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第44話 クリスマス前編

 


「お待たせ」




「待ってないよ〜」




 昨日の夜、クレアとメールでのやりとりをして、朝方から駅でクレアと待ち合わせをした。今朝は、はる姉にバレないように移動するのが大変だった。




「じゃあ、今日は僕が行きたいところ行ってから映画でいい?」




「行きたいところ?もちろんいいけど」




 僕はクレアを連れてショッピングモールに行った。彼女と話しながら、




「日本語覚える時なにが難しかった?クレア」




「うーん、類義語かな」




「類義語?」




「そう、例えば「分かる」と「知る」って意味を知ったら私にとってはどちらも「Know」で済むのにそれぞれ微妙に違うの?」




 僕は内心、どちらも同じ意味だと思う。




「なにが違うか、よく考えて」




 物事を”分かる”、物事を“知る”。




「あー、なんとなくわかったかも。「分かる」は意味を理解する「understand」で「知る」はそのままの意味で「know」か。ほんとだややこしい」




「無意識に使い分けてるのが日本人は凄いわね」




「なんだろ、疑問にすら思ってなかった」




 でもそれを言うなら、難しい日本語を覚えるクレアも凄いよ。




 そんな話をしていると、僕は服屋の前に立ち止まる。ここにしようかな。




「クレア!ふゆ姉の誕生日プレゼントを買いたいんだけど男の僕じゃセンスないからクレアが代わりに選んでくれない?」




 ふゆ姉は家が最強だと思っているので、外に出る服装を制服かスエットくらいしか見たことがない。そんなふゆ姉に少しは服を着て欲しい想いがあった。




「ふゆか……」




 彼女は少し寂しげな顔をする。しかし、いつま通りクレアは笑顔になる。




「いいわよ、ふゆの身長だけ教えてくれてら、見繕ってあげる。私も買いたいものが出来たから、後で付いてきてくれる?」




 その提案を僕は受け入れる。その後、服を二人で選んで、似合う服を見つけて買う。思いの外、女性物の服って高いだね……。




「ふゆはゲーム好きだよね」




「そうだね。服を渡しても着るかどうか」




「着るよ」




 クレアが断言する。なんというか目力が強い。




 そんな話をしていると、ゲーム屋に入るスエット姿のふゆ姉がいた。なんで?




「あれは、店舗特典が欲しいか。パッケージ派かによるわね」




 クレアが言う。




「ふゆ姉は、ダウンロード版をよく買うよ。たぶん、前者じゃない?」




「ゲーム屋に入れなくなったね。んー、じゃあ、あれにしようか。近くの電気屋いこ?」




 サプライズのせいもあるだろうけど、ふゆ姉に二人でいる姿を見られたら……。てか、あれ? クレアが日本にいるのはそもそもふゆ姉のせいなのでは?


 そんなことを思っているが、別のところに行くのなら関係はない。




「近くのならヤマダ電機かな」




「そこで大丈夫」




 近くのヤマダ電機に行き、クレアが言う。




「少し買ってくるから、ちょっと待ってて」




「一緒に行く?」




「女の子は色々事情があって困るから本屋でも行ってて」




クレアは本屋を指指す。




「わかった。本屋で時間を潰しているね」




「OK! すぐ買ってくるから。本屋で待ってて」




 女の子には色々事情があるのかそんなことを思いながら本屋に向かう。そこに、本を読んでいる二宮さくらがいた。




 僕は本屋に向かった足を、出口方向に向く。よくよく考えれば、悪いことをしてないのになんで僕は彼女を避けているのだろうか。そんなことを思いながら、足取りは本屋の方とは真逆に向いていていた。




 男子トイレなどに少し隠れてクレアを待ってよう。そう考えた。男子トイレに向かう足取りの中、手首を掴まれる。




「あきくん?」




「やあ、さくらさん。偶然だね」




「さっき、本屋の中で私を数秒見て反対方向行ったの知ってるよ?」




 怖い、この人視野広くない?価値観とかじゃなくて普通に物理的な視野が広い。




「あきくん、一人?ならーー」




「あっきー。買えたよー」




 ふゆ姉の誕生日を買えたクレアが戻ってきた。なんともタイミングが悪い。




「今日はクレアとなん……だ」




 なーにが、なんだだ。とっかえひっかえで、女を連れ回してるような言い方をなぜしてしまったのか。




「ふーん、ずいぶんグローバルなんだね」




 それはクレアの容姿を言ってる?それとも僕がいろんな人と居ることを言ってる?またはどちらも?




 「あきくんはそんなボインボインが好きなんだ。私みたいな貧乳なんか目もくれないんだ…」




「いえいえ、私の学んだ日本語であなたのような人をまな板と言うそうですね」




 クレアは言葉を挟み、彼女はボディラインを強調する。




「あんたね!」




「おーう、私日本語わかりませーん」




 嘘をつくクレア、知ってるかぎりクレアの日本語は話せて、理解するまである。なんだろう、英語を喋れない人が、英語で「I don’t speak English」って言うのと同じ矛盾を感じる。




「あっきー、映画を行きましょう……。2時間たっぷり、二人きりで……二人!でね」




 なんでこんなにも煽るのか。クレアに連れながら去るとき、振り返り二宮さんを見ると目にはハイライトは無かった。 

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