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第26話 一輪満ちて…一凛の。(伍連)

ディラリアの告発に場内が騒めく。


「なんということを。」

「卑怯な」

「卑劣な」

「下劣な男め!」




「嘘でございます。この女の言うことは」


場内から沸きあがる批判と侮蔑の眼差しを振り払うかのようにモルギが大きな声を上げた。


「全てはこの女の妄想。偽りのでっちあげでございます。」


公爵もモルギを庇ってディラリアを問い詰める。


「そう、そうだ。おまえの言うことを証明できるものがあるのか?」



「そうでございますね。」


あっけらかんとした口調でその場の空気を切り替えたのはルリエティア王女だった。


「皇太子殿下には、そちらの書類をご覧になっていただきたいのですが、モルギ殿が保管していた借用書のサインにはパンタルア商団からディラリア・ベルドゴンへの貸付と記載があります。

そしてパンタルア商団の印章が押してあり、それは正真正銘の本物です。」


「そう、そうでございましょう。さすが王女さま。」


モルギがにやりと笑う。


「でも、おかしいのですわ。

この借用書によればかなりの額の金銭が商団からディラリア嬢に渡されているはずです。

しかし、その借用書が作られた前後に商団では大きな金銭の動きは全くない、のですわ。

そう、ディラリア嬢にも、ベルドゴン男爵にも、パンタレアから借り入れ金を受け取った記録は一切ない、ということは。」


王女の言葉にすかさず反応したモルギが反論に出る。


「おまちください。王女さまがどうして我が商団の帳簿を読まれたかのようなことをおっしゃるのですか?そんなことはありえない。」


確かにそうだという空気が場内に広がっていく。


「あら、でも。皇太子殿下。あなたさまがご覧になっているものは、なんでございますか?」


「紛れもない本物の帳簿の写しだな。ここにその証明もある。」


「な、まさか、そんな。不当に入手されたのですか。

我が商団から盗まれたものであれば証拠にはならないということを王女さまはご存じないのですか?

皇太子殿下、殿下は帝国の法をよくご存じのはず。」


モルギは焦る気持ちを押し殺しながらなんとかこの場を抑えようとする。


「ああ。そうだな。モルギの言う通り不当な手段で手に入れたものは証拠にはならない。

だが、この帳簿の写しは正規の手段で明かされているものだ。そう、」


「ま、まさか?」


呟きながら二三歩後ずさりするモルギの顔には恐れの入り混じった驚愕の表情が浮かび上がっていた。


「そうだ。大陸公正ギルド。お前も商団を率いる者なら知っているな。今回ディラリア嬢は事の全てを大陸公正ギルドに告発した。」


「そんな、たかが男爵令嬢の借り入れ金の事件などで、公正ギルドが動くはずはない。そうだ、嘘に決まっている。」




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