古城ダンジョン
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「……ねぇ、篠枝さん」
「……うん」
「それ、XXで呟いていい?バズる自信しかないよ?これバズらなかったら世もTheENDだよ?」
「ダメです」
「うぇーケチぃー」
ぶーとぶつ腐れた顔をする赤﨑さんだが流石にダメです。
「…………」
「ハッ!若造が!コクウより可愛くなってから出直して来るんだねぇ!」
「は、鼻で笑われた……!?」
頭を抱えて塞ぎ込む赤﨑さん。いやまぁ、上目遣いと悩ましげな表情で見つめて来るのは流石に破壊力が高いんだけど、コクウには勝てんよコクウには。
ミヤプロにて今回の顛末及び俺がエンカウントしたカラスの群れについて話すと、赤﨑さんがキラキラした目でこちらを見て来たのだった。
「カラス達のコミュニティ、ね……それに属する仔たちが分かるようにしたい、と」
「はい。後でリボンを買いに行こうとは思うんですが、そもそも多数のカラスをどこに集めて作業するかもリスクでして……」
「ふむ……少し待ってて」
井口さんは手を顎に当てて考えた後、グノーシスを起動しながら席を立ち、窓際へと向かった。
「えぇ、えぇ……え?そんな二つ返事で許可をして宜しいので?い、いえ私としては有難いのですが……はい、はい。わかりました、ありがとうございます。失礼致します」
会話は終わったようだ。井口さんは席に戻って茶を一口啜ると、俺たちを見た。
「……このビルの上のフロアは一部、空いている部屋が幾つかあるの。社長に掛け合ってみたら、そこをカラス達の溜まり場にして良い、と許可を貰ったわ」
二つ返事でね……と井口さんは溜め息を吐いた。膝上に鎮座するコクウも井口さんを見つめていた。
「そんな二つ返事で仰られたんですか!?」
「えぇ、私も驚いたわ……まぁ、社長の場合リスクリターンの判断が早い上、リターンがある物に力を惜しみなく出すから、コクウのコミュニティの利点をいち早く理解したんだと思うわ」
さて、と井口さんは言いながら立ち上がる。
「コクウ、アナタはコミュニティのカラス達にこの件を伝えてあげて。私は今日の内に知り合いのペット用品業者と、ウチ所属の動物飼育ストリーマーに掛け合っておくから。数日中には内装が出来上がると思うわ」
『カァ!』
翼を広げて答える。大分喜んでいるようだ。
「私は朝霧さんに連絡しときますね!」
井口さんはそう言うやいなや早速グノーシスを起動した。赤﨑さんは何故朝霧さんに連絡するのか良くわからないが、そういう分野に造詣が深いのだろうか。
「そうそう。アナタ達三人は今日のダンジョン配信を忘れずにね。なんだかんだ先日は中断されてしまったからね」
「わかってまーす!」
赤﨑さんが元気良く手を挙げる。そう、今日の夜配信予定で、今はその打ち合わせでもあったのだ。一旦打ち合わせは終了したので、カラス達の話をした所、急激に深くなってしまった。
俺たちはそのまま準備を行い、ダンジョンへと向かうのだった。
…………
「皆さん、はろばんちわ!紅咲アカです!」
お決まりの挨拶を行う事で配信は開始された。
『生存確認』
『はろばんちわー!』
『生きてりゅー!!』
と言ったようにデッドアイ関連の話題がネット上で沸いていたせいで、コメント欄も我々……いや、紅咲さんの生存を確認出来た事で盛り上がってるみたいだ。
尚、心配の割合は紅咲8、コクウ2である。俺を心配する声は皆無でした。アーナキソ。
紅咲さんが丁寧に返答し、今回のデッドアイ関連のコメント流れはなんとか落ち着いた。NGワードにデッドアイ関連を入れなかったのは井口さんの判断だ。
NGワードに入れてしまうと『触れてはいけない話』と公表してしまう訳で。そうすれば要らない盛り上がり方をする事になる。それを避けられたのはかなり良い流れだ。
「てな訳で!前回成し遂げられなかったダンジョン攻略をします!ま、前回のダンジョンとは別ですが。ただ、前回のダンジョン以下の難易度なんて、生やさしい事ぁ言いません!寧ろ、高い所に来ちゃってます!」
『まじか』
『あそこより難易度高い所って二人で行けるのか?』
『コクウたそはパーティ扱い?』
「そ!コクウは一人扱いなので、パーティは三人でーす!んー、でも今回のダンジョンは私があんまり役に立たないかも?まっ、気にせず行きましょー!」
今回潜るダンジョンは、高難易度ダンジョンの中でも特にメンバーを気にしなければならないモンスターが多いダンジョンだ。
「うへぇー、相変わらず不気味なダンジョンですねぇー」
ダンジョンはどうやらテーマがあるらしく、今回のダンジョンは古城のようなダンジョンだ。古城の内部を探索していくのだが、当然そういうテーマに沿った連中が出てくる。例えば——
「第一村人発見!……村人?城の人、第一城の人発見だよ!」
『村人ww』
『村人もおかしいけど城の人もなんか微妙だなww』
最初のモンスターを発見したのだが、そのモンスターは首から上がなかった。
「デュラハンだー!私の苦手な奴です!とはいえ、勝てなくはないので、私から行きますね!」
そう、モンスターはデュラハンだった。鎧のモンスターで、中身はない。鎧自体に意志が載っており、装備でタイプが別れている。
このデュラハンは一番オーソドックスなタイプで、騎士剣を携えていた。
「シェアラァァ!」
謎の雄叫びを上げながら紅咲さんが突貫する。
「あぁん!」
だがデュラハンは騎士剣で容易にそれを弾いた。反撃とばかりに剣を振り抜くが、紅咲さんは持ち前の機動力でなんなく回避をする。
『あまりにも色気のない声色で草』
『ふぅ……あ、頑張ってください』(¥3,000)
『↑速すぎる……!』
「嘘でしょ!?今フジコちゃん張りのエッッ!なボイスだった筈だよ!?」
『は?』
『身の程をわきまえよ』
『自己評価高すぎて草も生えない高地』
「くそぉこの怒りィ……」
ジロリとデュラハンを睨みつける。
「……アナタで晴らすねっ」
いきなりウィンクと美少女スマイルを浮かべる紅咲。俺もマスクの下で若干引いた。だが彼女のスマイルとは逆に、携える槍には凄まじい豪炎が纏われていた。
「灰燼に還っちゃえっ」
炎を纏った槍をデュラハンに向けて突き出す。鎧自体が硬いので、穂先が突き刺さる事はなかったのだが槍から発生している炎がデュラハンを包み込んだ。
そして炎がデュラハン全体を包み込み、次第に動けなくなったデュラハンは、形を保てなくなり、装甲がバラバラに地面に落ちて消滅した。
「とまぁこのように、属性を使えばなんとかなりますが、消費が激しいので多用は出来ないのです」
『おぉー』
『防御力の上から倒したんか』
『炎属性怖ぇ』
まさかデュラハンを簡単に倒すとは。でも消費が激しいと言っているので、苦手な場所には違いない。
「さて、ではここからが本編!攻略のメインはマスクとコクウ、お二人にお願いします!」
『カァー!』
「任されよう」
いよいよ、俺たちの出番だ。
多少は緊張しているが敵は弱い。幾らでもなんとでもなる相手という事もあり、少しだけ気が楽な俺は、ゆっくりとした歩調で進み出すのだった。




