慌てるプルエル
「いや、あの…すいません」
凡次が怪訝な顔で受付嬢に尋ねる
「はい、どうかしましたか?」
「いや、どうもこうも…これでステータスを測るんですよね?」
「はい」
「なんでアイアンメイデンなんですか?」
「これ中に入ったら死にますよね?」
「あぁいや、回復魔法が常時かけられる仕組みなので」
「大丈夫ですよ!」
受付嬢の満面の笑みに凡次は言葉が出なくなった
「では、説明をしますね」
「こちらのあなたが大体わかる!アイアンメイデンちゃんmark.3、通称あいめいちゃんは、中に入って使用するもので、あいめいちゃんに内蔵されている棘を使い全身の数か所に微細な穴を開け、開けた穴に棘を入れて細かい身体情報や魔力量を測ることができます」
「では、早速」
受付嬢はあいめいちゃんの入り口を開け凡次の体を押し込む
あいめいちゃんの中には明らかに殺意の籠った棘々しいものがびっしりと生えていた
「いやいやいやいや、待って待って待って」
「それでは、ごゆるりと」
あいめいちゃんの入り口が閉ざされ凡次が棘によって穴があけられる
「痛っ!!」
「これ…微細な穴どころじゃないだろ」
「というか…これ、ずっと最初の痛みが襲ってくるんだけど」
「多分、回復魔法で再生されてる傍から穴を開けられるからずっと最初の痛みが続くのか」
「……地獄だな」
それからしばらく凡次は痛みに侵されながら測定を続ける
しばらく経って、凡次に光明が差す
「測定終了です!お疲れさまでした!」
凡次は扉が開かれると床へ倒れ込み、プルエルが駆けつける
「凡次!大丈夫?!」
「あぁ…大分、や、ばい、です…」
「えぇと、あぁ立てる?あぁいや立てないか、やばいもんね」
プルエルはかなりあたふたしており、気絶しかけの凡次にもそれは伝わった
それは凡次の凛々しいプルエル像からは乖離したものであり、少しの違和感と自分を気遣ってくれている事への嬉しさを感じた
「えっと、とりあえず疲労回復の薬草を!」
凡次の頭を横へ向け、プルエルは青色の草を束ねたものを凡次の口に突っ込んだ
「むぐぅ!」
凡次が情けない声を開けてもお構いなしに薬草をねじ込む
「ふぅ、これで大丈夫かしらね」
うつぶせに寝ていた凡次が元気いっぱいに起き上がる
「すごい、さっきまで死にかけみたいだったのに、体がすいすい動く」
「あのぉ…すいません、そろそろ本題へ入っても大丈夫でしょうか?」
「あ!はい、大丈夫です」
受付嬢はなにかの用紙をテーブルへ置く
「こちらが凡次様のステータス表となります」
(紙なんだ…)
「Aが最高評価でEが最低評価となっております」
凡次達が用紙へ目を通す
「体力,E,筋力E,防御力E,俊敏E,技量E,知力C+,魔力E,潜在能力C」
「うわ、凄い低いわね」
「でも、潜在能力と知力は高いですよ」
「知力は平均より少し上、潜在能力はド平均ね」
「いやぁ、見紛うことなき凡人ね」
(一応現代の体力テストとかは全部平均よりちょい上か下かジャストだったんだけど、冒険者の平均でいくとどうしても低くなるのか)
「うーん…やっぱり固有スキルはないわね」
「え?」
「ない」
「まじですか」
「まじよ、まっさら」
凡次が膝から崩れ落ちる
「終わった」
「でもまぁ、20年も生きられるのならそれでいいかな」
プルエルは呆れた顔で諭す
「…まだ諦めるのは早いでしょ」
「かといって、このステータスだと個人力での勝負は不可能」
「なら団体力で勝負するしかないわよね」