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第20話  遭遇に咲く邂逅の涙を拭わんと…(漆連)

モルギ・パンタルアはほくそ笑んでいた。

こうも計画が上手くいくとは。あまりにも、あっけない程簡単過ぎて笑いが出るほどだ。


ベルドゴン男爵家はモルギにとってちょうどよく転がり込んできた美味なカモだった。

男爵家の遠い傍系であるコーリャ家は貴族の一端をかじってはいるが、家内の内情は火の車だった。

そもそもが細々とした生計でなんとか暮らしを送っていたこの一家は、先代が一家の将来を賭けて嫡男を帝国首都へと送り出した時から既に衰退よりも更に加速スピードで破滅に向かっていったのである。


コーリャ家のこの若者は首都で若者が嵌まり込む誘惑にあっけなく落ちていく。

ギャンブル、娼館通い等で実家からの仕送りはすぐ底を突き、行き着く先は定番の借金だった。

そして世間知らずなこの若者は借金の担保に自らを売り渡す。


こうしてコーリャ家は早すぎる先代の死と共にその実権を債権者に握られることとなったのだ。

表向きは当主である彼は、既に債権者の操り人形と化していた。

そうコーリャ家はモルギ・パンタルアの隠れ蓑となっていたのである。


モルギはコーリャ家が欲しいのではなかった。

彼が狩ろうとしていたのは本家の家門ベルドゴン男爵家。

なんとしてもその家門をものにしてそれを帝国高位貴族へのステップとする、モルギの計画は慎重であり、綿密であり、そして執念深いものだった。







「レイブン、ここに書いてあることは間違いないことなの?」


レイブンの渡した調査報告書を読み終わった彼女の瞳は憂いを帯びている。

そしてその奥に揺れているのはおそらくは揺るぎない怒りだ。


「ああ。事実から推測される真実ってやつだ。」


「でも、これは。これは、あまりにも執拗なあまりにも醜悪な…ああ、言葉にならないわ。」


彼女の声には苛立ちと共に切実な悲しみが籠っていた。






流行り病を最初にもたらしたのは、コーリャ家からベルドゴンの領地へ移ってきた者達ではなかったか?


男爵夫人が煎じる薬草を配られた領民達から買い取っていた商人がいたのは何故だったのか?


そして首都から来たというその商人が金銭と共に領民達に渡して回っていた希少な薬がベルドゴンの領地に更に重い病を蔓延らせていたのは、どういうことだったのか?


男爵夫人が命を落としたのは…ベルドゴン男爵が多大な借金を負うことになったのは…そして成すすべもないまま男爵までもが重い病に伏しているのは…。


数え上げればきりがないほどの全てが一点を指す。そう、モルギ・パンタルアに。












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