表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/59

VS弦山

地面を足で叩く。


周囲に魔法陣が現れ、土の塊が複数展開される。更に重力の魔法を掛けると、塊は上空へと上がっていく。


「小手調べだ」


空へと上がった塊は、弦山へと降り注ぐ。


次々と弦山へと降り注ぐが、その度に後方に跳ぶ事で回避される。だが──


「……!」


着弾した塊から円錐状に土が伸び、弦山を貫こうとする。


「容赦がないな」


すんでの所で土の棘を回避した弦山。だがそこまでは想定内だった。俺は攻め手を止めず、炎の弾を飛ばす。


それが弦に近い所まで到着する前に、今度は風の塊を炎に向けて放つ。


「爆ぜちまえ!」


風の塊の方が弾速が早く、炎の弾に着弾。すると炎は爆発するように炎を拡散させた。


「成る程」


弦山がそう呟くと、一呼吸置いて刀を振るった。すると軌跡にあった炎は霧散し、消滅した。


だがそれも想定内。


「……む?」


弦山が俺を見失う。それも当然だ。


辺り一面に、土の壁を幾つも設置したのだから。此方の視界も遮られるが、今までの動きを見るに、素早さであれば弦山が上であるというのは予想出来る。


なのだが──


「拙僧には通用せぬよ」


「っ!?」


土壁の隙間を抜けて、俺との距離を詰める弦山。あたかも最初から場所を分かっていたのではないかと錯覚する程。こちらも視線は遮られていたため、当然ながら対処は遅れる。


弦山はそれを見越し、最小限の動きで刀を突き出した。


刀は俺の脇腹の横を通過。服の一部を切り裂き、肌に切り傷が出来るものの、大したダメージではない。


「ふむ、すんでで体を捻ったか。良き反応だ」


弦山は何故か満足げだった。


「何故場所が分かったんだ?」


「拙僧の妖刀『魈貓(しょうみょう)』は風を読む。微かな流れの乱れをも掴む事が出来るのだ」


「反則みたいな武器だなッ!」


杖をエンチャントし、青い刀身を展開して斬りつける。弦山も刀でそれに応じ、鍔迫り合いに持ち込まれる。


「そちらの引き出しの多さに比べれば、貧相なものよ」


お互い力を込め、刀を弾きながら距離を取る。 


「じゃ、ご期待にお応えして、もちっと引き出し開けてやるよ!」


周囲に土の塊を展開しつつ、足元で風が爆発する。俺は自らと土の塊を上空に飛ばせたのだ。そしてそのまま、俺は空中に浮いていた。 


重力の魔法により、自身に掛かる重力を極限まで弱めつつ、ベクトルを変えたのだ。


「何を……」


まずは塊を、弦山の周囲を取り囲むように放つ。当然直撃するようにはしていないので、弦山が動かなくても当たる事はない。


だが、弦山の移動範囲を狭めるよう、土の壁が出来上がった。


「流石に、当たれよッ!」


拳に力を込めつつ、重力の強める。高重力となった俺は、凄まじい加速と共に地面へと落下。弦山の前の地面に、拳を叩きつける。


「っ!?」


地面から凄まじい衝撃波が発生。衝撃波の直撃を受けた弦山は吹き飛び、囲っていた土の壁に叩き付けられる。


「ぐっ……!」


弦山が呻くが、俺はすぐさま体勢を立て直し、杖先で弦山の胸部を押さえる。弦山は壁に押し付けられたまま、足は浮いた状態となり、まるで壁に張り付けられているかのようになっていた。


「俺の勝ちだな」


「遠当て、か……」


「まぁな。死に物狂いで習得した技の派生だ」


発勁と遠当てを織り交ぜた技で、一定の範囲にいる生物に衝撃波を放ち土つ、気と魔力を乱す技。


「成る、程……拙僧の、負け、だな」


弦山が刀を落とす。俺は彼が戦意を失ったと見做し、杖を戻し、壁を崩した。力無く地面に落ちた弦山は、息がかなり荒い。


「……フフ」


「……ん?なんだ?」


弦山が笑った事に俺は首を傾げた。


「いや、今はこのような人物も居るのかと、驚いているのだよ。拙僧もまだまだよな」


「……あんたは一体何者なんだ?ボスが変更されるなんて聞いた事ないし、そもそもボスが喋った事も今までなかったんだが」


古城ダンジョンの扉の向こう側にいた、カデッシュは例外だが。あれはエリアボスという枠ではないはずだ。


「篠枝さん!って、大丈夫!?」


勝負がついたのが見えたのか、赤﨑さんとコクウが近寄って来る。脇腹が少し斬られている事き気付いた赤﨑さんが心配するような表情を浮かべるが、俺は問題ないと首を振る。


「……まだ時間はあるな。ではまず、拙僧の身の上から話すとしよう。とと、その前に、拙僧の正体なのだが──」


息が整ったのか、弦山が立ち上がり、そしてマントのフードを取った。


「え?」


「は?」


その姿を見て、俺達は凍り付いた。


「うむ、そうなるのは無理からぬ事」


「いや、だって……」


「ね、猫……?」


そこに居たのは、美しい毛並みと長めのヒゲ、そして丸い目を持つ、紛れも無く、猫だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ