森へと三人
「なんで結界内ってずっと春なんですか?」
「結界内っていうよりこの地域全域ね、理由は色々考えがあるんだけど一番有力なのがこの星を照らす星、ガサルとの位置関係によるものじゃないかっていう考えね」
「成程、結構現実的というか、龍の加護のおかげみたいな考えだと思ってました」
「昔はそうだったらしいけど、根拠の無い意見はいずれ淘汰されるものよ」
「そういうもんですか」
「着いたぞ」
「この結界を潜るのもそろそろ慣れましたね」
凡次は慣れた足つきで森へ影を落とす
「油断はするなよ」
「勿論、慣れても怖いのは変わらないので」
「ならいい」
警戒態勢を常に取りつつ順調に森を歩き進める
凡次が周囲を見渡していると不思議な跡があることに気づく
なにかがそこに寝そべっていたような、座していたような跡だ
(なんだあれ…)
(まぁいいか)
「というか、そのディナトス・オークってどこにいるんです?」
「洞窟に群れで暮らしてる」
「習性として人を見かけたらとりあえず襲って来る、類人型に分類される中型生物だ」
「知能が高く狡猾だから注意しろ」
「分かりました」
***
(おかしい、森を歩いて1時間ほど経った)
(本来なら洞窟を何個か見つけられるはず)
(それにいつもより霧が濃い)
「おい、いつもと様子が違うから退却…」
源蔵が後ろを振り返る
(いない!分断された)
【抜刀:霧散晴天】
源蔵が霧を切り払い、現れたのは凡次でもなくプルエルでもなく
太った腹に色白の肌、豚鼻で汚らしい皮服を着ていて
ただこちらをニタついた顔で白目を剥いて見つめるオークだった
源蔵が踏み込み、一閃、オークの首を切り落とす
だがそれはすぐに霧と化して霧散した
(煙を出す魔法)
(俺らを分断し各個撃破する腹か)
(恐らく群れでの行動、だとしたら一番強い俺には何匹かのオークが割り当てられてる筈)
(一体目の霧を出すオーク)
(二体目は…)
茂みに向かって一閃放ち、茂みの中からオークの首が転がってくる
(これは霧を出すオークじゃない)
(霧を出すオークを殺すにはどうしたものか)
(生憎、俺は生物探知とか出来ねぇからな)
(…使うか、忍術)
***
(…分断されたわね)
「ルルルル」
視界の悪い霧の中から、溺れたようなトーンの呻き声が森の中で反響する
(呻き声?)
【炎魔法:炎柱】
プルエルが声の聴こえた場所に火の柱を立てる
「ルルルル」
一つだった呻き声は五つほどに増え、何か準備を整えているかのような意図が声に籠もっている
(呻き声が増えた)
(分身魔法ね)
「最近はオークも魔法を使うのね」
そう言ってプルエルが人差し指を上げる
【豪炎魔法:炎獄舞踏曲第1番・彼方の轟く赫々永炎】
プルエルは詠唱せずに魔法を発動する
たちまち周りに豪炎の陣ができ、同時にオークの悲鳴が上がる
「あんたの鎮魂歌、ちゃんと聞いてあげるわよ」
***
「ふぅ、帰りたい」




