凡人と騎士王2
「うむ、実に良い親睦会だった」
王は概ね満足したらしく、周囲はそれを見て仕事終わりといった雰囲気を出しているのを見て、凡次達はこの親睦会の真意に気づいた
(これ王様の息抜き会かよ…)
新入りを馴染ませると銘打ったそれは、その実ただ根を詰めすぎる王を労おうと、マーリンが考案した息抜きの場だった
「ではここで解散、各々鍛錬に励め」
マーリンの号令でピッチの皆は解散して、自分の時間に戻っていった
「俺らも宿戻るか」
源蔵がピッチの皆に倣うように提案をする
「待て、貴様ら自分の立場を分かっていないのか?」
「十二の王剣があのような民宿に居ては、民に要らぬ思い事をさせる。宿舎を使え宿舎を」
「え、寮なんてあるんですか?」
マーリンはヒュッと杖を空に振り、光の道標が出来る
「これを辿れ」
そう言うと、転移の陣を光で描き、騎士王と共に帰ろうとする
「少し待て、マーリン」
杖を下げて、魔法を中断する
「凡次と少し話をしてもよいだろうか?」
その場の一同に激震が走る、なぜなら本当に予想していなかったから、何故凡次?何故話をしたい?そういった疑問を本人が一番感じている
「……い、まぁ、分かりました…」
無礼を働く不届き者を王の側に置くことに、明らかに嫌な顔を浮かべるマーリンだったが、王の頼みという事で渋々了承する
「では、貴様ら三人は早急に帰れ」
「いや、出来れば二人で話しても良いだろうか?」
その場の一同、更に衝撃が走る
「い……、分かりました…」
マーリンは声を絞ってしまうほど嫌そうだが、王の頼みという事で渋々了承する
「では私はこれで、王の御身に万が一があらないように呼び鈴を」
王に渡したそれは魔力が込められた道具、魔道具で、話の流れから人呼びの効果があると推測できる代物だ
「では、私達はこれで失礼します」
マーリンは杖を振って転移陣を描き、どこか無念を抱えて三人と共に闘技場から転移した
王と凡人、陽と陰のように対局に位置する2人は様子見の沈黙、凡次は何故自分がここにいるか?何か不敬をしたら首が飛ぶんではないかと、心中穏やかではないどころではなく、嵐がびゅうびゅう吹いていた
「あの、王様…」
下手に出ながら先手をかける
「どうかしたか?」
「いや、何で僕を…」
「色々と話を聞きたくてな、駄目だったか?」
「大丈夫ですが…あまり面白くないですよ?」
「良い、世俗を知るのに聞きたいだけだ」
それから凡次は異世界で経験した一年間を話す
女神に無理矢理転生させられたこと、プルエルに救われたこと、源蔵の修行のこと、クエストで起こったハプニングなど蒼龍のことも話そうかと思ったが、戦っていてなんとなく弱い個体であることを察し、それを話すのは何か憚られたので秘しておかれた
「なるほど、良い経験をしたのだな」
「えぇ、辛いこともありますけど、なんとか周りのお陰でやってけてます」
…………
「王宮に閉じこもっていた我の十七年より、そなたの一年の方がより濃いものだと分かった今、少し妬いてしまうな…」
王は涙の枯れた涙腺を水気の無い悲しみに浸すような、そんな虚しくて哀れなことをしているような顔を浮かべる
「…………」
凡次は闘技場の席を立つ、思い切り、細かい事を振り払うように
そして目の前の少女へ手を伸べる
「行きましょう!王宮の外!」




