凡人と狂人
凡次が源蔵の光を辿って走っていると、城門に着く
(光は城門の先へ走っている、もうギルドでクエスト受注をして出発したのか)
(ということは、シーシャちゃんは恐らくギルド辺りで解放された)
(ならやることもないし、源蔵さんの手伝いに行くか)
凡次は城外に続く光を辿る
(無詠唱、魔法を使って思い出したけど、前に僕が龍と闘った時に無意識で発動して以来、成功しない)
(そもそも詠唱とか無詠唱は、体を覆うように揺蕩う魔力を血液のようにして、血管の特定の場所、特定の密度で停留させて、魔力を体の中の物質と混ぜて性質を変化させた魔力を一つにして、魔法にするっていう、過程を詠唱に肩代わりさせるオート式が詠唱なのに対して、無詠唱は過程を全部こっちが行うセルフ式)
(魔力を血液のようにするってのも難しいのに、それを血管の特定の場所に特定の密度で停留とか、一流の魔法使いにのみ許された正しく神業だし、失敗したら使う魔法にもよるけど魔力が暴走して死にかねない技、そんなデメリット増々の上に、得られるメリットは使う魔法が発動するまで分からないだもんな)
(本当つくづく、損得の天秤が合わない癖に、上澄みは大体習得してるせいで、上澄み相手の闘いには必須のクソスキルだ)
凡次が呑気に長考を繰り広げていると、凡次の視界に霧が映る
「また霧か、もう勘弁してくれ」
思わず愚痴を溢す
(霧散晴天は体力を使うし、なるべく温存したい)
そう思いながら凡次は霧に足を突っ込む
暫く歩くと、人の気配がし、源蔵を追う光が途絶える
(霧、敵の攻撃を受けているようには見えないし、斬っても大丈夫だろう)
【抜刀:霧散晴天】
霧を斬って現れたのは、先ほど自分らを案内してくれた少女、その子が倒れて横たわる姿の側に立ち、首を斬ろうと刀を上げる源蔵の姿だった
(幻影魔法?!)
凡次が一歩下がって鯉口を切る
「おぉ、凡次か、聞いてくれよこの童っぱが…」
言葉に耳を貸さず一刀振り下げる
源蔵は凡次の斬撃を指で軽く挟んで止める
「…落ち着け、俺だ」
凡次は刀を引いて鞘に収める
「…それで、どういうことなんですか?」
「ギルドでディナトス・ウルフの討伐を受けて、森に入って適当に狩ってたら、霧が出来て背後から急にこいつがズブよ」
「んで情報聞こうと脅してたらお前が来たって訳」
「まぁいつ殺しにくるのかとは思ってたが」
「…殺しに行くのを分かってたんですか?」
少女が口を開ける、特に拘束はされていないが、逃げるだけ無駄だと悟ったらしい
「生憎自分を殺そうと寄ってくる奴は慣れっこでな、俺にだけ殺意を向けてたから二人に危害はないと思って放置してた」
「私なんて、取り立てて対処するまでもないと?」
「当たり前だろ」
少女はプルプル体を震えさせ始める
「…すば」
「すば?」
「素晴らしいぃ!」
少女は恍惚とした表情を浮かべて身悶えする
「私なんて矮小な存在を意に介さない圧倒的存在感、圧倒的強さ、圧倒的かっこよさ、圧倒的色気、圧倒的カリスマ、全てを凌駕する圧倒的な私の騎士様!!」
「…キモ」
源蔵はドン引いていた
尊敬されたり、褒められるのは好きだが、ここまで露骨に媚び媚びされるのは嫌らしい
「ん!」
鳴き声を上げる少女を源蔵は冷え切った目で見る
「…なんで俺を狙ったか答えろ」
「知りたいですか、知りたいですか!あれはある雪の日でした…」
「あぁやっぱ長くなりそうだからいいや」
「なら私を騎士様の側に置いてくれませんか!?」
文脈を無視して少女が突っかかる
「絶対嫌だが」
「ありがとうございます!」




