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第5話 目を付けられた

 四月の新入生を祝う桜が散り、登下校の道に敷き詰められた桜は今や、靴の足跡などで黒く踏み荒らされていた。


 担任から委員会に所属する人の立候補者を募ることになった。


「図書委員会に入りたい人は手を挙げてー」


 ふゆ姉の漫画や小説をたまに拝借する影響で本が好きだった。そして、楽そうという理由で僕は図書委員に立候補した。


 人数は委員会にもよるが、各委員会、最低男女一人ずつ必要だ。昨年までは、人数不足などをお構いなしにやりたい人だけでやっていた。


 今年から、どこかの姓が同じ生徒会の副生徒会長の決め事でクラスの中に確定で男女一人ずつ必要になった。


 そして、クラスから立候補するのだがもう一人の女性が手を挙げて立候補する。


 名前は二宮さくら。


「よろしくね。あきくんは本好きなの?」


「姉の影響でね、一年間よろしくお願いします」


 彼女が僕を凝視してくる。彼女は謝る素振りを見せながら


「ごめん、とても肌が白くてキメが細やかで……」


 言葉にはしないがそれもはる姉の影響かもしれない。家でお風呂を上がると、習慣的に乳液や化粧水を両手に持ったはる姉に塗られるからだ。

 今はそんな影響を受けて自主的にやっている。


「あ、ありがとう。二宮さんも髪が綺麗だよ」


 単純に褒められるのは嬉しい。でも唐突すぎて返す言葉が感謝と相手を褒めることになった。しかし、本心から思っている言葉だ。


 彼女の容姿は、髪の毛は僕と同じように黒く眼鏡がチャームポイントになっている。髪の毛は中くらいの長さで背は女子の中でも小さい方である。


 クラスに一人はいる真面目そうで、教室の隅で本を読んでいるイメージの人だ。


 お互いに何ともいえない気まずい空気が流れる。この空気を変えるための話題が欲しい。


 天気、時事、料理、学校生活……。どれもピンとこないが、彼女の名前のさくらという名前に季節しか感じない。


「変な質問だけど、四月生まれ?」


「そうです。凄いです」


 両親に姉たちの名前の由来を聞いた時、生まれた季節にちなんで付けたらしい。彼女の名前を聞いた時にふと思い出した。


「夏樹あきくんか。秋……そうすると、九月から十一月生まれ?」


「ううん。二月十四日だよ」


「副生徒会長のはる先輩が春の二月から五月生まれたとして、季節が被らないように名前に秋がついているってこと?」


「ごめん、自分の名前あまり季節関係ないんだ」


「そうなのですか、変な詮索してごめんなさい」


「いやいや、気に病む必要は無いと思う。先に話したのこっちだし」


 しかし、はる姉の名前が後輩にまで伝わっているなんて演説の力は凄いな


「じゃあ、スマホでLINE交換しよ?図書委員の仕事の話とかしたいし」


「ごめん。スマホ……持ってないんだ。何かある時はこれ家の番号だから、かけて」


 男友達と同じような対応をする。


「あきくん、スマホ持ってないんだ……」


 二宮さんは驚いている様子。高校生のマストアイテムだ。内心、持ちたいよ。


「うん。あと、かける時は休みの日とかだと嬉しい。僕が家にいる確率高いから」


 はる姉に受話器を取られたら、ハッキリ言って怖い。はる姉は土日のどちらかをバイトのシフトに入れてるし僕が家にいることが多いから出られるのは本当だ。


 そして、今日はこの後、図書委員会の定例会なるものに参加する予定だ。












 あきくんがスマホを持っていなかった。でも、彼の家の電話番号を知ることができた。


 スマホで夜な夜な会話する予定だったのに……。まあ、家の電話番号を知れただけでもいいよね。

 これからもっと知ればいいんだけだし。


 でも、あきくんを知ったのはいつだろう……。


 たぶん中学くらいからだろう。彼のことを見た時、一目惚れだった。大きな透き通るような瞳、笑い方の優しさ、どこかあどけなさを感じつつも、しっかりしているところ。


 見て、楽しむ。ただ、それだけで満足だったのに……。


 高校に上がると同じクラスで席も隣という計ったような場所だった。


 これは、神さまが「がんばるんじゃぞ」みたいなメッセージだと思う。




 あきくん、物が無くなったりしたら‥‥‥ごめんね。

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