再び、城へ
皆様評価感想いいねブクマなどなどありがとうございます!引き続き日間1位、週間2位、月間11位と凄く、凄いです!
これに驕らず頑張っていきます、何卒応援の程、宜しくお願い致します!
どのダンジョンを調査するか——それを考えた結果、この前行った古城ダンジョンに決定したのだった。
この古城ダンジョンは階層が比較的浅いという事と、何よりスキルオーブをドロップしたのがここだから、である。
ここの最奥部なら一番可能性が高いし、時間も余り掛からない。
「二人でダンジョンに潜る、しかも配信とかなし。久々な感じだなぁ」
『カァ』
たった一つの事をきっかけとして、凄まじい激動を体感していた。流れが落ち着いた訳ではないけど、誰にも見られていないこのプライベートな状況は好きだ。
昔から賑やかなのは余り好きでは無かった。毛嫌いするほど、とまでは行かないが、進んで賑やかな所に首を突っ込みたくはない。
飲みに行くにしても、基本的は行かない。何を話せば良いかわからないのだ。明確な友人という人物も居らず、仲間はコクウだけ。
だがコクウにはカラスのコミュニティもある。あぁ、最近だとスズメもその一派に加わっているんだったか。
人間最期まで孤独で居られるわけじゃないし、こうして太陽の下に曝け出された以上、身内に迷惑は掛けられない。
「軽く調査して、パパッと帰るとしますか。夕飯は……ここは高めの冷凍チャーハンと行くか」
『カァ……』
「なんだよ、良いだろ?立場はもうアレだけど、金銭感覚はまだ一般人なんだ。冷凍チャーハンでも十分だよ」
呆れるコクウを見て笑いながら武器を構える。
俺の眼前にはモンスターがいた。
クラウンメイジと呼ばれる、道化師の画面を身に付けた魔導師型のモンスターである。
既にダンジョンはボスであるマーガライアを超え、後半戦へと入っていた。当然ながら制限などないので、自由に戦える。
「手札を見せてもリスクにならない戦いってのは楽なもんだと、実感するね」
杖先を横に構える。
すると杖先から青い魔力の刃が展開された。
「杖も好きなんだが、偶には王道も嗜まないとな!」
クラウンメイジが手持ちの杖を空に掲げると、魔法陣が現れ、多数の氷柱が発射された。
足に魔力を込め、俺は地を蹴る。
凄まじい速度で氷柱に向かい、すれ違い様に氷柱を斬り抜けていく。
斬り抜かれた氷柱達は壊れるでもなく、魔力へと回帰し、霧散していった。そのままクラウンメイジへと肉薄し、一閃。
特に手応えもなく、クラウンメイジは消滅した。
「呆気ないねぇ」
一応高難易度のダンジョンに該当されるのだが、コクウと俺からすれば楽勝、難易度VeryEasyダンジョンと同じである。
「ほれ」
クラウンメイジのコアを投げ渡すと、コクウは素早く嘴で挟み、飲み込んだ。
「こいつは?」
『カァ……』
微妙そうな反応である。
コクウは普通にご飯を食べる事も出来るが、コアを食べる事も出来る。正確に言えば、コアは吸収する、が正しいのだが。コアでも腹が満たされるらしい。
又、コアを吸収出来るコクウは、コアから力を手に入れられる。対象のモンスターが持つスキルが手に入る訳ではないし、ステータスを一部奪うという訳でもない。
謂わば経験値のような物だ。
俺たち人間にはレベルという概念はない。だが、コクウにはそれがあるらしく、コアを吸収する事でレベルアップが可能なのである。
昔はそれなりにレベルアップしてきたのだが、今では全くと言って良い程レベルアップしないようになってしまった。
本人も経験値ゲージが見える訳ではないので、何時レベルアップするかはわからない。もっと強めな奴のコアなら行けるんじゃないか——そう思って潜った、現最高難易度のダンジョンで、赤﨑さんと出会ったのである。
「次レベルアップしたら何があるんだろうな?」
擬人化したりして——なんて言ってみるが、コクウは首を斜めにする、お気に召さなかったらしい。余り人間にはなりたくないみたいだ。
「ま、お前空が好きだもんな」
『カァカァ』
そうそう、とでも言うかのように頷く。
コクウは昔から空が大好きである。
産まれた当初、傷付いたり、親が亡くなっていたりと色々問題があった反動なのだろうと思う。
人間が陽の光を浴びるのが生きる上で必要な事と同じように、コクウも空を飛ばなければ気が済まないのだ。
大体どんな天気でも飛ぶ。
大雨の日や雪の日も飛びに行っては、びしょ濡れになって帰って来たり、真っ白なカラスになっていて最初びっくりした事があったな。
ただし、雷雨や嵐の時は流石に飛ばない。のだが、飛べないのが寂しいのか、昔はそういう日だと、窓からジッと空を見ていた。
それくらいには空を飛ぶ事が好きなのだ。
人になったらそう簡単に空へ飛べなくなってしまう。自由に切り替えられるなら良いかもしれないが——と思った辺りで取らぬ狸の皮算用である事に気付いた。
「なるようにしかならないか」
『カァ!』
コクウが頷く。
そうこうしている間に、エリアを越え、ボス部屋の前まで辿り着いた。
破損し、瓦礫だらけの階段を登る。そこにある巨大な扉。古ぼけているが扉だけは破損していなかった。
扉に手を付けると、その巨大さに対して凄まじく軽く、少し押しただけで扉は自動的に開いていく。
中に入ると、天井の一部が壊れていて、満月が顔を出している。
奥にある椅子二つ。元は豪奢な椅子だったのだろうが、今では見る影もない。ここは玉座の間だ。
一歩一歩部屋に入っていくと、巨大な扉が音を立てて閉まっていった。
すると玉座の前に黒い靄が集まり、人の形を形成した。
(潰滅の騎士……だったかな)
全身鎧姿の大男。刃毀れしたような大剣を持ち、鎧はボロボロに近い。だがその雰囲気は凄まじい物で、圧倒的な威圧感があった。
「よし、行くぞコクウ」
『カァ!』
俺は杖を構え、コクウは上空に飛び上がった。
潰滅の騎士は大剣を構え、空に吼えた。




