意味が分かんないから説明がほしい凡人
「縺翫>縲√%縺?▽謖√■蟶ー繧九◇」
簡素な荷車の前に血跡の付いた服を着ている二人の男が凡次の前で止まり、一人の男が凡次を指さす。
「なぜだろう、凄く嫌な予感がする」
男がこちらに近づき腕を伸ばす
「え?なに握手?」
言葉を発した途端、男は拳を勢いよく閉じ慣れた手つきで鳩尾をどつく
「ウッ…」
一瞬何が起きたか分からないままうずくまる凡次の後頭部を両手でホールドし顔に膝蹴りをかます。
ゴビッ!と鈍い音がして、男が両手のホールドを解いて凡次の髪を鷲掴みにすると、仰向けに倒し、倒れている凡次に男が馬乗りになってドゴドゴ殴り続けた
声を出す暇もない速度で殴られ続け辛うじて保たれていた凡次の意識が途絶える
凡次の意識が完全に途絶えても尚、それでも殴り続ける男をもう一人の男が制止する
そして凡次を担ぎ上げ荷車へと放り込んだ
「うぅ…」
唸りながら目を開けるとそこには石の天井が広がっており、慌てて周りを見渡すと一面だけ鉄格子でできた石の部屋だった。
「起きたのね」
不意に話しかけられて凡次が驚く
声の先に目を向けるとそこには夜の海を見ているような碧眼を持ち、黄砂をまぶしたような金髪、端正な顔立ち、そして葉っぱに身を巻いた随分ミニマムなサイズの如何にも妖精といった子が空気椅子のような態勢で浮いていた
「…誰だよお前?」
「私は妖精のプルエル」
「あなたは?」
さっきあったことを思い出し、沸々と不安や怒りといったマイナスの感情が湧いてくる
「ここはどこだ!?俺はなんでこんなとこにいる!?俺はこれからどうなる!?」
凡次は今までの理不尽な目によって溜まったストレスを吐露する
「…ここはとある集落の檻の中、あなたがここにいるのは食材を増やすため、そして3日後に挽肉になって食卓に提供されるわ」
「はぁ?…」
(意味が分からない?ここにきてから全てのことがわからない、なんであのクソ女神にここへ飛ばされた?なんで急にボコされた?なんで急に檻に閉じ込められた?)
だんだんと凡次が床に崩れ落ちる
ボソボソと凡事が呟いている
「説明…説明を…せめてなんか説明しろやぁぁぁぁぁl!!!!!!!!!!」
「今まで必死こいて築いてきたキャリアと人間関係を!一瞬でぶっ壊された代わりに得たものが!腹パンと三日後挽肉行きのチケットな理由を!せ・つ・め・い!しろやぁ!!!」
何度も地面に腕を叩きつけて激昂する
「ハァ、ハァ、ハァ…」
凡次が暴れまわってひとしきりつくと
凡次は中にあったすべてを吐いて力が抜けたのか地面にぺたりと膝がつく
プルエルは凡次をただじっと見つめる
その目は哀れみの目とは少し光の入り方が違ったもので、ただ凡次を見つめていた
しばしの間が空いて、凡次は顔を上げた
その顔は目元が腫れぼったくなっていて、
「…ごめん、いきなり大声で怒鳴って」
「別に気にしてないわ」
「ねぇ、何か話しましょうよ」
凡次がうなずく
「じゃあ早速聞くけど、あなた異世界から来たわよね?」
「!?…なんでそれを?」
「服装と話してた内容から大体ね、こっちじゃ別に異世界からくる人間って珍しくないのよね」
「…そう、なんすか」
(そういえばあのクソ女、後がつっかえてるとか言ってたな)
「じゃあ、技術とか結構進歩してるんですか?」
「全然、異世界からくる人は大体すぐ死んじゃうし、仮に生き残ったとしても言語が伝わらないから技術が大して伝わらないし、そもそもこの世界に転移してくる奴全員有益な情報持ってないし」
「というか転移者大体死んでるって…」
「うん、転移者って転移する場所ランダムなんだけど、この世界安全な場所ほとんどないから大体死ぬのよね」
「海に飛ばされてそのまま溺死が一番多い上に、運よく大陸に飛んでもあんたみたいに喰い人に捕まるのがセオリーなのよね」
「喰い人?」
「喰い人っていうのは人を喰う人間、私たちが捕まってるのがそれね」
「なんで人を?」
「それは…喰い人の起源とかの話だからそこらへんは良く分からないわね」
凡次はプルエルのはぐらかすような態度に疑問を覚えたが深く追求しないことにした
「あ、そういえばこの世界ってどういう世界なんですか?」
「そうね、主に五つの勢力に分かれててお互いにらみ合ってる感じの世界よ」
「その中で一番強い勢力ないし派閥とかあるんですか?」
「ダントツで魔王派閥ね、まず魔王が強すぎる、これに限るわ」
「魔王てどれくらい強いんですか?」
「そうね…魔王を見て生き延びた者によると、底なしの魔力、常時無敵、常に周囲の物をすべて絶命させる、即時回復、状態異常無、全属性攻撃無効、魔法無効、物理無効、すべての攻撃が即死みたいなのがあるらしいわ」
(小学生の考えた設定かな?)
(あと常時無敵だったら即時回復とか○○無効とかいらないし、生き延びたやつはどうやってそこまで魔王の情報掴めたんだよ)
「あぁ…というかプルエルさんは僕の言う言葉が分かるんですね」
「言霊の加護を授けてあげたからね、それがあればどんな言語も読み書き話ができるのよ」
「アハハ!…プルエルさんおかしな日本語使いますね」
腫れていた目元は黄土色になって引っ込んでおり、凡次に少しだけ活気が戻った
それから凡次ととプルエルは例の日が来るまで談笑して過ごした
そして、いよいよその時が来た
「プルエルさん」
「なに?」
「プルエルさんがいなかったら多分…いや絶対恐怖でおかしくなってたと思うんです。でもプルエルさんと話した三日間凄く楽しくて、なんだろう…その、外が見たくなって来たってのと、死にたくないのと…」
「ありがとうって伝えたかった。本当にありがとう、プルエルさん」
「これから長い付き合いになるのに、もう別れの挨拶?」
「え?」
ドドドドドドドドドッと外から採掘音がしばらく続くとドゴォンという音とともに大声が聞こえた
「プルエルゥー!!助けに来たぞ!!!」