第40話 別れ
「あきと付き合ってもこんなの対等な関係じゃないよね」
僕は唐突に言われた。なぜ言われたのか。頭の中で彼女の言葉が反復していた。
彼女は珍しく千円札を机に置いて店を出た。
初めての彼女――僕はフラれたらしい。
「なにが、ダメだったのかな……」
僕は尽くしすぎていたのかもしれない。何かあるたびに彼女は僕に金をせがみ、僕は文句の一つ言わず金を出していた。
こんなの対等な関係じゃない……か。僕はバイトで稼いだ汗と涙の結晶のお金を湯水の如く彼女に貢いだ。
この関係は当たり前と思っていたが、僕は恋愛の経験不足なのだろう。男友達に聞くと、この関係は側からみれば異質でお金の関係も異常だった。
「ポストにお金を貢ぐ女かな」
「ホストな……」
なんで、赤い箱にお金を入れるのか。郵便局の人が困るだけだ。
「良かったじゃん、沼から抜け出せて」
僕の元彼女はパチンコ台か。こんな感傷的になるなんて意外だった。未練があるのか……?僕は彼女に頼られることで自分という存在を意識できたのかもしれない。
恋は人を盲目にする。僕はいつも受け身だった。何もしなくても、はる姉やふゆ姉が世話をしてくれていた。その行為は嬉しいが僕は必要とされたかった。
それが彼女の場合お金だとしても、彼女が喜んでくれるなら僕は出していた。
肌寒い季節がもうすぐ来る。商店街の人はイルミネーションを飾りクリスマス本番で本領を発揮するためらしい。
「唐突すぎてついていけないよ!!!」
綺麗に光るイルミネーションが今日は少し憎たらしかった。