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赤﨑エリス、もとい——

評価・感想・いいねなど非常に有り難く思っております、ありがとうございます。

今後のモチベーションに直列で直結しますので、もしお手間でなければ、宜しくお願い致します。


ホリミヤプロダクションが、話題の人物を配信者として迎え入れた事を発表した——


SNS、配信サイト、果てにはテレビニュースにまで放送されたそれは、瞬く間に世界中に広まった。


配信された動画の再生数は一時間で100万再生を記録。


だが事前に堀宮が対策をしていたお陰で、マスコミ各社は壁に阻まれたまま、ホリミヤプロダクションが提供する情報のみを発信する事しか出来なくなっていた。


更にそんな状況で、今夜赤﨑とくぐいが一緒に配信する事を発表。突入するダンジョンに関しては完全に伏せられている事もあり、視聴者達は待ち伏せする事も難しい。


ネット上が更に湧き立つ。なのだが、湧き立つ理由はそれらの重大発表よりも、赤﨑とのコラボ配信についてだった。


『カラス使いって男なのか?』


『アカちゃん、ずっと女以外とは頑なにコラボしなかったのに……』


『自社コラボとはいえ、カラス使いが男だった日には、俺死ぬかもしれない』


『流石にアカちゃんが男とコラボはないだろ』



などなど。火が点いたと言える程ではないが、モヤは上がっている。火が点く前触れとも言える。実際、鵠は男であり、性別を偽るつもりはないのだから、火が点くのは確実。


赤﨑にとっての課題は、如何に炎上を軽い火傷で済ませるかだ。


「はぁー……緊張する」


「だね」


そう言いながら、全身黒づくめの怪し過ぎる男は体を伸ばした。


「……見る度に思うんだけどさ?」


「うん?」


「明らかに『自分、人体実験してますよー』感あるよね」


「……まぁ、ね」


カラスの頭を模ったようなマスクを付け、体は全身を覆う黒いローブ。つま先の尖ったブーツに、不気味な杖。


怪しくない訳がない。


「しかも、寡黙なオジサンキャラなんでしょ?」


「うむ……私には、少々荷が重いやもしれぬがな」


「あ、少し似合ってるかも」


赤﨑さんが笑う。


彼女とは少し打ち解け、これから期間はわからないが、バディを組むのだからとお互いに敬語は無しになった。一応年齢で言えば俺が先輩だが、配信者としての歴は赤﨑さんが先輩だからだ。


とはいえ越えてはならないラインはある。そのため、呼び方は苗字、及び配信者としての名前を使う。


赤﨑さんの名前は『紅咲べにざきアカ』。俺は『マスク』という名前を使用する事になった。


なんだよマスクって。なんか変態キャラの通称みたいな名前だな。


因みに赤﨑さんは配信の時のみ赤と紅を織り交ぜたウィッグと、赤と紅のオッドアイのカラコンを着けている。


「炎属性使いですので!」


そう言うと彼女は手に炎を纏うと、一本の槍に変化した。


まるで朱雀を模したような特殊な形状をした燃え上がるような赤い穂先が特徴的だ。


彼女はそれを頭上に掲げると、器用に回し始めた。それを今度は右に、左に、そして背中を回して最後、槍を構えた。


「おぉ、見事な捌き方。正に槍使いって感じ」


思わず拍手すると、彼女は胸を張ってドヤ顔をした。


「ふふん、まぁね。この子、朱翼の凛槍って言ってね。炎の力を宿したダンジョン産の槍なんだけど、昔社長が配信者として有名になった時にくれたんだ」


「そいつはまた太っ腹だね……ん?どうした?」


現在肩に乗っているコクウが槍の穂先をじいっと見ている。


「なんだ、コクウ。あの槍の赤いのが気に入らないのか?黒くする?」


『カァカァ』


ブンブンブンブンと頭を縦に振った。因みにコクウは今赤いバンダナを首に巻いているしかもコクウの横顔を模った黒い刺繍付き、ちょっと欲しい。コクウには別に要らないのだが、コクウというキャラ付けが商品展開において重要だからという事で致し方なく着ける事に。


「ダメ!赤いのが良いの!」


赤﨑は槍をギュッと抱きしめた。


「じゃあ……プリズムレッドブラックは?見る角度や光の反射で赤や黒に見えるやつ」


グノーシスを使って色見本を見せてみる。


「お?……ダメ!」


「迷うなよ」


場を和ませるがてら話していると、赤﨑さんのグノーシスに通信が入った。相手はマネージャーの井口さんだった。


「あ、ジャーマネだ。しもしも?」


『良くそんな古い言い回しが出来るわね……そろそろ時間よ。篠枝君も準備は良い?』


井口さんも、正式に所属になった俺には敬語はない。当然だろう。


「……うん、大丈夫。いつでも行けるよ」


「俺も大丈夫です」


赤﨑さんは深呼吸してから答えた。今回の配信は俺とのコラボ配信のような物で、炎上不可避の配信でもある。


アイドル売りはしていないものの、彼女の高いビジュアルは、視聴者にある種の偶像を造ってしまう。


くっきりした目鼻立ちに大きめな目。女性にしては身長もそれなりに高そうで、体型もモデルのよう。


それでいてフレンドリーな性格で、俺も会ってからそこまで時間は経っていないのに、打ち解けてしまっている。更に表情も豊かなので、正直人気が出ない訳がないと思う。


しかも年齢的には高校三年生らしく、うら若きピチピチのギャルという事……死語かなこれ。


対して俺は二十歳の冒険者……冒険者とは聞こえが良いかもしれないが、実質フリーター及び無職である。


今回配信するのは俺と赤﨑さん両方だ。俺も既にチャンネルを開設しており、既に登録者数は四桁に上っている。


また、ホリミヤプロダクションは先んじて手を打っており、俺専用の切り抜き師を既に雇っているらしい。手が速過ぎる。


動画や配信一本も出してないのに登録者数が四桁とは地道にやってる人達に申し訳なくなるな。


何故二人で同じ内容を配信するのかと言うと、赤﨑さんの視点と俺の視点、別々の視点が欲しいからだという。又、チャンネルはあるのに動画が一本もないというのも不味い。


二人共、グノーシスを起動する。


「じゃ、始めよっか……『マスク』」


「……そうだな『紅咲』」


俺たちは配信者名で呼び合う事で意識を切り替える。そしてドローンを起動させる。


いよいよ、俺の初配信……そして、赤﨑さんの炎上配信が始まった。








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― 新着の感想 ―
[気になる点] >井口さんも、正式に所属になった俺には敬語はない。当然だろう。 当然なんですか? ビジネスパートナーに過ぎず、上下関係でもないので互いに敬語が常識だと思います。 立場的にもただのマネ…
[良い点] 掛け合いの質が高くていいですね。キャラクターも魅力的です!
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