凡人と修行5
「色々聞きたいんですが」
「あぁ、ゴブリンとニットのことか?」
「いやゴブリンはなんとなく分かるんですけど、ニットって何ですか?」
「ここの世界共通貨幣だ」
「十ニットでりんご一個位だな」
(日本円に換算しようにも日本とここのりんごの価値の違いが分からないな)
「まぁ金云々はじき慣れる」
「よし、着いたぞ」
そういって着いたのは半透明の結界前だった
「目標は十匹討伐」
「行くぞ」
凡次らは結界の外側へと足を出し、暗い森へと影を落とす
「うぅ、やっぱ結界の出入りってなんか背中ゾワゾワしません?」
「結界の外と内じゃ大気中の魔素の密度が違うからな」
「確か魔素って大気中に含まれるもので、取り込んで体内で僕らが使える魔力に合成するんでしたっけ?」
「エルに聞け」
「まぁ大まか凡次の言う通りよ、ついでに言うと、魔素は本来殆どの生物にとって猛毒なのだけれど、魔素を取り込んで、体内で毒抜きして魔力に合成することで、この世界への免疫を得ることができる」
「魔力量が低下すると失神したり、体の力が抜けるのはこの世界の免疫が著しく低下した状態ね」
「疑問なんですけど魔力が切れたらどうなるんですか?」
「魔力が切れると魔力を合成する前に魔素の毒に耐えきれなくなって、外部からの魔力供給がなかったら十分程度で死亡するわ」
「怖!」
「凡次には私がついてるから無縁の話だけどね」
「頼もし!」
「というか、猛毒体に取り込んで大丈夫なんですか?」
「酸素も最初は人体にとって猛毒だったっていうし大丈夫でしょ」
源蔵が足を止め、刀の柄を握る
「お前ら、イチャつくのは結構だが、ゴブリンの前では控えとけ」
「え!いるんですか!?」
「あぁ、しかも囲まれてる」
「出来れば凡次と一対一の対面を作りたかったんだが」
「仕方ない」
そう源蔵が口にした
途端、源蔵を中心とした蒼色の巨大な円陣が現れる
【円陣:松海獄】
言葉だけで圧倒されてしまいそうな威圧の風が吹き渡り、気付けば刀身が振り下ろされていた
刀を鞘から抜く動作、刀を振り下ろす動作一切を消し去ったような動きだった。
だが、それよりも異質な光景が広がっていた
周囲の切られたはずの木々、ゴブリンの残骸がその場で静止しているのだ
一つの動きもなく、空中にあったものは空中で静止し、木々は倒れずそのまま根を張っている
「凡次、見ておきなさい」
「これが剣士の極致に達した絶技、切るという動作をあまりに疾く行ったせいで、切られる結果が遅れてやってくる、世界の法則を否定する技よ」
「は?」
「そして、切られる結果が遅れてやってくる物は、その場で死んだように静止する」
「その内バラバラになるがな」
「あの…ゴブリンに対してやるには大袈裟すぎませんか?」
「こっちの方が保存状態が良くなる」
「え…あぁ、いやそんな冷蔵庫みたいな使い方しないでくださいよ」
源蔵が袋にゴブリンを詰め込む
「というか、これ魔王倒せません?」
「世界の法則ひとつ否定する程度で倒せたらどれだけ楽か…」
「世界の法則ひとつ否定する程度って何?」
「言っとくが俺より強い奴は星の数いるからな」
「お前にそれらを越えろとは言わん、ただ殺せるようになれ」
「僕があなたを?」
「俺より強い奴をだ」
「無理です」
「じゃあ修行するぞ」
「話聞けよ」




