第2話 身体は大人、心は中途半端
高校で所属している陸上部の部活が終わり、タオルで汗を拭き取り、制汗スプレーを身体にかける。そして、手早く制服に着替えて帰宅する。
校門には、遠くからでも目立つ翡翠色の髪が見えた。
「あき!」
「はる姉?どうしたの?」
「生徒会の仕事があってね。今日はバイトもないし、あきと帰れると思って待っていたの」
何かに気づいた彼女は
「あき、止まって」
言われたとおり止まっていると、ワイシャツの第一ボタンを閉じてくれた。満足した顔をしているはる姉は、最後に僕のネクタイをキツく締める。
「く、苦しい」
「少したるんでいるぞ」
はる姉はそう言って、僕のネクタイを緩める。生徒会の副会長にもなると服装にも厳しくなる。
「ほら、じゃあ家までダッシュね!」
そういうと、はる姉は家まで走っていった。段々と後ろ姿が小さくなる。
一緒に帰ろうと言ったのに走って帰るのは馬鹿なの?部活動で疲れているのに‥‥‥。しかし、文句を言っても仕方がない。はる姉に付いていくように走った。
はる姉は女子ながら普通に体力おばけでもある。
家に到着し中に入るとはる姉が抱きついてきた。
「あーくんの匂いだぁ」
幼児退行?家の中に入ると、はる姉は人が変わったようになる。正確には昔のようになる。
人間は、時、場所、相手で人格の仮面を付け替えている。学校で友達の前にいる時、家の中で親の前にいる時で性格が違うように人格の仮面を使い分けている。
でも、ここまで変わるものなの?
「自分汗臭いから、離れて」
抱きつくはる姉を剥がして
「あーくん良い匂いだよ」
「はいはい」
適当にあしらい。汗フェチなの?と心の中で思いながら、洗面所で手洗いうがいをする。そして、すぐに脱衣所で服を脱ぎ風呂に浸かる。
外では真面目でカッコいい、はる姉が家の中ではお馬鹿に豹変
し、人格が崩れていく。
抱きつかれた時に胸が当たったが子どもの頃よりも確実に大きくなっていた。
頭を左右に振り、煩悩を打ち消すように湯船に頭をつける。
はる姉は心だけが、成長してないような‥‥‥。脱衣所からは、鼻歌を歌いながら洗濯機を回す音が聞こえる。僕が着ていたものを洗ってくれるようだ。
風呂が終わり脱衣所のドアを開けると、下着姿のはる姉がいた。
「えっちぃ〜」
「なんで、服を脱いでる!!」
「私の制服も一緒に洗って、ついでにお風呂にも一緒に入ろうかと思って……」
僕はすぐさま替えの服を持って自分の部屋に向かった。
「性格が大胆すぎる!」