表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

記憶談(番外編2)

番外編の二話目となっております!

よろしくお願いします!

記憶談


「フォーカイス辺境伯さま、ご挨拶申し上げてもよろしいかしら?」


 うっとうしい。


 内心でそう思いつつも、しっかりと挨拶をしなければ、一人前とは言えんぞ、という父の言葉を思い出し、にっこりと笑顔をつくる。その瞬間、ご令嬢のお顔がうっとりとした顔になったのが、またうっとうしい。貴女たちは、王太子殿下の婚約者選びのパーティに来たんじゃないのか。


「ええ、もちろんです。ああ、私からご挨拶申し上げた方が良いかな」


「あら。わたくしからご挨拶申し上げますわ」


 甘ったるい香りに内心、顔をしかめるが、ご令嬢は自分がいいにおいをさせている、と思っているのだ

ろう。うんざりする。


「はじめまして、フォーカイス辺境伯さま。わたくしは、シルーシャー公爵家が長女、カーリンでございますわ」


「はじめまして、シルーシャー公爵令嬢」


「あの、おつき合いしてほしいところがあるのですけれど」


 面倒くさいと思ったが、さすがに公爵令嬢の誘いを棒に振る訳にもいかないだろう。


「ええ、承知致しました。どこへ行かれたいのですか?」


「庭園へ参りませんこと?わたくし、ここの素敵な薔薇が好きですのよ」


「そうなんですね。私は新参者ですから、薔薇があるなど、知りませんでした。今まであまり、社交界にも出たことがないので、庭園がどこにあるかも知らなくて・・・。ご案内いただけますか?」


「ええ、もちろんですわ。だって、わたくしからお誘いしたんですもの」


 当たり前のように手を差し出すシルーシャー公爵令嬢にさすがに、と断りを入れた。


「申し訳ないのですが、婚約者でもないのに、エスコートをさせていただくのは、おこがましいと思います」


「あら、気になさらなくて結構でしてよ」


「・・・そうですか?では、ちょっとお待ちください。喉が渇いてしまったので、飲み物をとってきます。何かいりますか?」


 シルーシャー公爵令嬢は一瞬、顔をしかめたが、すぐに仮面をかぶり直し、ええ、ではシャンパンを、と答えた。


 さて、どうやって断ろうか。ボーイがいないことを言い訳にして、しばらく帰らないでいようか。しかし、それだと紳士として失格だよなぁ。


「我が国の輝く国王陛下にナタリア・フルーレイトがご挨拶申し上げます」


 美しい、と感じた。振り返ると、国王に向かって、上品な緑色のドレスを着た、17歳くらいの少女が

丁寧にカーテシーをしている。その隣には、ぴしっと綺麗に礼服を着こなした男が佇んでいる。


(佇まいからして、公爵家あたり、だろうか?)


 その後、二言三言、国王と会話をして、さっと国王の前を退いた。何故か、国王は笑顔で彼女を見守っている。気になったので、何気ない風で壁にもたれ、彼女を観察した。


 先ほどは背中しか見えなかったが、顔を見ると、大層美しかった。もちろん、顔立ちが綺麗すぎることもそうだが、内面からの美しさがにじみ出ている。


 それが分かりすぎるほどに、少女は美しかった。どうやら、誰かを探しているようできょろきょろ、と父親らしき先ほども見守っていた男とともに辺りを見回している。そのうちに、誰か、見目のいい男性に話しかけられている。ぐっ、と無意識に拳に力が入った。何かを問いかける男に対し、きょとん、とした後、すぐに笑顔になり、少し返事をした。


「あら、アルベートさま?一体、何をなさっていましたの?」


 いつのまにか、隣には、シルーシャー公爵令嬢がいた。びくっ、とする。目が全く笑っていないが、口元は弧を描いている。


「ああ、すみません、シルーシャー公爵令嬢。ボーイを探そうとしたのですが、近くにいなくて・・・」


「そうでしたのね。では、仕方ありませんわ。飲み物は後にしませんか?」


「い・・・いえ、そうですね」


 頷き、周りを見回して、つれてきた側近に合図をおくっておいた。『後で、この令嬢を引き離してくれ』という意味だ。


「楽しみですわ。実はわたくし、夜景は見たことありませんの。今までは、お茶会でしか見たことなかったんですのよ」


「そうなんですね」


「ええ。アルベートさまは、お茶会にお呼ばれしたこと、ありますの?」


「いや、私はないですね」


「あら、そうなんですのね?殿方はそういう機会は婚約者さまがいらっしゃらないと、少ないのかしら?」


 よく喋る。飽き飽きしているが、会話は最低限は続けなければならない。というか、先ほどから思って

いたのだが、名前を呼ぶことを許しただろうか。


「あら、先客かしら?どなたかいらっしゃるみたいだわ」


 庭園に着いたら、誰かがいたようだ。


「では、戻りましょうか?」


「ええ・・・。諦めるしかなさそうね」


 仕方なさそうに頷き、戻ろうとするシルーシャー公爵令嬢を呼び止めるものがいた。


「あの・・・」


「あら、何かしら、貴女」


「ご婚約者さまがお呼びになっていますが・・・」


「え、あ、あら・・・」


 いや、婚約者、いたんかい。


「シルーシャー公爵令嬢、行かれた方が良いですよ。私のことは気になさらないで下さい」


「えっっと・・・。ええ、そうね。ではまた今度、ご一緒してくださいましね」


それには返事をせず、微笑んで、見送った。


「はああ・・・」


「お疲れ様っす」


 先に行ってくれていた、側近とその婚約者が微笑んでいた。


「ああ・・・。悪かったな、ルー」


「いえ、かまわないっすよ」


「貴女もすまなかった」


「気になさらないで下さいませ。庭園、美しかったわ。ね?」


「うん。アルベートさまも行ってみたらどうすか?休んだ方がいいすよ」


「そうだな」


 素直に頷き、二人を見送ってから、噴水に近寄り、座る。


「ふう・・・」


 息を吐き、吐き、吐き、吐き、俯いて、目を休めていると、誰かが来た気配があった。


「いないわ・・・。まさか、庭園にいらっしゃるのかしら」


 この声・・・!


「どなたかいらっしゃいますでしょうか」


 気づけば、僕は立ち上がり、姿を現していた。



 そこには驚きで、目を見開く美しい瞳をもち、可憐で、綺麗で、美しい貴女がいた。

引き続き、読んでくださり、ありがとうございます٩(๑❛ᴗ❛๑)۶

まだ、番外編あります〜!

次はとっても短いです!笑

投稿は不定期に行いますが、頑張るので、読んでくださると嬉しいですᕦ(ò_óˇ)ᕤ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ