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凡人の魔王の倒し方  作者: 昨日の駄文メーカー
凡人と騎士の国
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凡人と仕事3

「凡次さーん、起きてください!」


明るく朗らかな声がドアを突き抜ける


コンコンコン、と控えめなノックで凡次の意識が覚める


「…はい」


寝ていたいが起きなければいけない葛藤から寝覚めはあまり良くなく、そのせいか少しドスの入った低い声でドアの向こうへ返事をする


返事を聞いてドアが開かれて入ってきたのは兄弟の内弟のシャンヒ・フィリアスと、兄のダルク・フィリアス


凡次は二人の用事を察して内容を聞く


「えっと、今日の仕事は……」


「図書室の掃除ですよ」


(雑務!)


魔物退治と来て次は如何程の仕事が来るのか怯えていた凡次は予想外の仕事に感極まる


「…じゃあ、俺について来てください…」


ダルクが部屋から出てシャンヒと共に凡次が背中を追う、今の宿舎棟を出て城内の別棟に移動する


「というか、騎士って雑務もこなすんですね」


「えぇ、今日は闘技場も魔物退治も全部他の隊が出回ってるので、そういう時は隊全体が城の雑務係ですね」


騎士の威厳やら誇りなんやらと気になることはあるものの、それよりも凡次は隊という言葉に引っ掛かった


「隊って?」


「騎士の国には五百人程度の大隊があって、十二の王剣一人ずつに割り当てられてるんですよ」


「凡次さん達もいつか大隊を導くことになると思いますよ」


まさかの言葉に絶句した


半人前の未熟者である凡次にはその荷は重すぎる


「まぁそんなに気構えないで下さい、別に大隊長って言っても別にそんな特別な事する訳じゃないので」


真か嘘か、狐につままれながらシャンヒを見る


「何事も成ればとも、です。頑張って下さい」


シャンヒが励ましをかけるのと同時にダルクの足が止まる


足を止めたダルクの姿の前には人何十人分か大きい扉があった


「この先に図書室が?」


ダルクが「開け」と、一言扉に向かわせると、重いものが腰を上げるように扉が開かれる


中はモダンな木目調に、落ち着いた黄金色の光で照らされ、六角形の構造に出来た壁へ本棚が沿わせられていて、幾重にも階が重なるのを毎階空けられている中の大きい穴から覗き見れる


「これが図書室……」


想像してたものと大分違うのをお出しされたが、異世界クオリティということで困惑はしなかった


「シャンヒ大隊長及びにダルク大隊長!一階から11階までの掃除完了しました!」


図書室の中に入るとフルアーマーの騎士がエプロンと三角巾を着け、ハンディモップを握った右手を大きく振りながらこちらへ報告をする


「お疲れ様です。後は僕らがやるので各自鍛錬に励んで下さい」


「了解!」


掃除に励んでいた騎士達は三角巾とエプロン、ハンディモップを図書室にある紫の空間へ綺麗にしまってこちらへ敬礼をしてから1列に部屋を出ていった 


贅沢な騎士の使い方だななんて凡次は思いながら掃除用具を手にし、図書室の壁に沿って階段を上がる


階段を登りながら階数を確認すると凡次達が掃除する12階から14階までの三階層が待ち受けていた


12階についたら前のダルクが足を止めた


「……分担します…、12階は凡次さん…、13階はシャンヒ、14階は俺が…」


ダルクがそれぞれ担当の階層を分けると2人はせっせと上階へ上がっていった


凡次は早速ハンディモップを持って12階の掃除に取り掛かる


本の埃を払っていくと、いくつか興味深い本を目にして手にとってみる


「これ1本、猿でもわかる魔法の全て」


現代風の謳い文句を見るに、恐らく魔法の学術書的な扱いなのだろう


内容が少し気になりつつも仕事をサボる訳にはいかないのでひっそりと本棚に戻した


***


二時間ほど経って凡次の掃除が大体終わり、ダルクとシャンヒが降りてきた


「……掃除は以上です…。お疲れ様でした…」


その一言で解散をすると凡次は先程の本の元へ向かう、一冊手にとって本棚の間にある椅子に腰掛けて本を開く


中には通常魔法や条件魔法、属異魔法、詠唱の有無、魔力量、対魔法などについてかなり詳しく載っていた


凡次がその本を読み終えて本を元の場所に戻すと、他の魔法についての本も気になって本棚に目を通す


属異魔法に該当する雪魔法や独楽魔法、空割魔法、札魔法等々様々な魔法に関しての魔法書が本棚に並んでいる


「ん、食欲が増す食性魔法に、周囲の魔素を消す…か、これ使えるかもな」


そう思って本を開くと、目次に但し死ぬという注意書きがデカデカとありそっと本を閉じた


結局は爆発魔法のすすめ、東洋魔法大全、魔法陣へ招待 という三冊を手にとって椅子へ戻る

 

ページに目をつけていると前から新鮮な聞き覚えのある声が耳に入る


「うーん、凡次さんには水魔法と土魔法が向いてると思いますね」


「あれ、シャンヒさん?帰ったんじゃ…」


目の前には帰ったはずのシャンヒとダルクがいた


「いやー帰ろうとしたんですけど、兄さんが様子見ようって言い出して」


「………いや、何か力になれる、かなと…」


それを見たシャンヒが面白おかしく茶化しだす


「兄さんったら1時間も様子見してたんですよ?お節介もここまでくると異常行動ですよホント」


「………うるさいぞ」


ゲシゲシ、とシャンヒのお下げを引っ張ったり上げたりする


シャンヒはそれを嬉々として目を瞑りながらアハハと笑っている


「……とにかく、凡次さんの魔力量だと属異魔法の爆発魔法は使うのに高燃費すぎますし……、比較的生み出すのに魔力量の消費が少ない水魔法か…、大地を利用して魔力消費を抑えられる土魔法とかが1番合うと思うんです……。余計なお世話なら申し訳ないです。はい…」


ダルクは少し様子を伺いながら話をする


「全然そんな事ありませんよ!勉強になります」


その言葉を聞いたダルクは少し不安そうな口元が安定すると、さようならを言うシャンヒを連れて今度こそ帰る


「さて、と…」


凡次が椅子から立ち上がって本棚へ向かい、水魔法と土魔法についての本を手に取り読み出す


幾何時間か本を読んで、凡次は蓄えた知識を実践したくなったので本をしまって外へでて、魔法陣やらなんやら学んだ事を意識しながら魔法についてあれこれを練習する


「体の中の物質と魔力を3:7で混ぜる……」


体全体の巡りを意識しながらイメージするが、やはりそこら辺のあれこれは凡人には難しいもので失敗する


「あ…」

 

瞬間だった、集中を解いてしまい、魔力が体内で暴走してこのままだと死ぬ直前へ追い込まれる


(まずい、まずい、まずい、早く治さないと)


魔力を安定させようと集中するも上手く行かずに、焦りが募って死の恐怖に迫られる


そんな時だった


「なにしてんのよ……」


背中にプルエルの手が触れると、魔力は安定させられてなんとか一命を取り留める


ハァ、ハァ、と荒い息で生を噛みしめる


鼓動の音が明瞭に聞こえて頭は回るが何も考えられない状態で凡次はあぐらをかいていた


「見たところ無詠唱の練習かしら。でも、あんな帳尻の取れない技術なんて必要ないでしょ」

 

プルエルの声は耳に入るが脳には届かず、返しの言葉も発せられない


しばらく沈黙が続いて凡次がようやく生を味わい尽くすとプルエルが続きを話す


「どうしても無詠唱の練習がしたいなら誰かサポートをつけなさい。私とかのね。」


凡次はヘトっと地面に情けなく座り尽くす。


「…はい。分かりました…」


空返事を受け取ると、プルエルは抜け殻のような凡次を兵舎に連れて帰った

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