鍵
引き続き日間1位!
週間もなんと2位!
月間12位!
本当にありがとうございます!頑張っていくモチベーションがカンスト気味になってます!
「あ゛〜」
「お疲れ様でした」
「ありがとうございますぅ〜」
何とかダンジョンから脱出。したまでは良かったのだが、脱出後に何故か警察に囲まれてしまった。
どうやら社長が色々根回ししてくれたお陰で、スキルオーブに関する厳戒態勢が敷かれたらしい。
俺達は何時も送迎して貰ってる車とは別の車でミヤプロまで戻ったのだが。そのミヤプロの前には凄まじい人集りが出来ていた。
配信で入手したスキルオーブについて、皆聞きたかったのだろう。で、人が集まる場所には野次馬が集まる物で。
簡単に人集りが出来てしまったのだ。
なんとか地下駐車場に辿り着いて、漸く人心地着いたといった所だ。
精神的に疲れている俺たちの前に、井口さんがお茶を用意してくれた。赤﨑さんは横でソファにぐでっている。
「で、だ……」
俺たちの目の前にあるアタッシュケース。これを開けると、そこには水晶玉のような物、スキルオーブが座していた。
「大丈夫よ、鑑定スキル持ちは既に手配済み。そろそろ来ると思うけど……」
やはりここの人達は手配が早い。感心している
と、部屋の扉が開いた。
「お呼びだてして申し訳ございません、石動本部長」
「え、本部長!?」
俺と赤﨑さんが部屋入り口に目を向けると、そこには本当に石動本部長がいた。横には当然ながら、朝霧さんも居る。
居直そうとするが、石動本部長がそれを手で遮った。
「疲れているだろうからそのままで良い」
そう言うと、彼らは井口さんの隣に座った。
「最近は、実に飽きが来なくて助かるな。君も、大分豪運……いや、凶運だな」
「ははは……」
苦笑いをするしかない。
「では、朝霧君」
「はい」
朝霧さんがアタッシュケースの中にあるスキルオーブに手を翳した。
「朝霧さん、鑑定スキルをお持ちなんですか?」
「これでも、嘗ては日本鑑定協会におりましたので」
日本鑑定協会——それは鑑定スキルを持つ者を管理する協会で、国家公務員である。鑑定スキルを持つ人物が危険に晒されないよう守るための組織でもある。
鑑定協会に管理される側と管理する側では立場が大分違う。鑑定協会として働くためには、鑑定スキルのみならず、様々な試験をパスしなければならない、エリート中のエリートでもあるのだ。
そこから更にギルド本部長の側近のような立場に転身するなんで、凄い経歴を持ってるんだなと驚愕する。
「ッ!?」
鑑定をしていた朝霧さんは、突如頭を押さえた。
「大丈夫かね?」
「え、えぇ……スキルオーブが、私による鑑定を、拒絶しました……」
「鑑定を……」
「拒絶……?」
全員がその事実に驚愕した。
石動本部長を除いては。
「……他に、スキルオーブから情報はあったかね?」
「えぇ。情報開示権限があるのは、篠枝鵠、と……」
「スキルオーブが、篠枝さんを名指しで……」
「……」
唾を飲み込む。
今まで、そんな事はなかった。石動本部長も、朝霧さんも井口さんも、心当たりは一切ないようだ。
明らかな異常事態。俺は意を決し、スキルオーブを手にし、念じた。
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スキル《光の枝》
迷宮最奥部への鍵にして証
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「……え?」
頭に直接入ってきたかのようにノイズなく、記憶へと浸透する。俺はそれが余りにも自然過ぎて、違和感を抱かざるを得なかった。
「何があった?」
心配そうな表情をする面々。石動本部長だけは表情が読めない、平常通りの顔だった。
頭に直接入ってきた物を説明する。だが、誰にも引っかかる点は無かったようで、反応は宜しくない。
「光の枝、セフィラ・メレフ……直接声が響いたとかではなく、直接記憶に刻まれた、と?」
頷く。それ程までに鮮明に記憶しているし、読み方も全て理解している。ただ一つ、それが意味する物が不可解なだけで。
「迷宮、はダンジョンの事だとして。最奥部への鍵にして証……そのままで考えるのなら、ダンジョンの最奥部には鍵が掛かっている……と言う事になりますね」
「現状においてダンジョンの最奥部とはダンジョンボスが存在し、奥に続く扉も階段もなく、入り口に戻されるワープポイントのみだ。それがもし、最奥部出ないのなら——歴史的な発見となるやもしれんな」
今までダンジョンの最奥部だと思われていた場所が最奥部ではなかった——これを世間に伝えるわけにはいかない。
「篠枝君。君には、ダンジョン最奥部の調査をお願いしたい。何があるのか——ギルドとして把握しておく必要がある。これはこのギルド本部長、石動からの直々の、正式な依頼だ。当然だが、報酬は相応の物を贈ろう」
「……わかりました、やってみます」
石動本部長は満足気に頷いた。
「私は、参加出来ますか?」
赤﨑さんが言うが、石動本部長は静かに首を横に振った。
「それは出来ない。余り言いたくはないが、現状君と篠枝君の実力はかけ離れている。最奥部には何があるか分からない今、万が一君に死なれては困る」
「……」
「君の死は、君だけが悲しむ物だとは思うな。周りの人間も、応援しているファンも、そして何より家族も、皆を悲しましてしまうのだよ」
「……はい、わかりました。頑張ってね、篠枝さん、コクウ」
赤﨑さんは落ち込みながらも、納得したようだ。俺とコクウは自信を持って頷いた。
「任せてください。コクウと俺なら、逃げるのも余裕ですから」
『カァッ!』
コクウが翼を広げる。
深く頷いた石動本部長は、朝霧さんと共に部屋を出て行った。
「まっ、今日はこのまま休憩だねぇ」
赤﨑さんが大きく伸びをする。俺も流石に疲れたので、茶を飲んでソファに体を預けるのだった。




