凡人と修行2
「無理です」
「これが仮にも勇者様の言う事か」
源蔵がため息をつく
「というか、いつまでそこで寝そべってるつもりだ仮勇者」
「ほら、立って握れ」
凡次は体の力を振り絞ってなんとか立ち上がる
そして源蔵に使い込まれた竹刀を渡される
「あの、それでこれから何を」
「まずは…」
顎を剣先で突かれ、ドッという音が脳内で小さく木霊して、凡次が1〜2mほど吹っ飛ぶ
「俺にボコされろ」
倒れ込んだ凡次にすかさず追撃をかける
(死ぬ!)
凡次は咄嗟に竹刀を胸に置く
源蔵の竹刀は凡次の竹刀を折り、心臓を穿とうとして
、寸止される
凡次は白目を剥き横たわって気絶してしまっていた
源蔵がプルエルへ目を向ける
「エル、やっぱりこいつ駄目かもな」
「何故?」
「何故って、まず最初の不意打ちに対応出来なかった」
「この時点で駄目だがまぁいい」
「次に、飛ばされた時受け身を取れなかった」
「それに俺の追撃を防ぐ時の竹刀の動き諸々」
「これら全て、お前の身体強化魔法をかけられた上での動きだ」
「しかも、この醜態を…」
源蔵が凡次に目を向ける
するとさっきまで床に横たわっていたはずの体が、何故か立ち上がることが出来ている
「…醜態は撤回しよう」
凡次の荒い息が道場内を闊歩する
しばらく間をおいて凡次は言葉を出す
「すいま、せん」
「誓った、ばかり、なのに」
凡次は声を出すのもやっとなのか、途切れ途切れに言葉を綴る
「守る、ために」
「ここで、倒れるわけ、には…いかない!」
きっぱり言う凡次の眼に決意が宿る
だが、対称的に源蔵の目は冷え切っている
「そうか、目的を再確認できたなら何より」
「だが、どうやって俺の攻撃を凌ぐ?」
凡次はブツブツと独り言を呟いている
「いっそ、そのまま狸寝入りで寝過ごした方が身のためだろうに」
「凌ぐ必要は、ない」
凡次が天に腕を掲げる
「?」
源蔵は違和感を感じ辺りを見渡す
(道場の竹刀がない?)
(上、まさかこいつ!)
「遅いですよ」
【闇魔法:降り注ぐ石の悉く】
凡次が言い放って腕を振り下ろす
途端に源蔵の上で浮いていた竹刀の剣先が源蔵目掛けて放たれる
降り注ぐ無数の竹刀に対し源蔵は一本の竹刀を構え、源蔵から無数の手が生えたように、間合いに触れた剣先を軽くいなす
「初心者にしては良い魔法だ」
「だが威力が足りねぇな」
そして、糸が切れたように凡次は倒れ込んでしまった
「凡次、大丈夫?」
プルエルが凡次の元へ駆けつける
(俺が呑気にエルと話してる間に、こいつは気絶したフリをして、俺の頭上に竹刀を密かにセットして、頭上へ落とした)
(こいつが闇魔法を使えたのは、プルエルと共にした3日間で初級魔法を習得し、扱える初級魔法で最も適性の高い闇の初級魔法を、この山を登っている時に練習していた…あんなにバテていたのは魔力使用のせいか)
(全ては、俺が油断をしていることを算段に入れた作戦)
(だがおかしい、こいつは魔法を習い立てで魔力量の増量も行えていないのに、何故これほど魔法を乱発できた?その上、俺はこいつが登山中に魔法を使用する所を確認出来なかった)
「黒幕はお前か、プルエル」
「何のこと?」
「白々しい、こいつがこんなに魔法を撃てたのも、俺にバレずに魔法の鍛錬を行えたのも、全て、お前がこいつに魔力を分けたり、魔法で幻影を作ったからだな?」
「…全部バレちゃったわね」
「まぁ、凡次を舐めきってるあんたに、少しギャフンと言わせたくてね」
「ほぉ」
源蔵がにやけ面を浮かべる
「何よ?」
「いや、見せつけてくるなと」
「うるっさいわね」
「大体、あんたが訳分かんない修行するからでしょ?」
「私は大人しく休ませ…」
「まぁまぁ、ひとまず今日はこいつを休ませてやろうぜ?」
「あんた…」




