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23話 一輪満ちて…一凛の。(弐連)

ディラリアの帰郷とほぼ同時期にトルティット王国から帝国へと派遣された使節団を歓迎する夜会が皇城にて開催されることとなった。

そしてその夜会にて使節団がトルティット王からの勅書を帝国皇帝に捧げると、皇帝から皇太子イマグヌスに手渡された勅書の中身が明かされる。


「トルティット王は王国王女様と皇太子殿下との婚姻の儀を祝して、トルティット王国で算出される真珠の全ての権利を王女に移譲致します。」


この発表に場内がざわめき立つ。



真珠は海の貴重な宝石であり、トルティット王国が独占権をもって大陸中の真珠の流通を規制していた故に、豪族と称される高位貴族であっても手に入りにくいという希少な価値を帯びていた。

その権利が皇太子の婚約者である王女に渡されるということは彼女が皇太子妃になった際にはそれがそのまま帝国の財産となることを意味していた。


これはもう、停滞したままだったこの婚姻を進める大きな起爆剤になるのは間違いないとその場に居合わせた誰もがそう感じていた。


王女を排除して何とか自分の家門の血筋の者を皇太子妃にと画策していた者達ですら、この勝負から降りざるをえないだろうと。


騒めく会場の只中、玉座の前に進み出たのは宮廷貴族の重鎮であるボルギィッタム公爵だった。


「皇帝陛下、皇太子殿下、使臣殿。心よりお祝い申し上げます。

ところで、この貴重な資源を管理するにはかなり高度な知識を持ち合させた者が必要かと存じます。

我が家門が擁する商団にその管理をお任せいただきましたら、両国の絆の証ともいえるこの貴重な資源を身命を賭してお守りさせていただきます。

どうか、このボルギィッタムにその任をお任せいただきたく伏してお願い申し上げる次第でございます。」


貴族の誰もが喉から手がでるほどこの利権を欲しているのは間違いない、が、ボルギィッタム公爵の動きの早さに誰もがしてやられた感を覚えていた。


「ほう。そなたが擁する商団があるのか?」


イマグヌス皇太子が公爵の話に興味を持ったかのように言葉を繋ぐ。


「はい。以前より私が目をかけている商団なのですが、誠心誠意お仕えする者でございますので。きっとお気に召すかと。」


「ほお。その者がこの場におるのか?」


「はい。トルティット王国との貿易にも詳しいため、通訳も兼ねて呼んでおります。」


「陛下。私も興味がありますので、その商団の者を御前に参らせてもよろしいでしょうか。」


皇太子の一言で話が進んでいくのをボルギィッタム公爵は内心では踊りだしたいほどだったが、それを表に出さないよう無欲な表情を何とか保つ。


我が娘であるイラザリリスを皇太子妃にと今まで様々な策を練ってきたが、それももう望みはなくなった。

では、せめて、なんとしてもこの利権を得なければ。それさえ叶えば、とてつもなく莫大な利益が手に入るのだから。


公爵に呼ばれた男が玉座の前に跪く。

そしてその男が深い礼を取って頭を深く下げた時、会場の入り口付近が騒めき始める。

何が起こっているのか、礼を取ったままの男には分らぬまま男は頭を下げ続けた。




会場に大きな声が響き渡る。

「トルティット王国王女ルリエティア・アウルム・トルティット姫のご入場です。」


離宮である黎明宮に閉じ籠った病弱な姫君。

嫁いで来た時より今まで決して人前に出ることのなかったトルティット王国王女ルリエティア・アウルム・トルティット姫が突然姿を現したのだから、当然だが会場中が喧騒と熱気に包まれたかのようになった。


だが、王女が会場に足を踏み入れ玉座に向かってゆっくりと進み始めた途端、会場は水を打ったかのように静まり返る。




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