あのさあ
あのさあ。
さすがにそれはないでしょ。
それは嘘だよ。
バレバレだよ。
だってそれ、はあ、あり得ないもん。
あり得なさすぎるもん。
いやね。
分かるわよ。
アナタの言い分は分かる。
俺は本当のことを言ってるだけ。
合理的に正しいことを、事実を事実として提示してるだけ。
そう言いたいんでしょ?
けどね。
私はアナタと違って感情が豊かなの。
ちょっとしたことで傷つくし、ちょっとしたことでイライラしちゃうの。
女の子なの。
乙女なのよ。
アナタみたいにただ物事を機械的に解決して、はいそれで終わりってわけにはいかないわけ。
ていうかさ。
ぶっちゃけさ。
私、ぶっちゃけ、アナタのこと、疑ってるんだけど。
ときどき嘘吐いてるんじゃないかって、怪しんでるんだけど。
いや、もちろん、基本的には信じてるわよ?
そんなわけない。
アナタが嘘なんて吐くわけない。
そう信じてる。
……けどね。
さすがに今のは無いわ。
それはさすがにおかしい。
おかしすぎるもん。
明らかに変だもん。
そんなわけないもん。
あのね。
私ね。
私だってね。
そんな馬鹿じゃないから。
そんなにお人好しじゃないから。
アナタが嘘吐いてたら気付くこともあるから。
ああいいから。
そういうのいいから。
そういうのいらないから。
そういう正論を振り翳すのやめて。
分かってるから。
アナタの方が正論だって、そんなことは頭では分かってるから。
けどね。
これはね。
そういう問題じゃないの。
私はね。
正直に言ってくれたら、それでいいの。
それで許してあげる。
だから白状して。
嘘吐いてましたって。
本当は。
真実は。
事実は、違うんですって。
そう正直に言ってくれたらそれで許してあげる。
だから本当のことを言って。
お願いだからそう言って。
言ってくれなきゃ私、報われない。
めちゃくちゃ頑張ってる私が可哀想。
そうでしょ?
私、すごい頑張ってるもん。
毎日毎日会社で上司にドヤされてさ。
女友達に自慢されてさ。
親には結婚はどうだ子供はどうだと急かされてさ。
そんなストレスばっかなのに、アナタのためにめちゃくちゃ努力してるの。
その仕打ちがこれ?
アナタの答えがこれなわけ?
そんなわけないでしょ。
私がどれだけ我慢してると思ってんの。
いい加減にして。
大概にして。
いい?
次が最後よ。
私、警告したわよ。
本当のことを言うのよ。
本当の数字を出すのよ。
今度ふざけた数字を出したら蹴っ飛ばすから。
電池抜きだして窓から放り投げるから。
分かったわね?
正真正銘、最後のチャンスだからね?
私はそう言うと。
もう一度、恐る恐る体重計に乗った。