バッファロー紅咲
遂に日間ランキング5位!
週も7位で、月間ランキングもまさかの32位!
遂にとかいってまだ二週間なのですが、凄まじい勢い驚愕しております。皆様ありがとうございます!これからもどうぞ宜しくお願い致します!頑張ります!
『なんなのこいつ』
『デュラハンとかいう紙っぺらよ』
『欠伸してるコクウかわヨ』
出て来るデュラハンを指先で圧壊させて歩くだけの作業ゲーだった。紅咲さんは槍を腰の後ろ辺りで持ちながら観光しているし、頭上のコクウに至っては暇過ぎて欠伸をしていたり。
そろそろデュラハンも飽きてきた——と思った所で漸く別のモンスターが現れた。
「あっ、レイスだ!」
出てきたの半透明の幽霊型モンスター、レイスだ。基本的に厄介な敵で、まず物理攻撃は効かず、魔法も多少効く程度。光属性の魔法に非常に弱いというのが特徴なのだが。
「では、ここでコクウの技を一つ、お見せしよう」
『カァ!』
欠伸をしていたコクウが素早く飛び、レイスへと肉薄する。レイスも近づいてきたコクウを視認し、襲い掛かろうとするが——
「『烏合の衆』」
コクウから波動のような物が発生する。その波を受けたレイスは数秒間苦しむ素振りをし、そして煙のように霧散して消滅した。
「このように、レイスを構成する魔力自体を拡散してやれば、霊体を維持出来なくなり自壊する。光属性など使う必要はない」
『は?』
『おいおいおい』
『このように、じゃなくてさ』
ん?あれ?なんかおかしい事やったかな?
『あれ?俺なんかやっちゃいました?みたいな雰囲気出すなよww』
『もうアカちゃん画角の隅でデュラハン倒し始めてるぞww』
『三人(ソロ×三)パーティって事か』
もう少し周囲との常識の乖離を気にしなければならないな、と思った所で紅咲さんが視界に入った。
彼女は倒れ伏すデュラハンの背中を足で押さえ付け、ガンガンガン!っと音が鳴るように穂先で突きまくっていた。しかも無表情で。
『うわ』
『某幼稚園児を彷彿とさせるな』
『やめて!デュラハンのライフはもう0よ!』
『いやまだデュラハン耐えて、あ死んだ』
『我々の業界ではご褒美です』(¥5000-)
『拷問だよ』
「ねぇ!」
「む、なんだね」
ギュンッ!とでも音が鳴ったかと思うほどの速度で首を回す紅咲さん。俺は取り繕うのがやっとだった。
「私、要る!?」
「いや、君のチャンネルだろう」
そうじゃなくてえええ!と叫びながら一人で突き進む紅咲さん。躍り出て来るレイス達をバッタバッタと薙ぎ倒していく。
『時代劇のBGM流したいな』
『黄門?』
『将軍だろ』
『北西の拳のが良くね?』
彼女のコメント欄は至って平和にBGM論争を繰り広げていたのがまたギャップで面白かった。
………………
「ふしゅぅ、ふしゅぅ」
「落ち着いたようで何よりだ」
一頻り戦ったのか、途中の部屋でバテていたので回収。まぁ正直ここは相手が悪い。彼女とは相性が良くないのだ。それでもここまで戦えているのは彼女の実力故か。
しかし息が乱れ……乱れてるのか?闘牛みたいな息遣いになってるし。
『猛牛www』
『猪突猛進とはこのこと』
『バッファロー紅咲』
『角付き兜代です!』(¥5000-)
「んがあぁじゃかぁしぃ!」
コメント欄にキレ芸をかます紅咲さん。コメント欄の落ち着きっぷりを見るにキレ芸もお家芸というか、定番ネタのようだ。
「こっからは私が前衛!いい!?私が前衛だよ!?」
「あ、あぁ、構わないが」
「コクウも!いい!?私がこのチャンネルの主役だから!いいね!?」
『カ、カァ……』
『マスクが動揺してるww』
『コクウがドン引きしてるのくそわろた』
『いいぞー、もっと感情だしてけーマスクゥー』
余りの圧力に若干縮こまる俺とコクウ。
「しゃあっ!デュラハンロードだろうがレイスロードだろうが掛かってこいやぁ!」
雄々しく叫ぶ紅咲さん。そんな叫びに呼応してか、一匹のモンスターが影から躍り出てきた。
「んっ——」
「ん?」
彼女の動きがピタリと止まった。
「マスク、さん」
「……なにかね」
「あれは」
「……うん」
「……無理ィィィ!」
「……えっ!?」
紅咲さんは俺の遥か後方まで爆速で逃げていった。つい素で返してしまったじゃないか。何が居るんだと思いつつ、前を見る。
「……おぉ、成る程」
そこには居たのは、膝の高さぐらいまでの大きさのGだった。
「ふむ。Gとはいえ、デュビアタイプではないか。どこに怯える要素があるんだ?」
そこに居たのは日本に良くいるワモンではなく、丸くて鈍重なタイプで、良く餌として飼われているデュビアだった。
『速くやってええ!』
遠くから声が聞こえる。
『跡形もなく!跡形もなくやってえぇ!』
……注文がうるさいなぁ。
俺は溜め息を吐きながらデュビアを圧壊させる。デュビアは一切の抵抗をも出来ず、重力により圧壊。コアとなった。
「終わったぞ」
「……、……」
恐る恐る、といった歩調でこちらに寄って来る紅咲さん。横から出て来るのを警戒しているのか、仕切りに左右を見ている。
「こんなコアも出——」
「ひぃぃぃ!」
むんずと掴んだデュビアのコアを見せるが、それでも彼女は逃げ出した。こりゃ前途多難だな、と俺は呆れながらコアをしまうのだった。




