1.快眠クラブ設立
「昨日のテレビ見た?」
「見た見た、安眠枕のことだよね?」
「違うよ、イケメンタレントの話だよ」
「イケメンタレントを見ても、疲れは取れないが?」
「アンタは、仕事疲れの中年サラリーマンか!!」
「だってさ、進路のこと考えたら辛くって」
「それは、わかる」
「でしょ?だから、お布団モコモコで、
つい快眠しちゃうんだ」
「おぃっ、それは違うだろ」
「全ての始まりは、一週間前」
「話だけは聞くけど」
「抱き枕党と、ぬいぐるみ戦隊の
パジャマが売ってて」
「パジャマかい」
「どっち買おうかなって、悩んでて」
「知らんがな!」
「両方買っちゃったの」
「それで、どうしたの?」
「着心地がよくて、モコモコって」
「それ聞いた」
「モコモコー、モキュモキュー」
「言語がバグってんのよ、アンタ。
羽毛も、コイツになんとかいってよ」
「寝海ちゃんを見てると、私もスヤスヤー」
「駄目だ、コイツら。現代の眠り姫か!」
ふと、机に敷かれた書類に視線を落とす。
快眠クラブ?え!なんで、
アタシの名前が書かれているの!?
羽毛と寝海の名前も『会長:寝海』
『副会長:冷枕』。
「お前の仕業か!!」
報復がてら、ビローンと頬を引っ張る。
餅のごとく、よく伸びる。
「うぅーっ、私は、
パンの生地じゃないんだよ」
「快眠クラブってなに?」
「学業の合間に小さな一時を、
働いてばかりだと、息が詰まるでしょ?」
「アンタ働いてないでしょ?」
「授業を受けるのも、仕事と同じだよ」
「よーするに寝たいだけと」
「なぜバレた」
「バレバレのバレニーナよ」
「なんで言い回しが古いの?」
「うるさい、そんなことよりも、
クラブって三人で設立できるの?」
「それがね、五人いないと設立できないんだぁ」
「…駄目じゃん」
「そ、だね」
羽毛は、眠たげに欠伸をしながら、
二人に思い付きを口にする。
「ムニャムニャちゃんを誘ってみたらどう?」
「ムニャムニャ?(ハモリながら)」
「無若子ちゃんだよ」
「その子、私知ってる!体育の授業の時、
ずっとムニャムニャいってた子だ」
「またキャラが濃いのが…」
「今の時間だと、グラウンドの隅で、
ムニャムニャしてる思うけど」
「副会長、大型新人だよ!」
「大型すぎるだろ」
「じゃあ、二人とも、おやすみ~」
「つまり、自分は行かないと、羽毛も十分大型だよ」
「褒めてくれて、ありがと…zzzzz」
「私も寝たいんだけど…zzz」
「アタシ一人で行けってか!!」
働かない会長に、ゆるふわの羽毛、
マトモなのがいないじゃん。
ここにムニャムニャがきたら、
もう収集がつかない。