カラスAがあらわれた!
皆様感想・ご評価・いいね・ブクマなどなどありがとうございます!
そして誤字脱字報告ありがとうございます。こんなに誤字脱字してたとは思わんかってん……ナミダガどころかナミダガンぐらいは使えそうです。全体水魔法です。
「マジか、お前ホント頭良いな、このぅ」
『カァ!』
撫でながら言うと、コクウがふふん、とでも言うように胸を張って鳴いた。
デッドアイの事もあり、一応の送迎は井口さんが一緒にいる事になったが、不安材料はたっぷりとある。
そこを考慮したのか、少し前にコクウが一匹のカラスを連れてきた。コクウより一回り以上小さいカラスだ。不思議に思っていると、テーブル横に置いてあるメモとペンを持ってきた。
コクウは人語を理解出来るが、話す事は出来ない。大抵は意思疎通を図れるので要らないのだが、必要な場面もあるのでこうして常備している。
コクウはなんと、平仮名だけなら書けるのだ。
器用にメモ用紙を千切って、ペンを走らせていく。そこには、『えりす』と書かれていた。赤﨑さんに、カラス?
「……あー、成る程。この子を赤﨑さんに付けておくって事か」
『カァカァ!』
コクウが首を縦に振る。
要するにこうだ。
コクウ独自のネットワークを利用し、一匹のカラスを付けておく。そうする事で、何かあればこの子を通してコクウに情報が飛び、俺たちに伝わるという寸法だ。
人をつける訳ではないから赤﨑さんのストレスになる事はなく、しかも人がおいそれと立ち入れない場所からでも自由に見張る事が出来る。
「赤﨑さんに許可取った方がいいな?」
コクウが頷く。横にいるカラスには一応ペット用の餌を与えている。野生のカラスに餌をやるのは良くない事だが、この子はコクウのコミュニティに属している子なので問題はない。
赤﨑さんに連絡してみると即座に反応が返ってきて『マジ!?全然オッケー。あ、でも私のプライベートを覗くのは禁止だよー。それと、その仔がどの仔なのか分かると良いんだけどなー』と来た。打つの速すぎない?
「オッケーって返って来たけど、この子だって分かる何かが欲しいらしい」
『……』
コクウが数秒目を閉じると、部屋の奥にある箱を器用に開けた。その箱はコクウの思い出の物が入ってる宝箱で、俺も開けさせてはくれるが、物に触る事はさせてくれない。
その箱にクチバシを突っ込み、モゾモゾしていると、箱から赤いリボンを取り出した。
『カァ』
「成る程ね、コイツを足にでも巻いておけばわかりやすいか」
コクウが頷く。俺は了解すると、動きが阻害されない程度の短さに切りつつ、その仔の足に結んでやる。その仔は俺の動作をジィッと見たまま動かなかった。結構なお利口さんだ。
「よし、これで良いな」
『カァ』
『カァカァ!』
コクウが何かを言うと、そのカラスも応えた。気に入ったのだろうか。
赤﨑さんにそれを伝えると、『見たーい!』と言ってきたのでコクウとカラスのツーショットを撮って送ってあげると『きゃわヨぃ!朝霧さんにも送って良き!?』と返って来たので、許可はしておいた。
しかし何故朝霧さんに送るんだ?
良くわからないが、女性同士だし、赤﨑さんも可愛い物は共有したくなったのだろうか。
その後、朝霧さんが鼻血で早退したと聞いたのはまた別の話……なのかな?
…………
後日。
「……ッ!?」
俺は囲まれていた。逃げ場はない。
そう、俺は多数のカラスとエンカウントしたのだった。一匹に見つかった後、瞬く間に数を増やしていったのだ。
マド◯ンドかお前ら。
様子を伺っていると、一匹が何やら赤い紐を咥えていた。それを俺の手に落とすと、身を寄せたままジッとこちらを見て来た。そのまま右脚をずいっと突き出した。
「…………?……あ、足?結んで欲しいのか?」
疑問に思いながら恐る恐る脚に紐を結ぶ。カラスは一切抵抗する事なく、結び終わると大きく鳴いた。
まさか……。
「コクウのコミュニティで、赤いリボン、バズったのか……!?」
カラス界隈でもバズるってあるのか!?
驚愕の事実を目の当たりにしつつ、流石にリボンの在庫はないので、しゃがんでカラスの頭を撫でる。
「ごめんな、今はリボンないんだよ。今度買って来るから、それまで我慢な?……なんて、コクウじゃあるまいし、人語なんてわから——」
『カァ!』
カラス達は一斉に飛び去っていった、まるで了解した、散ッ!とでも言ったかのように鮮やかに、一斉に、四方八方に、である。
「……あれ?賢くなってる?」
身内の頭脳ランキングに大量のカラスが入って来そうな事実に、内心震えが止まらなかった。




