凡人と馬
入国して最初に見た景色は両脇に縦へ連なる西洋風の建造物の数々、そして真ん中の通路を目で追うと、道は盛り上がりかなり離れた距離と高さに立派な城が見える
「じゃあ私はここで、よい旅を」
「ありがとうございました」
騎士が去って凡次達も次の行動を練り始める
「まずは牧場に行くわよ」
「場所聞いてきますね」
凡次が近くにいた人に話しかけようとすると、ある少女が凡次の前に飛び出す
「お兄さん達何か困り事?」
少女は赤い瞳を持った銀髪の女の子で、凡次達の困った様子を感じとり飛び出してきたようだ
「えっと…牧場を探してるんだけど」
「シーシャ、牧場の場所知ってるよ、案内するね」
「ありがとう、シーシャちゃん」
凡次は源蔵達を呼び、状況を説明する
「じゃあシーシャ、案内頼むわね」
「うん」
凡次達は牧場へ向かって歩くシーシャに着いていく
「そういえばシーシャちゃんのご両親はどこなの?」
「シーシャの両親…」
含みのある表情を浮かべる少女に凡次はハッとする
「変なこと聞いてごめんね、全然言わなくて大丈夫だよ」
「シーシャの両親は、前のお家にいるの」
「そうなんだ…会えるといいね」
「…うん」
凡次は少女のデリケートな部分を聞いてしまったことに酷く悶絶する
そして暫く歩くと鼻を少しつく臭いと共に、馬小屋と広大な野原が見え始める
「お兄さん達、牧場着いたよ」
「ありがとう、シーシャ」
「おいエル、馬はどこだ?」
「落ち着きない、すぐ会えるから」
「おい童っぱ、お前はどうする?」
「お兄さん達についていっても大丈夫?」
「勿論です」
凡次は先刻の失態で弱々しくなっており、少女に敬語になる始末だった
「んじゃ行くか」
凡次達は馬小屋の中へと入る、中には馬がずらっと両脇に並べてあり、早速手前にいる馬を源蔵が見る
その馬は凡次らの知る馬とは大きくかけ離れたもので、通常の馬より二倍以上の体格に、鋭く殺意の籠った二本角が眉間に連なるように生え、胴体には何故か折り畳まれている翼を持ち、頭頂部から首裏にかけるまでの黒と赤のグラデーションが目立つ毛が凛と逆立ち、灼熱に浸したような目鼻と蹄を持つ異形の馬だった
「…源蔵さん、これが馬ですか?」
「少なくとも俺の知る馬じゃない…だが凄く」
「かっこいいな!」
「いや、この馬絶対僕ら殺しに来ますよ」
「もう見た目が人殺してそうですもん、見た目で判断するのは良くないですけど、こいつだけは人どころか日課でドラゴン殺してる顔ですよ」
「ドラゴン殺しか、益々気に入った」
「聞けよ話を」
源蔵と凡次が漫才を繰り広げていると、小屋の管理人らしき人物が出てくる、こんな馬達を飼育しているだけあって、筋骨隆々の体に幾つかの傷跡が入った歴戦の猛者のような人物で、特に耳辺りの傷が酷い
「お客さん、馬をお探しですか?」
「店主、こいつはいくらだ?」
「この馬は1200万ニット程ですね」
「源蔵さんやめましょうよ、僕ら1200万ニットも持ってないでしょう」
「ねぇ、他の馬は?」
「この獄穢馬以外の馬ですと天清馬などですね」
「騎士が乗ってた茶色の馬はいないの?」
「はい、三十万ニット程で売っております」
「一気に値下がりしましたね」
「こちらの馬達のような希少種に分類される馬は、一般的な馬より値が張ってしまいまして」
「じゃあその馬を…」
「ちょっと待った!」
「頼む、他の希少種も見せてくれないか?」
「我儘をいってすまない、だが頼む」
源蔵が真剣な眼差しでプルエルを見る
「…分かったわよ、好きなだけ見なさい、でも絶対買わないわよ」
(多分買っちゃう奴だ)




