第10話 電話前編
私ーー二宮さくらは大きく深呼吸する。肺を全部空にするくらい、息を吐き出し、そして大きく吸い込む。
彼が発言した言葉ーー図書委員会の終わり一緒に帰って電話番号を渡された時に。
「うん。あとかける時は休みの日とかだと嬉しいな。僕が家にいる確率高いから」
私は彼に図書委員の内容を伝える過程で話すきっかけを作る。
ゴールデンウィークの初日、彼の家の電話番号にかけた。
プルルル。
中々掛からないな。あきくん、家にいないのかな。まあ、その方が機械に言うだけで緊張せずに済むからいいけど。
そして、前回の最後に戻るーー。
《ピーーの後に、留守番電話をお願いします》
《ピーーーー》
《 「私は、夏樹あきくんの同学年の二宮さくらです。夏樹くんに図書委員会について、話したいことがあるので折り返しの電話をお願いします」 》
ガチャッ
ふーー言い切った。彼に電話が繋がらなかったことは残念でもあるが、幸にも気持ち的に余裕ができた。
緊張するけど、彼からの電話の折り返しが来るまでこの緊張は収まらないだろう。掛け直してくれるかな?いや、きっとしてくれる。彼は優しいから。
緊張と不安の中オロオロしている。しかし、どこかで彼からの電話を楽しみな私がいる。
「ただいまー!」
僕はスマホと共に家に帰る。すると、ふゆ姉が
「あっくん?私の部屋に来てねー」
「いいけど、今はあまりゲームやりたくないよ」
数日前に、鬼畜ゲームをやらされて、その後には、ふゆ姉とはハプニングがあったからあまり乗り気ではない。
「いいから」
そう言って、ゲームが沢山あるふゆ姉の部屋に向かう。はる姉は夕御飯の支度をするらしい。
「びっくりしたよ。昼飯を探しに一階にある冷蔵庫の中を探してたら、家の留守番電話にこんなメッセージがあるんだもん」
それは、ふゆ姉のスマホから二宮さんからの留守番電話だった。
やばい。下の階の電話には、まだ残っているかもしれないから削除しなきゃ。
「消しといたよ。はるお姉ちゃんにバレたら怖いもんねー」
ふゆ姉は僕の心を察してくれる。
「ありがとう、それじゃ‥‥‥」
立ち去ろうとする僕に、ふゆ姉がこれ見よがしに三文芝居をする。
「あー。私の手が滑ってはるお姉ちゃんに保存した音声動画LINEで送っちゃうかもなー」
「ごめんなさい。なんでもするから送らないでください」
ふゆ姉の目が輝く「なんでも‥‥‥」彼女はとてつもなく邪悪な顔をする。言ってはいけないことを言ってしまった。
「前の続き、しよっか?」
前の続きーーゲームではないよな。キスだろう‥‥‥ふゆ姉の指示に従い僕たちは二度目のキスをする。
今回は、舌同士が当たり唾液が混ざり合うディープキスだ。
やばい、気持ちいい。止められなくなる。
一旦、キスをやめて酸素を吸い込む。
「っぷは。あっくん、激しすぎ」
そう、ふゆ姉は笑う。そして、ふゆ姉はベットに仰向けに倒れて「きて」言われる。
その流れのまま、ベットに入りキスをしかけたその時ーー。
ふゆ姉の部屋の扉が突然、開く。
「あーくん、晩御飯だよー? ‥‥‥はああああああ。何しているのよ?」
「営み中‥‥‥。てか、毎回、毎回なんで、邪魔するの?」
正気に戻る。その後、はる姉に手を引かれて部屋を出て一階の洗面所に連れていかれる。
「あーくん、うがいしよっか?」
「はい‥‥‥」
うがいが終わると、はる姉による粘着質なディープキスが始まった。ほのかに、はる姉は甘めの匂いと味がする。
「ちょっ‥‥‥」
「ずるい‥‥‥」そんな、ふゆ姉の言葉が聞こえた。
「‥‥はぁ、っん。うる‥‥ちゃい」
満足した、はる姉の行為が終わり。
その後、晩御飯では母親が店で買ってきたレトルト食品の味は、先程の甘い味がした。だから、はる姉は料理の支度をせずに早く部屋に来たのか。
そうして、夏樹あきの頭から二宮さくらのことは消えていた。