一度店を出て電話をかけた。

「どうしたんすかスグ先輩。」

「悪いな、業務時間外に電話なんかして。」

そんなこと気にしてないしむしろ嬉しいとリトは言ってくれた。本当に可愛い後輩だ。

「もし良かったら一緒に飯食わないか?もちろん奢る。それとちょっと協力して欲しくて。」

いつもと違い、少し間が空いた。

「了解っす。買い物しててまだ家帰ってなかったんですぐ向かいますね!」


 数分後、店の扉が開く音がすると、リトがこちらへ歩いてきた。

「ロナちゃん、彼が例のリトくん。」

そう紹介するとリトは深々とお辞儀をしながら挨拶をした。それを見たロナちゃんがさらに深く頭を下げて自己紹介をし、リトは焦りながらも笑いつつ「グラスの乾杯みたいなことしないでくださいよ」と言っていた。なんだか仲良くなれそうで少し安心した。

 「っていうことで、リトの友人に協力してもらえないかなと思ったんだけど、どう?」

リトは直前に口いっぱいに頬張ったご飯を咀嚼しながら片手を広げていたので飲み込むのを待った。

「えっと、多分いけます。ただ、すぐには難しいと思うので一週間か二週間くらかかりますけど大丈夫ですか?」

むしろそんなすぐに動いてくれるのかと驚いたくらいで、目と目が合ったロナちゃんも多分同じことを思っている。

「大丈夫、ちゃんと謝礼もするって伝えて欲しい。」

そういうとリトは一度断ったが、ロナちゃんが「先輩からもらえるものはもらった方が得だよ、私も渡すし」というと「じゃあせっかくなので」と受け入れてくれた。

 その後は他愛ない世間話で盛り上がった。ジオをここに呼ぼうか迷ったが、リトの提案でもう少し進展してから呼ぶことになった。


 そして翌週、リトから集合がかかった。ロナちゃんの都合で週末になり、今回はいつもの居酒屋になった。

仕事終わりにリトと店に入ると、いつもの奥の席にロナちゃんが待っていた。

「では早速なんですけど、結果からいうとその部分の映像のみ、なかったみたいです。」

希望の光が一瞬にして雲で隠れてしまった気がした。少しだけ、これで解決するんじゃないかと思っていた自分の浅はかさが憎い。いつもそうだったじゃないか。僕の人生はいつも、思ったようにいかない。

「じゃあ、モナちゃんのマンション周辺のお店とかはどうかな。なにか不審な車か人が映ってるかも。」

ロナちゃんはいつも前を向いている。俺も、くよくよしていられない。

「その辺も全部調べてくれたらしいです。でも…」

リトの言葉が消え入るようにフェードアウトしていくが、なぜかその言葉の続きは聞こえた気がした。

「ただ、一つだけ手がかりもあったみたいです。」

全員の下がっていた視線が上がった。続けてリトは

「どうやら周辺の監視カメラの調査をお願いしてるときに、彼以外にも捜査に来た人が居たという話を聞いたみたいです。」

と言った。

「てことは、その調査した人は警察じゃなくて、実は犯人の仲間だったかもしれないってこと?」

ロナちゃんの考察はリトの友人の考察と同じだったらしい。

「スーくん、これは思っていた以上に大きな事件かもよ。」

もとから小さな事件とは思っていなかったが、どういうことか分らずいた。それに気がついたのかリトが口を開いた。

「つまり、俺の友人の考えでは、この犯人は一人ではなくグループの可能性が高く、過去にも何度か同じ手口で犯罪をしているかもしれない、と。」

ロナちゃんの言っていたことが分った。この事件の被害者は一人じゃない。しかし、それならひとつ疑問がある。

「でも、それなら警察もさすがに把握してるんじゃないかな?ドラマとかである特別捜査班が組まれるとか。」

それを聞いてリトが申し訳なさそうに口を開いた。

「それなんですけど、どうやらそういう動きはなかったみたいです。友人もこんな事件が起きているなんて知らなかったって言っていて。」

その後も三人で知恵を出したが、手がかりの糸口が見つかることはなく、その日は解散した。帰りの電車、外の夜景が広く見えた。この暗さが、なにもかもを隠して見えなくさせている気がした。


 数日後、非通知のメールが一件、僕のスマホに届いた。


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