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教育なら何でも許される side担任

_あれ、スマホがない。

そう気づいたのは、家に着いてからだった。くそ、今日は家で見たいものがあったのに、あのスマホでしか見られないものなのに。ない、バッグにもポケットにも何処にも無い。


…まさか帰り道で落としてきたか…?

だとしたらやばい、あれは絶対に人に見られてはならない“モノ“だ。自分以外見てはならない危険なモノ。




俺は焦って、青いスマホをつけてGPSアプリを起動した。

もしもの時用にこのアプリをダウンロードしておいて良かった。俺は用心深いし、こういう策を用意するような人物なのだ。



良かった、無事に学校にあるようだ。ふう、とため息が出た。あれがなきゃ日頃のストレスが発散できないからな…特にあの松村とか言う奴、態度も何もかも気に入らない。

…おっと、先生の俺が可愛い生徒にこんな事を言ってはいけないな。松村も俺が教育してやれば良い事だ。はは、教育のためならどんな手を使っても良いだろ、態度の悪い不良を更生させるためなら。明日が楽しみだ、しっかり、しっかりと教えてやらねば。



誰にも見られていないと良いが…、学校にあると言ってもどこにあるか分からない為、電話を掛けながら進まなければならない。職員室だったらやばいが、しっかりロックもかけてるし、他の先生たちが受け取ってくれるだろう。








今は10時か…これぐらいならまだ数人は他の職員も残っているだろう、よし取りに戻ろう。


_俺は、自転車をこいで学校へ向かう。

風が気持ちが良い、ひんやりとした冷気が頬に触れる感覚が心地が良い。


学校の前まで行くとキッ、と急ブレーキをかけて自転車を止める。



「さて」



“ぷるるる“と自分のスマホに電話をかける。当然だが、まだ聞こえない。


俺は校内に入って行く。まずは職員室に向かおう、職員室にあるならもう先生達が反応し始めているだろうか。_俺はもうすっかり暗くなった廊下を歩いていき、職員室についた。



自分のスペースの近くに行くが、鳴っていない事が分かる。残念、まあこう簡単には見つからないよな。



となれば教室か。

壁にかけられている教室の鍵をひょいととって今度は教室に向かう。




「あれ、谷岸先生?こんな時間にどうしたんですか?」


「ちょっと、忘れ物をね…では」




隣のクラスの担任をしている先生に声をかけられる。

こんな時間に俺が学校に来るなんて意外だったのだろうが、ここで会話をするのは面倒なので俺はそう言って素早く立ち去る。



カチャカチャと激しくドアを開錠すれば、薄暗い教室の中に入る。

すると、教卓の上に俺のスマホが青白く光り、“ぷるるるる“と振動していた。こういうの他人のだったらホラーみたいで怖いのにな、自分がかけていると分かっているからなんの気持ちも沸かない。



「お、あったあった」


そう呟くきスマホを手に取ると何かパチ、と音が鳴った気がした。

なんだ?ネズミか?


そう考えて振り向こうとした。







した、したはずなのに。







なんだ?









なぜ俺は、下を向いている?






_ゴン!!!





強い音が教室内で鳴り響いた。









「_ぉーい、まさか…死んでませんよね」





頬をペチペチと叩かれた気がして、目を覚ます。

うっすらとしか見えないが、俺の前に何かいる。あれは、誰だ…?




黒髪で、平均的な身長で、憎たらしい、俺の嫌いな顔。



「お前は…まっ、松村…?!?!」




なぜ、お前がこんな時間に教室にいるんだ!

俺は動揺で体を動かそうとしたが、それはできなかった。恐る恐る下を見れば自分の体はロープで椅子に括り付けられていて身動きが取れない状態だった。



「おい、はずせ!!」



俺がそう言うと、松村は無言で教卓の上に座り俺のスマホを触る。



「な、何をしている…やめろ、ロックしてあるからお前なんかに見れる訳ないだろう!!!!!」


松村が何をしようとしているのかはわからないが、そうだ…自分のスマホにはパターン式のロックがあるんだ、簡単には開けさせいし、開けられる訳がない。




「流石に…“z”じゃないですよね?」



松村が俺のスマホにzを描くようにすいすいと指を動かして行く。




_まずい、まずいまずい!!!!!



「…開いた」




俺の顔面は一瞬で蒼白になり、冷や汗が一筋垂れる。

松村は俺のスマホの画面をみて鼻で笑った。



「先生、インスタやってるんですね。…女の子にセクハラ見たいなDM送ってる…名前は…、“Mitaka“」




「ち、違う!!!それはっ、俺じゃ…ない!!!」



「嘘つかないでくださいよ。三日前に“俺の狙ってる奴を先にいじめた奴がいる、腹がたつ“それって俺の事ですよね?」



松村はそう言って自分のスマホで俺のスマホを撮る。



「え、……ああ、違う、!違うんだそれは乗っ取られて」



「次は写真見ますね」


俺の回答の余地なしに松村はそう言い切る。待ってくれ、写真はもっとダメだ、だめなんだ!!!!!!


「蜂山さんの写真ばっかあるじゃないすか…下からアングルとか、完全に盗撮…終わってますね」




終わり、その単語が聞こえた瞬間俺は前へ動き、椅子ごと机を避けるように斜めに倒れる。嫌だ、そんな理由で俺の人生が終わりたくない!!!!周りから見れば松村の下に俺が這いつくばっているように見えるだろう。無様だ、恥ずかしい、どうして俺がこんな目に遭わなければならない!!!



「お願いだ…、お願いだ松村…!!さっき撮った写真を消してくれ!!頼む…なんでもするから」



「…本当になんでもしますか?」


しまった、つい必死で言ってしまった。松村がじ、と俺を見る。

だが、これ以外に自分がどうすればいいかわからない。仕方がないだろう!!!



「……あ、ああ!!!なんでもする!お前の言う事を聞く!!!だから」



「ふーん…じゃあ、先生契約をしましょう。これから言う3つの事を守ってくれれば俺はこの画像と写真の事を告発したりしない」



「本当か!!!!??」


どんな、契約の内容なのか想像するだけで震えが止まらない。



松村は、教卓から降り俺の前まで近づきしゃがむ。

そしてスマホを床に置き、指を立てて言った。




「俺の言うことを必ず聞くこと、何を言われても俺の肯定をすること、今後蜂山ミチカに手を出さないこと…簡単でしょう?」




カーテンがひらりと揺れ、月の光が笑っている松村へとかかって行く。



こいつの喋り方がムカつく、態度がムカつく、嘲笑うような顔がムカつく。


だが…


_逆らえないッッ…!!!



「…ああ、分かった…、、」



「言いましたね。破ったら、多分二度と教師出来ないと思ってください」



スマホを彼は俺の方へ、スライディングさせた。くるくると回転し、最終的には俺の顔面の近くまで向かってきた。


「しないっ!!守る、だから!!」



松村は俺を縛っていたロープをスルスルと外し、窓まで移動した。



「あ、俺がここにきたことも誰にも言わないでくださいね」

 


_腕が解放されたし、殴ってややりたい。

でも、後の事を考えればそんな事しては松村の思う通りになってしまう。俺は拳を引っ込めた。


俺が悶々としているうちに、トンッと音がなり松村は教室から居なくなっていた。

まさか、落ちたのか?いやありえない死ぬぞ!


俺は教室の窓から下を覗けば、松村はロッククライミングのように壁の出っ張りに足をかけながら落ちていた。猿かよ…。




「…はぁ」



もう、疲れた。

少し前の俺を殴ってやりたい。これから俺は松村に怯えながら過ごす日々が待っているかもしれない。



…何が教育なら何でも許されるだ。






あんな奴、俺が教育できるわけがない!!!








松村君は先生が来るまでまたロッカーに入って眠っていました。

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